こたえなんていらないさ

主に刀ミュ(ミュージカル『刀剣乱舞』)を愛しながら、舞台まわりをぐるぐるしている人

アイアシアターの閉館に寄せて ~好き嫌いだけじゃ語れない場所~

2018年12月31日付けで、AiiA Theater Tokyo(通称:アイアシアター)が、閉館を迎えました。
現時点で「2.5次元作品に親しんでいるけど、アイアシアターという名前に馴染みがない」という人は、おそらくあまりいないんじゃないかと思う。
個人的にもかなりいろんな感情が詰まりまくっている劇場である、このアイアシアターという存在について、どうしても記事にしたいので書いてみます。




◆アイアシアターの歩み

そもそも、アイアシアターはずっと2.5次元専用劇場だったわけではありません。私が舞台を見始めた2013年の時点では、まだ違いました。
このあたり、日本2.5次元ミュージカル協会の歩みともイコールになっている部分がある気がしたので、大雑把ですが調べられる範囲でまとめてみました。
なおアイアシアター単体の歩みはWikiの該当頁を見ていただくといいかと思います。

時期 できごと
2007.4 マッスルミュージカル専用劇場「渋谷マッスルシアター」として開業(その後、2011年5月に閉鎖)*1*2
2012.9.15 アイア株式会社により「AiiA Theater Tokyo」として開業*3*4
2013.3 日本2.5次元ミュージカル協会」発足(※以降「2.5D協会」と略記)*5
2014.8 2.5D協会が、アイアシアターを2015年3月から「2.5次元ミュージカル専用劇場」として運用することを発表*6
2015.3 2.5次元ミュージカル専用劇場としての運用がスタート(当初予定:2016年3月までの1年間限定)。伴って正式名称が「AiiA 2.5 Theater Tokyo」となる
2016.2 2.5次元ミュージカル専用劇場としての運用が2017年4月末まで正式に延長決定*7
2017.2 2.5次元ミュージカル専用劇場としての運用が2018年4月末まで正式に延長決定*8
2018.6.1 AiiA Theather Tokyoが2018年12月31日付で閉館することが発表*9
2018.6.11. 2.5次元ミュージカル専用劇場としての運用が2018年10月末で終了となることが発表*10
2018.10.31 2.5次元ミュージカル専用劇場「AiiA 2.5 Theater Tokyo」としての運用終了
2018.12.31 「AiiA Theater Tokyo」閉館


「アイアシアター」という劇場が存在したのは、2012年9月~2018年12月の約6年3ヶ月間、そのうち2015年3月~2018年10月の約3年8ヶ月間が、2.5次元ミュージカル専用劇場として運用されていた、ということになります。

そもそも、ず~っと個人的に気になっていたのは、アイアシアターが建っている場所についてでした。だってあそこ、国立代々木競技場の敷地内、つまりは国の所有地内、ってことで多分あっているんですよね…?
アイアシアター公式サイトの住所表記も下記のようになっていて。(サイト自体、もしかしたら近い将来見られなくなっちゃうかもだけど。。)

アイア 2.5 シアタートーキョー
〒150-0041
東京都渋谷区神南2-1-1 国立代々木競技場
渋谷プラザ

そしてこの「渋谷プラザ」っていうのは、どうやら第二体育館近くの広場のことを指すようなんですね。Wikiの国立代々木競技場の頁に下記の記載がありました。(国立代々木競技場の本体サイトには説明を見つけられず…。)

渋谷プラザ
第二体育館の南側、渋谷駅方面に面する広場。渋谷公園通りに面する。

…じゃあそもそもなんで、マッスルミュージカルは代々木競技場の敷地内に劇場を建てることになったのか、ってことはめっちゃ気になってます。土地の権利は借地権で、国が貸してたってことでいいのかな。軽く検索するくらいじゃこの経緯はちょっとわからなかった。背景事情を知ってる人がいたら教えていただきたい気持ちです!笑

何がきっかけか思い出せないんですが、以前からうっすらと「アイアシアターはなんでかしらんけど国の所有地内にあるっぽい」ってのは頭にあったので、2020年の東京オリンピック開催が決まった時点で、あ、じゃあ本格的にアイアシアターの寿命決まるのでは…?って思ってた。なので正式な閉館のお知らせを聞いたときも「あぁ、ついに来たか~」って気持ちになったことを覚えています。

◆とある舞台おたくにとっての「アイアシアター」という存在

ここからは、超個人的な感傷がもりもりのお話です!

まず、「アイアシアター、好きでしたか?」って聞かれると、私はなんて答えたらいいのかわからない気持ちがします。好きとも嫌いとも言えない存在、って感じ。
「劇場」という、演目がかかるハコとして見たときは、設備面での数々の理由により、決して好きとは言い切れなかった。
でも、あまりにも思い出深い複数の演目と強固に結びついた場所なので、そういう意味では絶対に嫌いにはなれなかった存在…。
なんというか、愛憎半ば、みたいな。いやそんな大袈裟な?って感じですが、本当になんともいえない感情があるんです!
そして私の中では、現時点で一番たくさん足を運んだ劇場でもあります。私がアイアで観た演目(イベント含む)を並べてみました。

  • 2013年

8月 THE ALUCARD SHOW
11月 亜雌異人愚なグレイス

  • 2014年

5月 D-BOYS -10thどこ-10years プレミアム D-live
7月 D-BOYS 全員集合握手会
11月 THE ALUCARD SHOW(再演)
12月 ALTARBOYZ Christmas Special

  • 2015年

7月 學蘭歌劇「帝一の國」第二章 決戦のマイムマイム
11月 ミュージカル「刀剣乱舞」トライアル公演
11月 ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!」

  • 2016年

3月 學蘭歌劇「帝一の國」最終章 血戦のラストダンス
6月 ミュージカル「刀剣乱舞」~阿津賀志山異聞~
8月 ライブ・スペクタクル「NARUTO」(再演)
9~11月 ミュージカル「刀剣乱舞」~幕末天狼傳~(凱旋含む)

  • 2017年

3~4月 ミュージカル「刀剣乱舞」~三百年の子守唄~(凱旋含む)
5月 ミュージカル「刀剣乱舞」真剣乱舞祭2016 上映会
5月 ライブ・スペクタクル「NARUTO」~暁の調べ~
7月 舞台「黒子のバスケ」OVER-DRIVE

…2018年はなんと、ゼロだったのでした。おちゃろくとかダンデビとか見てないもんな。最後に見たのは意外にもくろステなのか!そして思ったとおり、演目の偏りがひどい。笑
演目総数は17と少なめ、一方で観に行った回数はざっと数えると多分70回くらい。演目数と回数のこの大きな乖離は、愛するあまりに通い倒した帝一と刀ミュを含むためですね…!
座席は最後列の21列以外、1列から20列まで、サイドにもセンターにも本当にあらゆる場所に座ったので、座席からの見え方は網羅したと言えると思う。それくらい、慣れ親しみ過ぎた劇場です。


そんな私がアイアシアターを「劇場」としては好きになれなかった、と言ったのは、やはり設備面によるものが大きいです。
一番嫌だったのは「音漏れ」でしたね…!
音漏れというか、逆の現象。「上演中の劇場内に、劇場外の音が聞こえてくる」という、わりに信じがたい現象です。そんな事態が発生する建物が劇場を名乗って良いのか?と本気で思ってた。
私が遭遇したのは、とある演目の、音楽のない静かなシーンでの出来事。登場人物二人が向き合って会話を交わすその最中に、めちゃくちゃ明確に、外を走る街宣車の音声が入ってきたんだなぁ…。
あの時の「没入していた世界から無理やり現実に引き戻された」がっかり感はちょっと忘れられないです。その後、ラストシーンにかけて集中しきれないままエンディングを迎えてしまった。まじで怒りを覚えましたもん。同様の現象は、その後にも運悪く何回か出くわした。
(でもこれ、2.5次元ミュージカル専用になった後半期には遭遇しなかったので、それはそれで不思議なんですよね。工事してた気配もなかったように思うので。とくに刀ミュに通ってる人からも、あんまり聞いたことなかったんだよなぁ?私が見かけなかっただけかもしれないけど。)

そしてアイアシアターといえば、この音漏れの他にも。
パイプ椅子ともまた違う、なんともいえない座り心地のかったい青いシート。同じ列に、ちょっと大きめのリアクションで笑うタイプの人がいると、真隣じゃなくても自分の椅子までがグラグラ揺れるという「4DXだったっけ!?」なびっくり現象。下手壁際のサイドシートに座ると断続的に聞こえてきて集中力が削がれまくる、壁の向こうからの「ゴォォ…」という不気味な空調音。驚くほどに多発するマイクその他の音響トラブル。ここはいつまでも仮設なんだろうか、、と感じてしまう、あの独特のトイレ。
そして出演しているキャスト陣の写真やバクステ映像に楽屋が写らない、写っても常に”屋外”の景色しかないことから察せられる、「舞台裏の設備環境、たぶんめっちゃ過酷なんじゃね?」という悲しい確信…。

そんなこんなで、プラスとマイナスどっちの印象がもともと強い?って聞かれると、私にとっては「マイナス」の印象がどうしたって強い場所でした。

2.5次元ミュージカル専用劇場としてのアイアシアター

2014年に「アイアシアターを2.5次元ミュージカルの専用劇場にする」って発表された時に、真っ先に「やだな」って当時の私が思ってしまったのは、上記に挙げたようなお粗末と言わざるを得ない特徴を持つ劇場が、2.5次元のメイン現場になるという事実そのものについてでした。
なんていったらいいのか…「2.5次元なんだから、まぁこの程度の設備で足りるんでしょ」って、対外的にも思われやすくなるのでは、という感覚があって。2.5次元が侮られることの、ある意味”裏付け”になっちゃうんじゃないかな、みたいな気持ちになったんですよ。観に来る側のお客さんのことも、出演してるキャストのことも、なんだか見くびられてるみたいな気持ちにもなった。
何よりも、大好きな「帝一の國」が、まだ閉館までには余裕のあったパルコ劇場から、アイアシアターに上演場所が移ることが確定してしまったので、余計に嫌だったんですよね。
そもそも「日本発2.5次元ミュージカルを世界へ!」と銘打って海外からのお客さんを迎える場所としては、あまりにも恥ずかしいんじゃないのか…!?と心配になったりもしていました。
当時はまだ、演目をしかける側が、どんな風に考えて2.5次元作品を育てていこうとしているのか、明確に語られた内容を見る機会が少なかったので、運営側への不信感みたいなものも割と明確に持ってました。正直なところ。
2014~2015年当時、ネルケや2.5D協会からの「観客側に向けて」という意味での明確な発信は、そこまで積極的にはなされていなかったような印象があります。(もっと別な層、ビジネスパートナーになる側には、たくさんされていたのかもしれないけど。)


でもここ1年くらいの間、2.5D協会の発起人で代表理事でもあるネルケ松田さんの発言が、いろんな形でフューチャーされるようになり、インタビュー等でその考え方を詳しく知ることのできる機会が、かなり増えました。
なので、かつては伝わって来にくかった作り手側の思いや狙いみたいなものが、段々と今になって、わかるようになった部分が大きくて。

そうして松田さんを始めとする作り手側のいろんな発信にふれる中で、むしろ劇場不足が深刻なものとなっている今、たとえ不完全な環境ではあっても「専用劇場」という場所を押さえ続けていたその努力は、ものすごく先見の明がありすぎる行為だったんだな、と思うようになりました。
恐らくは、他の劇場を使うより、使用料はかなり安く抑えることができたはず。その分いろんな演目を実現させ、外に送り出すことのできる可能性は、きっとぐんと上がったのだと思います。その半面、演目のクオリティが玉石混交になる事態を呼びやすくなった部分も、正直あるとは思うんだけど。
でも、2.5次元というひとつのジャンルを伸ばしていく、この先も存続させる、育てていく…ということを本気で考えた時に「ジャンルの伸び盛りの時期に、専用劇場を持っていた」というのは、本当に意味のあることだったんじゃないかと思う。

アイアシアターが「AiiA 2.5 Theater Tokyo」として運営されていたこの3年半あまりの時間は、たぶん2.5次元作品の歩みを将来的に振り返って見た時にも、きっとすごく特筆すべき期間になるんじゃないかなと感じています。
観に来るお客さんの裾野がぐっと広がり、世間的な知名度や、演目ひとつひとつの大きさが、ぐんぐんと伸びていった時期。
本当にこの数年で、ひとつのジャンルの隆盛を目の当たりにしているなという思いが強いのですが、そうしてジャンルが飛躍に向けて全速力で走っていく時期において、「不完全なハコ」であるアイアは、専用劇場としては、ある意味ぴったりだったのかもしれないな…という思いがするんです。もちろん、振り返った今だからこそ感じることだけど。
伸び盛りでまだ未完成なものが、不完全なハコで輝く、ということ。それはもしかしたらこれ以上ないくらい、絶妙にマッチしていたソフトとハードの組み合わせだったのかもしれない、今となってはそんな風にも思えてくる。
演劇はお客さんの想像力が働いて初めて成立するもの。だからこそ、その想像力が解き放たれる場所になる劇場には、作品に集中できる快適な環境であってほしい。アイアシアターには正直そこが大きく欠けていたんだけど、だけどそれをカバーしてなお作品は輝くことができていたし、観客として楽しい時間をすごすこともできていた。それは、2.5次元演目が持っている、伸び盛りならではの、爆発的なエネルギーがもたらしていたもの、なのかもしれません。

◆好き嫌いだけじゃ、語れないけれど

アイアシアターには、渋谷駅から行く派と原宿から行く派がいたけど、わたしは毎回、渋谷駅から向かってました。暑い日も寒い日も、本当に何度も、公園通りをてくてくと登った。一人で、時には友人と連れ立って。緊張しながら、ワクワクしながら。
急いでいる時に走ったりすると簡単に汗だくになっちゃうあの坂。時間に余裕があるときは、ドキドキした気持ちをなだめるように、わざとゆっくり歩いて進んだ。何度か横断歩道で止まる時、周りにはすでに同好の士が沢山いることが、持ち物なんかでわかってた。
坂を登りきった交差点で、あの赤い外壁と窓ガラスの外観が見えてくると、「あ~またアイアに来たんだな」って実感が湧いた。
刀ミュのキャンセル待ちでは、劇場前のスペースでいつも長い長い列を作って、あのカラフルなキャンセル待ち券をうけとった。当落発表をまつ間は、東武ホテルの中のプロントで友達とおしゃべりしながら時間を潰した。
終演後に興奮で頭がふわふわしすぎて、テラスの階段で足を踏み外しかけたことも何度もある。
ソワレを観に行く時に、マチネ終わりのお客さんとあの横断歩道ですれ違うと、劇場から出てきてこちらに向かってくる人が、みんなそれぞれ幸せそうな、本当に楽しそうな、キラキラした顔をしていた。


11月と12月にそれぞれ、2件のこんなツイートをしました。

  • 11月のツイート

  • 12月のツイート


アイアシアターが閉館を迎える日と、刀ミュが2.5次元演目として初めて、NHK紅白歌合戦に出場した日。このふたつの「2018年12月31日」っていう日付が揃ってたことには、どうしたって、感慨深いものがありすぎました。
だって、ツイートした画像のとおり、本当にまじでただの隣同士なんですよ、アイアシアターとNHKホール。紅白直前のどうしようもなくウロウロした気持ちのまま、渋谷で用事を済ませる前にどうしても目の前まで行きたくなって、2つを並べて、視界におさめたのでした。
もう、あのワクワクした気持ちでこの坂を登ることもないんだな…って思いながら。
17時すぎ、よく晴れた冬の夕暮れ時、信号の青い光とか空の色とか…いろんなものが相まって、撮ってよかったな…て思う写真になりました。レンズの汚れ写っちゃってるけど。iPhoneSEだから画質にかなり限界あるけど。そもそもツイート内で誤字してるけど!笑
普段、4桁のいいねとかRTとかまずあり得ないので、それだけ同ジャンルに身を置く人にとっては「わかる…」って思ってもらえたツイートだったんだろうな、と思います。


2.5D協会のプレスリリースによると、新しい専用劇場の運用も目指されているのだということです。*11今後のためにも、ぜひ実現したらいいなぁと願っています。そのあかつきには是非、劇場としての設備はグレードアップした場所で…!


アイアシアターが、とある舞台おたくに残したもの。その全てを美化することは出来ないけど、だけどそこで過ごした時間は、間違いなく、かけがえのない何かでした。そこで観た景色は、私にとって一言じゃ説明できない、大切すぎる思い出になったものばかりです。


好き嫌いだけじゃ語れない場所だけど、やっぱり最後はお礼を言いたい。
さよなら、そしてありがとう、アイアシアター。君のことはいろんな意味で忘れない。