こたえなんていらないさ

主に刀ミュ(ミュージカル『刀剣乱舞』)を愛しながら、舞台まわりをぐるぐるしている人

舞台にまつわるクラウドファンディング2件について、自分なりの理解をまとめてみた(シアターコンプレックス/舞台芸術を未来に繋ぐ基金)

表題のとおりなんですが、一度きちんとまとめたいなと思っていた記事です。
興味がある人にとっては、分割するより一気に読めたほうが利便性が高いかなと思い、文字数多めですが1記事にしています。

とりあげるクラウドファンディングは、

のふたつです。

もちろん上記の他にも、興行に関するクラウドファンディング基金は、たくさん立ち上がっており、本当は幅広く全部調べられたら一番良いんだと思うんですけど、そこで自分に負荷を過剰にかけるのもちょっと違うかな…と思いまして、いったんは止めてみました。
なんというか、「普段の自分のアンテナの範囲内」に自然に引っかかったものには、それなりに理由があるといいますか、
自分にとって落ち着いて取り扱える範囲の情報じゃないかな、と思っており(そこを超えると、ある意味どこか分不相応っていうか、不要な義務感みたいなものが主になってくる気がして)。
なので現時点ではこのふたつのみにフォーカスして、自分の理解を噛み砕いて書き起こしてみました。

【目次】


1:シアターコンプレックス

まず立ち上げのきっかけ、プロジェクトメッセージは下記のとおりです。

演劇プロデューサー 松田 誠が発起人となり、新型コロナウイルス感染症の影響により大きなダメージを受けている舞台業界に希望を与えるため、この度 『舞台専門プラットフォーム「シアターコンプレックス」』という新たなプロジェクトを発足。5月1日よりクラウドファンディングを開始することとなりました。

概要が読めるサイトはこちら(fanbeats内)。松田さんのコメント全文を引用するのは長すぎるので、サイトより直接御覧ください!
fanbeats.jp

プロジェクトとしてはオール・オア・ナッシング型、達成しなければ返金されるタイプのクラファンですが、
残り2週間の段階で、なんとすでに目標金額の105%を達成(5月24日夕方時点)。
そのため界隈ではすでに広く知られている存在ではあると思いますが、以下わたしが個人的に感じた内容です。

◆応援トークから見えること:松田さんによる”プレゼン”

5月1日からクラウドファンディング最終日の6月7日まで、38日間連続で、松田さんが多種多様なゲストを迎えて行っている「応援トーク」。
この「応援トーク」こそが、シアコンを理解する鍵というか、シアコンが「目指しているもの」を徐々に場に立ち上げて、色んな立場の人へ共有していく役割を、担ってきているように思います。
毎日19時から(※以前は18時スタートでしたが、後ろ倒しになりました)生配信されている「応援トーク」は、下記から閲覧でき、アーカイブは翌日の12時に同ページ内にアップされる仕組みです。
fanbeats.jp

私が応援トークを見ていて理解した「シアコンが目指すもの」は、下記のような内容です。

  • 舞台が上演できない今、劇場に集まれない今だけれど、何かできることを模索したい
  • その解として、リアルで集まれないならオンラインにその場=架空の劇場を作りたい
  • 舞台に関する様々なクリエイティブなものが集まるプラットフォームにしていきたい
  • それを通じて俳優はもちろん、スタッフにも仕事を生みたい
  • 2.5次元に限っているつもりはなく、小劇場も含めて色んな舞台を広く救いたい

松田さんは徹頭徹尾プロデューサーだし、稀代のアイデアマンだし、常に最前線を走り続けているトップセールスマンでもある。
現場の人でとにかく言行一致の人だな、としみじみと思うんですけど、そんな松田さんが何を考えてこの企画に至ったのかがよくわかるなと、応援トークを通じて感じました。
「舞台公演を諦めないために、今の状況でまずできることを考えたい」
その解が、オンライン上に”架空の劇場”という新しいプラットフォームを作ることだった、という点が、ごくシンプルに伝わってきました。


そう、応援トークはある種、松田さんによる大掛かりなプレゼンでもあるのではないか、と感じるんです。
それを目的として始まった企画ではないと思うんですが、いろんな回を見ていると、プロジェクトに対する考え方や目的が自然と明らかになっていく印象を受けました。

「具体性が弱い、支援によって何を助けられるのかがわからない」という声が立ち上げ直後から上がっていた点については、
良くも悪くも「そもそも興味がある人は自然と応援トークを聞くだろう」という前提が恐らくはあり、そこに依った情報発信になってしまっていたためなのかなと。
わたしはお客として、自分が松田さんのフォロワーであることを長らく自認していたので、今回シアコンで松田さんが何を目指しているのかも、なんとなくですが自然と想像できている部分もあったのですが、
だといってお金を出せるものでもないというのも理解できるし、トークを色々聞いてみないと実態が掴めないのは、確かにちょっと不親切だった点かもしれないですね。


でもその後「企画室」ページも新しく立ち上げられ、何を目指して走り出しているのかが、より目に見える形で提供されるようにもなったので、
興味を持っている人はより落ち着いて支援を検討できるのではないでしょうか。
note.com


もうちょっと詳しく知りたい、という観点で応援トークを見てみたい方におすすめしたいのは、

  • 初回になった佐藤流司くんの回
  • 演出家である松崎史也さんの回
  • 脚本家・演出家である御笠ノ忠次さんの回

です。
流司くんの回では、初回だからこその熱意や、現状への焦燥感がよりリアルに伝わってくる点、
松崎さんの回では、3月上旬のまだ状況がどうなっていくかまったく見えなかった頃の舞台現場の話が含まれている点、
御笠ノさんの回では、シアコンの全貌や狙いがまだぼんやりしていた部分について御笠ノさんが松田さん問いかけることによって、具体的に紐解かれていく点が、
それぞれ聞き応えのあるポイントでした。
あっあと作曲家の和田俊輔さんの回も外せないな…というか、どなたのお話も、聞いているだけで本当にすごく面白いです!
ゲストの皆さんは誰もが第一線で活躍している方で、その出自も職種もバラエティに富んでいるので、舞台好きにとってはそんな人たちと名プロデューサーの対談なんて、面白くないはずがないです。
「これまでに具体的に作品を見たことはないけれど名前だけを知っている」俳優さんやクリエイターの方について知るきっかけにもなりますし、
そもそも松田さんの話をこんなに沢山聞ける機会は今までなかったので、その点だけでも個人的にはすごく嬉しいです。

◆「応援トーク」が繋いでくれているもの

応援トークは時間帯の都合上、リアルタイムで聞くことがほぼ無理なので、翌日にアップされるアーカイブを、わりと順序は無視して好きなように聞いています。
なのでごく気軽に、ちょうどラジオ番組を聴くような感覚で、松田さんと色んなゲスト陣との会話を聞けるタイミングで楽しんでいるのですけど、
そうしてトークを聞いている時間が、今の私にとっては「舞台と自分を繋ぎとめてくれるもの」のように、感じられています。


劇場にいけなくなって、あっという間にもう3ヶ月が経ちます。
状況はその間にも大きく移り変わっていて、思いっきり落ち込んでみたり、奮い立たせるように元気を出してみたり、自分でも目まぐるしいなぁと感じる感情の変化が起きました。
でも気づけば、劇場にいけないことが自分の中でも徐々に当たり前になりつつあり、
どんなに恋しく思っても届かない「観劇」という大好きな趣味に、どう気持ちを向けたらいいのかがわからなくなる瞬間が、沢山訪れるようになりました。
かつて過ごしたような幸せな時間と今との間には、あまりにも大きな隔たりがあって、手を伸ばし続けていたいけど、その方法すらわからなくなってきていて。
なんだか虚ろな感覚が体の中に溜まっていることを、どこか他人事のように感じたりもしていました。


そうして自分の心理状況がどこか緩慢に感じられるような時に、シアコンの応援トークを再生してみると、前のようにちゃんと感情が動くことを実感できるんです。
舞台が好きな人たちが、いろんな言葉で「舞台が好き」って話しているのを聞いているだけで、
眠ってしまいそうになっていた何かが、自分の中にふわっと蘇るような気がします。
楽しい話には自然に笑顔になれるし、
舞台が見られないことについて、今はさみしくても悲しくてもいいんだ、そう思えて深呼吸ができるし、
だからこそ「舞台を見たい」って思い続けていたいなと、改めて感じることができる。
シアコンのトークを聞いている時間は、そんな風に感情が動くきっかけを、わたしに与えてくれています。


過去に出演した舞台の裏話だったり、これから何をやってみたいかを語ってくれる松田さんとゲストの皆さんの言葉は、どれも真っ直ぐとしたエネルギーに満ちていて、
形を無くして溶けていきそうな自分の感情に、輪郭を再び与えてくれているような、そんな気がします。
それがまずとてもありがたい。

シアコンが目指しているのはこれまでにどこにも存在しなかった取り組みであり、
舞台が劇場で上演できるようになった未来にも改めて残り続ける場所・新しいプラットフォームを作ること。
逆境の中からどんな新しいクリエイティブが立ち上がるのかが、とても楽しみです。

2:舞台芸術を未来に繋ぐ基金=Mirai Performing Arts Fund

次に紹介するのは「舞台芸術を未来に繋ぐ基金=Mirai Performing Arts Fund(通称:みらい基金)」です。
クラウドファンディングは4月末スタート、終了日はまだだいぶ先の8月25日。5月24日夕方時点で、約33%の達成状況となっています。
motion-gallery.net

この公益基金では、寄付による原資を使い、新型コロナウイルス感染症の拡大防止によって活動停止を余儀なくされた舞台芸術に携わる出演者・クリエーター・スタッフ(個人、団体問わず)に対して今後の活動に必要な資金を助成します。

こちらは立ち上げの時点で賛同人に俳優の伊礼彼方さんの名前があったことで、存在が意識にのぼっていたのですが、
先日上記のクラファンサイト以外にも、新しく基金についてまとめたページが立ち上がったとのことで、さっそく覗いてみたところ、あまりのわかりやすさにおどろきました。
なんといってもaboutページの記載事項が、圧倒的にわかりやすいです。
www.butainomirai.org


ユーザビリティが考慮されていて、知りたい情報が端的に書いてあるので読みやすいですし、とても丁寧に練られている印象があります。
発信するまでにかなり整理・検討を重ねたんだろうなと感じました。

◆個人的に惹かれた点をいくつか

冒頭でも触れたとおり、みらい基金が助成の対象としているのは、
新型コロナウイルス感染症の拡大防止によって活動停止を余儀なくされた舞台芸術に携わる出演者・クリエイター・スタッフ(個人、団体問わず)」とのことです。
法人の場合はその規模も比較的小規模なところを想定しているそう。
舞台の上演には、音響、照明、その他様々な専門職の方が関わっていますが、いまはそういった職種において、ほぼすべての仕事が無くなっている状態なのではないかと推測されます。
法人で活動されている方のほうが恐らく少ないだろうし、完全フリーランスの場合に受けられる援助の口が日本の場合はとても少ないと考えられるため、
そういう方々に向けて、観客側から具体的な支援に繋げられるのは、とてもありがたいなと思いました。
たとえ再び劇場で上演が叶うような環境になったとしても、それがまだ遠い未来のことになってしまうとしたら、その時に作り手側として仕事を担ってくれる存在が激減してしまっているのではないか、という危機感が、個人的にはずっとあって…。廃業を選ぶケースだって十分にあり得るはず、だって仕事ができないのですから。
生業とするものが絶たれるという現状はあまりに厳しく、軽く触れられるような話題ではないとも思ってしまうのと同時に、それでも「何もできないよりは何かできることがあるほうがよい」ということを信じたい気持ちです。


みらい基金から発信されている情報の中で、個人的にとてもいいな、と思ったのが下記の2点でした。(いずれも先程URLを載せたaboutページ内の記載です)
1つ目はこちら。

4.長期的に、引き続き寄付と助成を継続します。

クラウドファンディングは2020年8月25日に終了しますが、終了後も、寄付場所を運営事務局であるパブリックリソース財団内に移し、引き続き寄付の募集と助成を継続し、舞台の未来を繋いでいきます。

クラウドファンディングは性質上、どうしてもゴール金額と締切が決まっているので、締切を迎えたらそこで終了になりますが、
なにか観客側として支援ができたら良いなと感じる時に、継続的に受け付け先が残り続けてくれるのはありがたいです。

2つ目がこちら。

1. なるべく素早くお金を届けたい

8/25クラウドファウンディング締切り日前の、6月末から助成金の配布を始められるようにしました。「いち早くお金を届けることが重要」という考えが「みらい基金」の根底にあります。

ここには、とにかく「は、早い!」とびっくりしました。
本来ならば達成しない限り資金は動かせない決まりだけれど、コロナ禍の状況を鑑みて、クラファン運営会社が特例として可能にしてくれているとのことです。
8月後半を待ってからではとうに手遅れになってしまう可能性も頷けるところで、より実態に即した運営を目指そうとしている真摯さが表れているように感じました。


その他、いいなと感じるのはそもそもの「わかりやすさ」です。

支援を考える側として知りたいポイントである、

  • 援助が提供されうる側はどのような人たちになるのか
  • 援助先の決定プロセスはどのようなものか
  • 公益基金による寄付とはどのような性格をもつのか

上記のような内容が、とにかくわかりやすく説明されているので、興味がある人はぜひ上記のaboutページから一読してみてほしいです。
約2時間のオンラインでの説明会がなされたとのことで、その短縮版も制作されて動画が上がっているのですが、短い中にも仕組みの図示も出てきており、理解がしやすいです。
youtu.be
「公益基金によるという性質上、過去の損失に対しては補填ができない」とのことだったのですが、だからこそ名称を「みらい基金」としているのかな、とも感じました。
この未来のためという点については、例えば俳優が将来舞台に立てる日にむけた”維持”にかかる費用も、助成対象になると言われていました。
舞台を上演できる未来につなげるために、必要な支援を必要な場所に届けるにはどうしたらよいか、ということが、ごくシンプルに練られたプロジェクトだと思います。


まとめ

今回ふたつのクラウドファンディングについて、自分なりに整理してみた結果として、

  • シアコンは舞台にまつわる新しいクリエイティブの形・新しい場所を、長い息で創出していく
  • みらい基金は支援が必要な個人・小規模団体に、審査の上で具体的に金銭面での助成を行う(スピーディかつ長期的に)

というふうに、それぞれ理解しています。
そうしてまとめてみると、ぱっと見では目的は全く異なっているようにも思うんですが、共通していることも、もちろんたくさんあって。
「経路が違うだけでゴールは一緒だったりする」という下記の伊礼さんの言葉が、とても心強いものに感じられました。



こういった支援型のクラウドファンディングに興味がある人がいるとしたら、まずは積極的に一次情報にあたってみることが大事なんじゃないかな、と感じています。
その上で、自分はどう感じたのか、どう判断したのかを考えて行ったら良くて、それ以外は正直どうでもいいっちゃどうでもいいはずなんです。
影響力のある人、自分にとって好ましい人が、賛同/ないしは批判していたら「この人がそういってるんだからそうなんだろう」と思って、そこでおしまいにしたくなるのもわかるんですけど、それで本当にいいんだっけ?ということは、一度問い直したい気持ちがずっとありました。


「好きなものが同じなのだから、考え方も同じに違いない」というのは、それは単なる幻想でしかなく、賛同する・しないはどこまでも個人の自由。
そもそもこれは「お金」が動くこと。
そこに対する経済的・精神的な余裕の有無や価値観のあり方は、人によって千差万別なはずだし、他者と比較するようなものではないはずです。
大切なのは自分の意志であり気持ちであって、誰かと比べる必要はないし、義務感を得る必要も一切ないんだという点は、自分に向けても改めて文字にしておきたい部分です。


考えたいんだけれど、とっかかりがわからないと感じていたり、他の人がどう考えているか知りたいというような場合に、この記事が何らかの役に立っていれば嬉しいです。