こたえなんていらないさ

ミュージカル『刀剣乱舞』を実家とする舞台オタクのブログです。推しとご贔屓がいます。

朗読劇「僕とあいつの関ヶ原」「俺とおまえの夏の陣」2作品を配信で見た感想

めちゃくちゃ時間経ってしまい今更!なんですけれど、せっかくなので感想を書き残します!

6月27日にライブ配信された朗読劇「僕とあいつの関ヶ原」「俺とおまえの夏の陣」2作品を、当日のリアルタイムおよびアーカイブ配信で見ました。(※略称はそれぞれ僕ヶ原・俺の陣となっているので、以降そう表記します。)
www.tv-asahi.co.jp

2014年~2016年にかけて様々なキャストによって上演されている両作品ですが、今回は2016年上演版のキャストが”再集結”する、という形でのオンライン配信でした。
もともと劇場で上演されていた作品を、オンラインの形に整え直して再演するというのは、今のところちょっと珍しい試みかも。
ちなみに2016年の詳細はこちら。(再集結!を打ち出したくて、2020年バージョンも宣材写真はわざと変えずに、このときのままにしたんだろうなぁと推測。4年前なのでさすがにみんな若い…!)
www.gingeki.jp

2016年までの上演は、作品名は記憶にあるもののいずれも見たことはなく、今回まりおくんが両作品に出演しているのでどちらも観劇しました。
舞台上で動きをつけての上演だった以前のバージョンを知らないので比較ができない感想になるのと、主にまりおくんについての感想が多めです。





◆僕ヶ原について

この作品は、石田三成徳川家康両陣営、そしてそのどちらにもつくことが決められずに惑い続ける小早川秀秋から見た「関ヶ原の戦い」が描かれています。
語り手の視点が複数あって、それがけっこうなテンポで切り替わっていくのですが、不思議と見失うことはなく、無理なく物語についていけるのはやはり演出の見事さだと思う(さすが中屋敷さん!)。
その物語の中心であり、つまりは敵方同士である石田三成徳川家康を、どちらも同じ役者(染谷俊之くん)が演じていることに最初びっくりしました。
みんな一人で複数の役を演じるとはいえ、そんな真反対な配役をしてしまうのか!と。
染さま、本当に声が魅力的だし、演じる力が本物だな…と久しぶりにお芝居に触れて圧倒されました。昔から、技量が高いなぁと感じる役者さんの一人です。
松平忠吉と共に途方も無いボリュームのト書きをこなす尾関陸くん、島左近と染音という男性・女性の二役を演じ分ける荒田至法くん、翻弄される中で自分の意志の置きどころが永遠に決められない、情けなさのかたまりのような小早川秀秋を演じる松田凌くん。
みんな本役以外にも細かな場面描写上の役をはさみつつ、物語の中でしっかりとセリフのボールを投げ、受け止め、投げ返しを続けていて、役者同士の表現の力によってひとつの場が丁寧に編み上げられているような感覚を覚えました。熱量のやりとりが、見ていてすごく心地よくて、本人たちが楽しんでいることが伝わってくる感覚に。


そしてそして、まりおくん演じる井伊直政大谷吉継
”演劇”という意味で、まりおくんが役を演じている姿を最後に見てからはもう1年以上が経っていたので、どれほど見たかったことか…と、まずはそれだけで胸がいっぱいになってしまいました。。
井伊直政を演じるときの艶やかな声の出し方と、大谷吉継を演じるときの、巻き舌多めで強く濁らせた、だみ声の明確な対比。
前者は美しい鬼と言われるだけあって、顔に浮かべる表情全体がとてもつるんとしているけれど、反対に後者は「苦虫を噛み潰したような顔」とはこれのことだな、と思うような、皺を顔じゅうに深く刻んだ渋面で。
話の途中で、吉継から直政へ、ほんの一拍おいただけですぐになり代わる場面があるのですが、直政を演じるときは脚を組むと決めているようで、すっと脚を組んだ次の瞬間、まとわせる空気を全然別物にしてみせていて、画面を見つめながらウワァーとなってぐっと息を飲み込みました。
「こういうのを見られるのが本当にたまらないんだ…!」と、初見時はひたすら幸福感にしびれていた場面です。。好きな役者さんが生き生きと演じてる姿を見られることって、なんでこんなに嬉しくなるんだろうなぁ。。
(すごく短時間で変わらなくちゃいけなくて、喉やっちゃいそうでしたってアフタートークで言ってた!笑)

あと僕ヶ原は地の文のナレーションが、最初と最後どちらもまりおくんで、その嬉しさもひとしおで…凛として芯のある声の張り方がとてもとても好きです…なにより聞き取りやすい…!とにかくまりおくんの声が大好き!(結論)
途中で凌くんがアドリブで暴れた「ン侍にィ、女と書いてェ、ア侍女でェ~~~す!」のところは、素で「ん?」って表情で思いっきり凌くんを見て笑ってるのも可愛かった。

薄ら寒いを浮かべるような冷酷さを常に湛えながらも、時に己を深く省みる直政。
感情を顕にし時には怒鳴り散らしながらも、いくばくもない命を以て、真っ直ぐに三成に対する義を貫き通す吉継。
演じている姿をどういうふうに捉えたかを、こうして言語化していけるのがやっぱりすごく嬉しくて、なんかもうね…さっきも書いたけど、演じることを通して生き生きとしてる姿が見られること、本当に幸せ!涙

◆俺の陣について

俺の陣は僕ヶ原に比べると、話の展開がよりシンプルです。主人公は伊達政宗、そして彼を側で支え続けた片倉景綱・重長親子。同じ時代を共に熱く生きていく主と家臣それぞれの人生を軸とした物語です。

須賀健太くんがまず、さすがの一言で…!彼のお芝居も久しぶりに見たけれど、当たり前なんだけれどやっぱり芸達者なんだよなぁ。。
幼少期の、疱瘡を患ったことにより内に深く閉じ籠もってしまう姿も、その後成長し、伊達者として溌剌と戦国の世を渡る青年期の雄々しさも、壮年期を迎えて、泰平の世の中における引き際を見出していく穏やかな様も、色とりどりに演じ分けていて、なんというかあっけにとられるような気持ちに。お芝居がうまい…!
僕ヶ原も俺の陣も、演じる基礎力がしっかりとある役者さんばかりが出演しているので、見応えがとてもあります。このどっしりとした安定感は今年の再演ならではだろうなとも思えて、そういう意味でも4年前と比較して見たかったな~と惜しいことをした気持ちに。

染さまは両極の二役を行ったり来たりする僕ヶ原に対して、今度は物語を一本に太く貫く忠義者の家臣、片倉景綱を演じていました。
律儀で愚直、戦乱の中で生き延びる上で主君にとっては替えのきかない優れた知恵者。僕ヶ原と比較すると、染さまのしっとりとした声質がより引き立つ役のようにも。

猪塚健太くんは八面六臂の活躍ってこういうことを言うのだろうか!?と思わせられる、何役演じているのか数えるのが難しいほどのオールラウンダーっぷりで物語の骨格をひとりで作って支えています。
あんなに次々と違う役にぽんぽんと飛び移っていくの、混乱しないのかな?と見ているこっちが驚くほどですが、アフタートークを聞いた感じではむしろそれを楽しんですらいるようで、俳優さんってすごいわ…と改めて思うなど。

今作でのまりおくんは、片倉景綱の息子、二代目小十郎である重長を演じていました。
幼い生意気ざかりの腕白坊主から、武勲に憧れる血気盛んな若者へ、そして様々な経験を積み、歳を重ねて落ち着きと深い主君への忠信を抱く姿まで。
子供のころの「うわーい!」なテンション、幼さの弾ける悪ガキっぷりはごく可愛らしく、戦場に打って出らんとする青年期はまだ背伸びをしながらも、段違いに男らしく。
混じりけのなさ、父親とは同じ真っ直ぐさでも性質の少し異なる部分がきらきらとまぶしくて、まりおくんの役者としての魅力のひとつには、やっぱり本人が持つ素直さから生まれるものって絶対に絶対にあるよな、中屋敷さんも演出するときにきっとそこに魅力を感じたりしているんじゃのかな…などなど、見ながら勝手に考えていました。

まりおくんが演じる中で声の高低を自由自在に使い分けるところもすごく好き。緩急というか、リミッターのオンオフにすごく自覚的で、演じながらどこか遠いところに冷静な自分を残しているような、いややはり体ごと役の中に入り込んでいるような…つまりは自身がこちらに与える印象を決してひとつに留めさせないところ、やっぱりそこにやられちゃうんだよな~と、推しを推しているゆえんを噛み締め噛み締め観劇しました。うう、幸せ。。
直前に中屋敷さんからオーダーが来たという、僕ヶ原を受けての「侍女でェ~す」のくだりに他のメンバーがざわついていたのも、すごく面白かった。笑

◆両作品共通しての感想

「画面越し」に自室で座って観る配信朗読劇、どこまで作品に入り込めるものなのか、正直かなり不安でした。
でもいざ始まってみると、そんなに心配しすぎなくても、ちゃんとそこには「演劇」があるのだなぁと思うことができて、見て本当によかったなと。
慣れ親しんでいた劇場空間に自分はいないけれど、
でも画面の向こうで役者同士がぶつけ合う熱量のかたまりは、ちゃんとこちらに届いてくる。
そのことに、ものすごく感動しました。ホッとしたとも言えます。


セリフを読み上げる声色、ちょっとした目線の使い方、椅子に座ったままでできる身振りなど、様々に工夫を凝らして役や場面を演じわける役者のみなさんの表現がとにかく見事で、
とかく制限のある中でも、やっぱり演じることの「プロ」である彼らには、こちらに表現を届ける演技の力が間違いなく備わっているんだな…と改めて痛感させられました。

どちらの作品も、始まってしばらくして、やり取りされる感情の勢い、言葉の息遣いに、何が理由か自分でもよくわからない涙がじわじわと出てきて、
役者が「役を生きている」その時間を観客として共有することの本質は、形が変わっても変わらずにあり続けるものなんだなぁと実感することができました。


とはいえ、もちろんね!直接!演じる姿を見たいに決まっていてね…!涙
これを直にこの目で見られたらどんなに楽しいか、幸せかと、思わないでいることはできませんね。これはもう、いつまで経っても言い続けることだと思います。
だけど、たとえそれが叶わないとしても、リアルタイムで役者さんが演じる姿を見られることの喜びは想像以上に大きかったです!


◆上演に関して感じた工夫など

人数も4~5人と複数になる朗読劇のため、視点はぱらぱらと切り替わるのですが、誰にフォーカスしている場面なのかがカメラで自然と誘導される=視界が固定される点は、物語に入り込みやすくなる助けになっていたかもしれません。
この「視界が固定されること」は、わたしがふだん舞台作品を映像で見る上での苦手ポイントのひとつになっているんですが(本来ならばどこを見ていてもいいはずの視界が固められてしまうことに、言いしれようのない不自由さを感じてしまう)、やや複雑な場面転換にも無理なく観客を巻き込めるという意味では、逆に映像に強みがあるとも言えそうです。
そのぶんこちらが想像力をフルに働かせなくてもよくなってしまうことには、ちょっと危機感もあるんだけれど…。
たまにカメラの指定を失敗してそうな場面はありましたが、映像が大きく乱れたりすることはなかったので、見ている上でのストレスはほぼ感じませんでした。
また場面によっては会話をする2名を画面二分割で映していたりもして、見やすさがじっくり考慮されていたように思いました。


ブログに書く順番は前後してしまいましたが、先日TOHO MUSICAL LAB.を観たときにも思ったのだけれど、
「配信で届けること」を前提に、カメラワークも含めて予め周到に準備がなされている配信劇には、こちらの集中力を切らさないでつなぎとめるだけの力が備わっているように思います。
逆に、そういった演出面での工夫が全くなされないのであれば、どれだけ演者が熱量をもって演じていても、それをこちらに届けきることはかなり難しいだろうなと感じます。
あとは大前提として配信機材や回線が脆弱だと成立し得ないので、そこに十分なコストをかけられるかどうかは、観客側の満足度に与える影響がかなり大きそう。
その点、今回の僕ヶ原・俺の陣は、見る側がストレス無く集中できる環境が整っていたと思います。


次に音楽ですが、今回の上演で初めて導入されたという、生演奏でのアコーディオンによる伴奏が素晴らしかったです。
曲はすべて書き下ろしだそうで、物語に無理なくぴったりと寄り添うような音色が耳に心地よく、朗読の邪魔になることも決してなくて、劇伴としてとてもベストな形だったのではと感じました。
アコーディオンって鍵盤楽器だからひとりで主旋律と伴奏を奏でられるんだな…と見ながら改めて思ったんですが、
一台の楽器によるものとは思えないあの独特の厚みのある音の連なりが、作品を背後からしっかりと支えているように感じました。


最後にアフタートークについて。
両作品ともに終演後に設けられたアフタートーク、演出の中屋敷さんが司会を務めるかたちだったのですが、
俳優さん大好き!&演劇LOVEなやしきさんならではの視点で、演じる上でのいろんな観点が俳優のみんなから短時間なのにたくさん引き出されていて、すごく良かった!
関係性がしっかりできていて、お互いがすごく気さくにやり取りできる、和気あいあいとした空気感なのが随所に滲み出てました。
”演じること”について話すだけで、俳優のみなさんがすっごく楽しそうな表情になっていく様子に、またぐっと来てしまう。。
舞台作品のアフタートークって、たとえば小説でいうところの「あとがき」や「解説」に当たるような気がするんですが、物語に触れた直後にまた別の角度からの新しい情報を与えてもらえることで、作品の受け取り方がより多面的になったりする効果があると思っています。
今回のアフタートーク、そういう意味でも配信全体の満足度を高める内容でした!

◆その他雑感:自宅で配信劇を見るということ

おそらく配信劇を見る上でのあるあるで、もう慣れるしかないのだろうけれど、始まるまで自宅でソワソワしてとにかく落ち着かないのが、個人的にはわりとしんどい…!
自分のPC設定や配信環境に不備があってうまく見られないのではないか?という気がかりが、心配症ゆえどうしても拭えず。。
そもそも自宅に一人ではないため「これから私は配信劇を見るので!!!」と宣言して、孤独に集中できる空間を作ることも重要で。
配信の当日ですが、上記の宣言ののちに、天の岩戸のごとく部屋の戸を立てきりました。これはかなり人によって実現が難しいところですよね…。ご家庭の事情によっては、やりたくてもできない人はたくさんいそう。

自宅で見られるなんて手軽でいいじゃんと感じる人も多いと思うのですが、わたしは「こんなに神経すり減らすくらいなら、今すぐこの身を劇場に運びたい!」と暴れだしたい気持ちにならずにはいられませんでした。まじで心の底から、劇場に帰りたいと思った。
否が応でも物語に「集中できる」環境である劇場。そこに直接足を運ぶ意味は、やはりとても大きい…。劇場に行かせてくれ…!(結論はけっきょくここになってしまうのだった)





本当はもっと早めに感想書くつもりがこんなに遅くなってしまった…。
テレ朝動画でのアーカイブですが、明日まで購入可能・視聴は26日まで可能だそうです。ご興味があるかた、まだ間に合いますので記事冒頭のリンクから是非にどうぞ!
(…というおすすめをしたかったのに、記事化が遅すぎて大いに反省しています。。笑)