こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

「宝塚」という沼、もとい大海原を前にしたオタクの逡巡~検索の禁じられた世界で~

先週、「初めて宝塚を見に行ったよ!」という観劇記録を書いたところ、想像以上にかなりたくさんの人に読んでいただきました。
anagmaram.hatenablog.com

いやマジで、思った以上にヅカオタの方に届いてしまった。すみません&ありがとうございます…!笑
やはりそこは舞台オタクのはしくれ、「初見かつ他ジャンルの人の新鮮な感想って、どうしても面白いものだよね!」という把握がありまして、せっかくなら面白がってもらえたらいいな…と思いながらしたためた記事なんですが、これもまた思った以上に面白がっていただけて、何よりでした!
読んでくださった皆様ありがとうございました。
好意的に受け取ってもらえて、とにかくありがたいの一言です!


さて、はいからさんを見たわたしのその後。
内面がもうね、だいぶやばいことになってるんですが、とりあえず今のわたしは無駄に(?)運命に抗おうと試みており…
あとから読み返すときっと未来の自分が面白がるので、ここ最近の心の動きを書き留めておきたいと思います!

◆(自主的に)検索の禁じられた世界

とりあえず今、わたしは自分に「検索」を禁じています。

「え、何どういうこと?」ってなると思うんですが笑、とにかく宝塚に関する検索を己に禁じているんです。
暴れる右手を封じ込め、「柚香光さんについて調べたいけど…調べないッ…!」みたいな謎のあらがいをしている最中です。それはなぜかと言いますと!

なにかに突然ハマったオタクなら誰しも覚えがあると思うのですが、人間の、いやオタクの「これについてもっと知りたい!」という探究心、そこから生まれるエネルギーには、本当にものすごいものがありますよね。軽く発電とかできそう。
とにかく知りたい!というピュアな本能に忠実に従って動き始めること、それはイコール沼への高速落下のはじまり。
検索をしたら最後、誰に背中を押されるでもなく、後は勝手に転がり落ちていくだけ…。

舞台周りでじゃぶじゃぶと趣味の沼を泳ぎ回って8年目、もうまもなく10周年も見えて来ようというオタクなので、自分のこの「掘り下げ力」には、変な話ですが十二分な自信があります。落下の仕方が鮮やかすぎることに、自負心があると言えるくらいです。

…なので、ある意味逆張りのように、今はひたすら「自分から新しい情報をとりに行かない」ことにしているのです。検索は禁止!笑
(トップになられる過程とはどんなものなの?5つある組ごとにやっぱり特色や違いがあるんですよね、柚香光さんは…役を離れたときどういうタイプの方なんだろう…公演スケジュールってどんなふうに決まってるの?チケットってどうやって取るの?同期ってやっぱり特別なのかしら、公演っていろんな種類があるみたいだけど大まかに言うとどう分類されて…本当は知りたいことはたくさんある!!!笑)


なにか、新しい好きに出会ったとき。
これまでの私は、まるで生き急ぐかのような猛スピードで情報の海を転がり回り、四方八方に触手を伸ばしては情報を瞬時につかみとり咀嚼を試み、己の内面に「好き」の牙城をせっせと築き上げる…そういうオタク人生を歩んできました。
たぶんこの本質は、この先もずっと変わらないと思われます。とにかく出会ってしまったら最後、気の済むまで突き詰めずにはいられない…!という性の持ち主です。
その初期の勢いこそが、楽しさの源泉になっていったりもしますよね。


しかしその一方で。
趣味における重要なテーマに、わたしは「持続可能性」というものを自分に対して掲げています。
好きは大切で日々を支えるエネルギー源であり、なにものにも替え難い。しかし、その好きを追い続けるだけの体力・財力・時間は常に有限…というのは、古今東西、オタクの共通した悩みではないでしょうか。
趣味が大好きだからこそ、息切れしてしまわないよう、自分にとって心地よいペースを保つコツが必要。
厳しい目で己の手綱を引いて心を落ち着けることも、時に重要だと思っています。


今のわたしにとって、宝塚は出会ってしまった新しい「好き」の候補です。
この前のめりな興味の持ち方、知れば知るほど面白そうでワクワクと心が浮き立ってしまう状況から、ほぼ間違いなくそうだと思います。
なので、最終的に行きつく結果(=沼落ち)はおそらくもう決まっているだろう…と、うっすら未来を覚悟しました。笑

しかしなるべく、その「ドボン!」の結末までの速度を、可能な限り緩めてみたい…というのが今の目論見なのです。
高速で駆け抜けて、楽しく溺れていくのも体験として最高なんですが、たまにはそうじゃないアプローチを試みてもよいのかなと。
なにせ、宝塚は軽井沢で別荘地。(※冒頭リンクの前記事参照)
本宅は本宅で、引き続きしっかりと守っていくという使命があります。そのためにはやはり「持続可能性」をシビアにみつめていかねばなりません。
初期衝動って本当に凄まじいエネルギーを持っているので、ただでさえ我を忘れやすい(=財布から紐が消失する)自分には、これくらい意識的なブレーキが必要なように感じたのでした。

◆沼ではなく、それは「大海原」である

そして、なぜ上記のようにブレーキを利かせられる(と思い込んでいる)方針を立てられたのか…というと、それは何もわたしのメンタリティによるものだけではありません。
それは”宝塚”というジャンルをとりまく総合的な印象に影響されたものです。


そう、このジャンル、あまりに広大すぎて、向き合っていると逆にゆったりとした気持ちになるというか…

そうなんです。沼なんかじゃない。この広大さ、底の知れなさ…
これは間違いなく、大海原だ。


なぜ「宝塚=海」だと感じるのか、その個人的な背景をちょっと解説します。 
わたしがこれまで長く慣れ親しんできている界隈=2.5次元は、まさに発展途上にあるといえるジャンルです。
ジャンルとしてはもう定着したと感じますが、やはり総体としては、新しい地平を目指して走り続けている最中の、まごうことなき開拓者であると思います。
わたし自身、2.5次元の演目をたくさん見る方かといわれると実はそうでもないんですが、「入り口がテニミュ、これまで一番回数を通ってきた演目が刀ミュ」である以上、オタクの所属といいますか、心持ちの背景にはやっぱり2.5次元が大きな位置を占めています。


特に大好きで初期からずっと追い続けている「ミュージカル『刀剣乱舞』(略称:刀ミュ)」に関しては、セットがこんなに豪華になった、公式ペンライトがグレードアップした、会場がどんどん大きくなった…!と、運営全般にかけられるお金が明らかに豊かになってきていることを体感して、この数年を過ごしてきました。
2015年、ちょうど5年前の秋に、刀ミュくんが今はなきAiiA 2.5 Theater Tokyoで産声をあげて走り出した頃からを知っているので、お客としても自然と「一緒に走ってきた」感覚があるのです。
「こっちの方に行ってみるから、ついてきてよ!」「うん、わかった!」というやり取りを作品シリーズとの間に交わし、すさまじい勢いでの彼の成長、演目の発展をそれは嬉しく見守ってきました。
なので正直、刀ミュに関しては、やろうと思えば「あの頃のこれはこうで…」と、滔々と蘊蓄を語り出す、古参オタクムーブが容易にできてしまうくらいです。(※それゆえ、なるべくやらないように気をつけています。)
つまりはそれくらい、一個人が歩みをつぶさに追ってくることが可能な範囲の規模感であったとも言えるのです。


しかし一方、宝塚はというと…
100年を超える伝統、兵庫と東京に自前の専用劇場を持ち、全5組のうち複数組が同時並行で演目を上演する体制。
「いやそんなの、どうやったって追い切れるはずがない…!」と、素直に真っ先に思いました。
わたしから見ると、縦にも横にも恐ろしいほどの広がりがあり、どちらに向かって進んでいったら良いものか、見当がつかないような果てしなさに感じられます。

しかしだからこそ逆に、正面から向き合ったとき、ある種の気楽さがあるようにも思えたんですね。
これだけ広い世界なんだから、どこをどう辿っていくか、本当に個々人次第だし、アプローチは多種多様に広がりうるなぁとすんなり思えたのです。
かまり立ちからいきなり猛スピードで走り出したやんちゃな5歳児(※刀ミュ)の隣で、全力で伴走してきたような必死さとは、全く違う景色が見える世界なんだな、と。


気づけばわたしは、見知らぬ景色を前に、ひとり呆然と佇んでいました。
目の前に広がっているのは、美しく光をたたえる真っ青な海。
ざぶんと波が打ち寄せる波打ち際で、とりあえず途方に暮れていると、
通りすがりの人が「ここから先どう過ごすかは、あなた次第ですよ、好きになさい」と優しく微笑み、そっと立ち去っていきました。

さて、どう過ごしましょうか。
海を眺めるだけで満足ならば、砂浜にパラソルを立ててデッキチェアに寝そべっていてもよい。
はるか沖の波頭のちらちらした輝きにぼんやりと見惚れていてもよいし、気が向いたらちょっと靴を脱いで、浅瀬でパシャパシャ水の感触を楽しんでもよい。
もうちょっと欲が出たら、浮き輪を取り出して沖に浮かんでみてもよいし、決意ができたらいきなりモーターボートを持ち出して水面をかっ飛ばしてもよい。


今のわたしは「この大海原で、どういうふうに遊んでもらっても構いませんよ」と、鷹揚に手招きをされている気持ちなんです。

「そっかぁ、じゃあ好きなペースでのんびりと♪」とか呑気なことを考えていたら、突然の高波で沖に拐われていくオチなのかもしれませんけども…!


◆検索を禁じた結果の最近のわたし

大海原を目の前にして、意地になって検索をせず、じゃあどう過ごしているのかというと、手元にあるものは繰り返しての摂取を可としています。もう手元にあるんだからしょうがない(?)。

その結果として「隙あらばポーの一族のCDを聞いている」みたいな人間になっています。かと思えば在宅勤務中のお昼休みの間に、ブルーレイでポーの一族のフィナーレだけ再生してみたり…(20分だからいけるやろ!と思ったらいけた)(試すなや)

…すると不思議なんですが、この間現地で見たせいか、新しい情報はほぼ入れていないのに、どんどん勝手に理解が深まっていってしまってて…あ、アレ?みたいな感じです。
うちに秘めた掘り下げ力がすでに唸り始めている。こわい。落ち着いて。じっとしてて!唸らないで!!!

なんでしょう…例えばなんですけど、この間はいからさんで、真っ白い光のかたまりのような若々しいデュエットダンスを見たのですが、ポーの一族のデュエットダンスはそれとはタイプが全く異なりますよね。大人の色気というか…いやそんな平板な言葉で表してはもったいない美しさがある…。
醸し出される雰囲気について、トップコンビの明日海さんと仙名さんは劇中ではカップルではないものな…などとつらつら考えていたのですが、
「娘役からのあのどこか挑戦的なまなざしは、本編では主人公より年上・かつ初対面のときに瞬間的に憧れの存在だったことを表しているのかしら…」みたいなことが浮かんできて、た、たのしい…
みたいな解釈はおいておいても、もうね、あのお二人のデュエット、美しすぎてくちがあいてしまう…。客席に体を向けてユニゾンで並んで踊るところの美しさったら。言葉が出ない!
わたし仙名彩世さんめっちゃ好きです…!(急に告白すな)
いやなんかもう、「アーー好きーーー!!!」しか出てこなくなってしまう…ほんと…来月、推しとの共演が見られるはずだったのに…超くやしいいいいい!!!!(※るろ剣京都編)
稽古場映像も「好き…」しか出てこないです。好きです。娘役さんの稽古場のスカート、とっても可愛いですね…。ボーナストラックと題してブルーレイにとつぜん稽古場映像が入ってるの、けっこうな罠じゃない?
なんせ、テニミュの頃からいわゆるバクステ=バックステージと呼ばれる稽古場映像に慣らされた体なので…た、たのしい…


…みたいな感じです。手遅れ感すごくないか???(冷静なツッコミ)
手持ちの映像とCDだけでこんなに楽しめてるのに、これで検索したらまじでやばいことになると思いません?
逆に情報の飢餓状態に置くからこうなるのかしらと思ってみたり…


本当に、これからどうこの広大な大海原とお付き合いしていこうかなぁ…と、まだ波打ち際でウロウロ駆け回っている最中です。
どんなスタイルで海に出ていくのか、じっくり、じわじわと見極めていけたら…という希望的観測…!
いやーどうなるかな。とりあえず、すでにめっちゃ楽しいです。
とりあえず、、はいからさん、まだちょっと先ですが、黒燕尾見に行ってきますね!!!(※前回のフラグを回収して終わります!)