こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

愛と希望を風に乗せて。宝塚花組「はいからさんが通る」を駆け抜けました

宝塚花組はいからさんが通る」大千秋楽。無事に迎えられたこと、本当に本当に、おめでとうございました!
釣り上げられて甲板で跳ね回る魚のようにいきのいい初心者観劇ブログ、気づけば3記事目です。「あぁこいつか!」と思い出してくださる方のために1記事目のリンクを貼ります!笑
anagmaram.hatenablog.com

その後のわたしはどうなっているかというと…観劇回数をさらに重ねていて、いったい何が起こったのか、自分でもまだよくわかりません。
案の定というかなんというか、見事に熱に浮かされたような数週間を、きっちりと全うしてしまいました。
千秋楽はライビュに駆けつけたのですが、見届けられた幸福感で、まだ胸がいっぱいです。

10月に初めて劇場で宝塚を見た初心者の立場から、「はいからさんが通る」という演目を大好きになった、まとめの記録をお届けしたいと思います!

◆見れば見るほど、好きになってしまう作品

はいからさんから受ける印象をひとことで表すと、これでした!
お話の中身がわかっていても、何度見ても常に新鮮な気持ちで楽しめて、泣けるシーンでは涙が止まらなくなり…本当に、あまりにも、徹頭徹尾楽しかった!!!


最初に見たのが東京での3公演目、以降は終盤にまとめて観劇した形になったんですが(なんか…全部で5回観てたらしくて…ライビュいれたら6回…お前…)、
自分の目が宝塚の文脈に慣れてきたというのはもちろんあると思うんですけれど、それだけじゃなく、明らかにお芝居の充実度合いが、全体を通してぐんぐん進化していっているように感じました。
普段から、なにか舞台を見ているときに思うことなんですが、作品の中に良い循環が出来ている時って、生き生きとした独特の瑞々しい空気が生まれてくると思うんですよね。
見ている間、お話の勢いが途中で決して止まることなく、勢いが死なずにぐんぐん前へ前へと進んでいっているような感覚。今回のはいからさんから受ける印象が、まさにそれでした。
テンポよく進んでいくストーリーには一切の中だるみがなくて、場面場面に出てくる登場人物が、本当に全員、今この場を生きている、というエネルギーに満ちあふれていました。
まさしく生の充実を感じて…舞台観劇にしかないこの感動を、ありありと受け取れることが、本当に幸せで!


目が慣れてきて飽きるのではなくて、反対にフレッシュな感想を毎回抱けるのって、明らかに演じている人の力によるものだと思います。
お芝居の変化でいうと、個人的に印象に残っているのが、蘭丸でした。
最初は、紅緒の隣や後ろにそっとくっついていて、控えめな印象を受けるというか、内側から強く押し出されるものはそんなに感じなかったんですが、それが大きく変わっていて。
幼い頃から本当に大切に想っていた存在を、降って湧いたような許嫁の存在に、突然さらわれてしまうやるせなさ。
でも自分が紅緒の隣にいることはできないのだと、少しずつ実感していく、どうしようもないその切なさが、表情やふとした瞬間の立ち姿からじわじわと伝わってくるようで、後半の観劇では何度も泣いてしまった…。

蘭丸は「前提として、女性が男役を演じている+その役柄が歌舞伎の女形である+さらに劇中で女装もする」…という状況なので、考えれば考えるほど現実がねじれていくようで初心者は大混乱してたのですが笑、
でも不思議と「女性そのもの」として板の上に立っている印象は、やっぱり受けないんです。なのでまじで本当によくわからなくなる…!(園遊会のシーンの牛五郎に共感せざるを得ない!)
二幕冒頭の大正モダンガールズで着物で踊っているところは、あくまでも女形なんだよなっていうのが伝わってきましたし、いや、やっぱりよくわからなくなってきた!現実がねじれる!ジェンヌさんってすごい!!!

忘れちゃいけないのが、その隣にいる牛五郎~!!!涙
牛五郎はほんとうに気のいいやつだ…「飲み直すか!…蘭の字」のところ、あんなの絶対泣いちゃうよ~!!!
後半観劇しながら思わず何回も「牛五郎~!」ってツイートしてました。だって好きなんだもん!
伊集院家に乗り込んだところ、槍を持って襲いかかってくる御前を前にして、紅緒と二人で「あなたが前に行きなさいよ!」「いやここは親分が!」みたいにわちゃわちゃしてたりとか、細かいところを見つければ見つけるほど好きで。。


そして何より、弾けるエネルギッシュなヒロイン、紅緒さん…!本当に素敵だった!
ライビュで千秋楽を見ていて、えっ?と思うくらいに、その場に「存在する」ことの確かさを感じたというか…「可愛くておきゃん」の、その先を見たような気がしました。

じっくり見たいんだよな…と常々思っていた、絵皿を割った後、斬りかかろうとする御前と対峙するところの表情。ライビュでしっかり抜かれていたんですが、正面から御前を睨みつける眼差しの鋭さ、本当にびっくりして声が出そうになった。
あとは浅草の乱闘騒ぎのところ!縦横無尽に暴れ回るとしか表現できない一連の乱闘も、その後に少尉につかまれた腕を「はーなーしーて!」と振り回すところも、真に迫ると言ったらいいんでしょうか!?本物の酔っぱらいだ!!!って思いました。
…というか、紅緒さん、レースの日傘を日傘としてではなく、あれは最早日々武器として携帯してますよね…?笑

何度困難に晒されても、めげずに前を向く、眩しいエネルギーそのものとして生き生きと動き回る紅緒は、ヒロインとして、最高に魅力的でした。
あの紅緒だから、伊集院家の人たちもどんどん存在を受け入れて惹かれていくのだし、恋敵のはずの環も友情を優先してしまうし、出会ったばかりの鬼島軍曹も力を貸したくなるし、冬星さんを惚れさせてしまうのだなって…
…言わずもがな!!!伊集院少尉もね!!!!!ウッ…(言葉にしたらセルフダメージを受けた)

◆その組み合わせが奇跡みたい。柚香光さんと華優希さんが作り出すもの

トップコンビのおふたり…。もうなんか本当に、言葉がなくなる。運命が奇跡のマリアージュおこしてる…って思います。
お芝居の部分でいうと、おふたりの感情のやりとりは「今ここに息づいているもの」を、お互いに交換しあっている様子が、ありありと伝わるなと思うんです…。
少尉と紅緒のあの空気感は、おふたりだからこそ作り上げられる、唯一無二のものなんじゃないかな…と思わずにはいられませんでした。

好きなシーン…でいうと、好きなシーンしかないのですが…「花嫁修業」のサンドイッチのところとか、もう本当にだめ。。。何回見ても「ヒィッ…」ってなっちゃう。
回を重ねるうちに、少尉が紅緒への想いを本格的に自覚するのは、あそこなのかな…って思うようになりました。
修業のあと、少尉が差し入れてくれたサンドイッチをひとくち頬張るものの、こてん、と少尉の肩に寄りかかって眠りに落ちてしまう紅緒。
その重みを肩で受け止めた瞬間、はっとしたように手が動き、静止するその流れとお顔!!!しょ、少尉~~~~!!!!!(のたうち回る)


そんなウルトラかっこいいの権化である少尉を演じる柚香さんは、また…本当に!絶対に!同じお芝居をしない方ッ…!ということが、回数を重ねるごとにビシバシと伝わってきまして…
「あっそこのセリフ、そういう感じで言うのか!」とか、「わぁ、このタイミングで笑い声がこぼれた…!」とか、ひとつとして予定調和的な部分がないといいますか。。
その場に「伊集院忍」として確固たる軸を貫きながらも、何回でも板の上に、新鮮に生きる姿を立ち上げてみせている…と見ていて感じました。
お芝居って正解のない世界だと思うし、いろんなアプローチのタイプがあると思うんですけれど、わたしはこの…柚香さんのお芝居の在り方が、ものすごく好きです…!
どうしようもなく目が惹きつけられて、一瞬一瞬をつぶさに追うように、記憶に刻むように、見てしまいました。
そういう風に役として生きようと心に決めて、それを実際に観客に提示できる実現力。そんなの好きに決まっているし、あまりにもかっこいいよう…。


二幕までのお芝居パートでもう、お二人にはめためたにやられているんですが…問題は、フィナーレの、デュエットダンス。ほんっっっっっとうに、あれ何なんですかね…!?
見てると、じんわり涙出てくるんですよ。。なんであんなに全身で発光するかのように、互いに愛を表現できるのだろう!?って思います。わけがわからない。
柚香さんがね…とにかく華さんを見つめ続けているんですけど、すべての視線で迎えに行っている気がして。
なんというか、ふたりが向かい合う瞬間は100%完璧に絶対に目を合わせてみせる、という確固たる意思を感じます。オペラで見ていて何度「?????」の顔になったことか…愛の光線でレンズにヒビが入りかねないよ。

そしてそして千秋楽。デュエダン…すっごかったですね!!!!!!(興奮のあまり急に爆音)
踊り終えて銀橋で手を取り合うお二人。拍手に包まれるその一瞬の間ののちに、そっと柚香さんが華さんにおでこを寄せて「こつん」とくっつけたのを見た瞬間…まじで、そこまでに見たものの記憶がいったんすべて吹っ飛びました…。
2週間ほどまえの、アクシデントがあった公演で、最後にやってみせた仕草のお話は聞いていまして、つまりはそれと同じ動作だったわけなんですけど!
当日にレポを見た時「見た人はさぞや、クリティカルダメージを…」と想像していたんですが、いやほんと、破壊力凄まじかった。着ていたニットワンピの胸元を思わずぐしゃ!握りしめました。頭の中でなにかが弾けた。まじで記憶障害になるかと思った。

…でさぁ、そんな甘くて甘くてたまらん仕草が、あのおふたりにはまぁほんっとうに似合う!!!説得力しかない!!!
拝ませていただきありがとうございます!!!になる…。


手を取り合ったおふたりが通った後には絶対に花が咲きこぼれるし雪解けが起こるし砂漠ならオアシスができる…!と思うような、光にみちた愛のさざなみが客席を覆い尽くすような、もう勘弁して!(最高!)になるような、忘れられないデュエットダンスでした…。本当に大好き…

なんだろうなぁ、トップのおふたりが並び立って踊ることから生まれる美しさがあることは理解するんだけど、なんかそういう話に終わらないで、そこにある「感情のやりとり」まで含めての表現なんだな…と唸らされ、なんかもう、のけぞりました。
なんもいえねえ!になる。何度見ても「え…何……夢…?」って思う。
これから心がカラカラに干からびたと感じることがあったら、はいからさんのブルーレイでデュエダンを見たら絶対に元気になれる。そう本気で思いました!!!

花組が好き。柚香光さんが好き…!

千秋楽を明日に控えた14日ソワレを観劇しているときに唐突に気づいたのですが、もうこれは、物語を作っているひとたちをまるごと好きになっているな、と思いました。
はいからさんという作品のことを本当にひと目で好きになり、そして通ううち、いつの間にか、花組さんのことも大好きになっていました。
舞台上のどこを見ていても、好きだなぁという気持ちが溢れて…。大正モダンの賑やかな街並みも、伊集院家のお屋敷も、その空間を作り出している皆さんの、どこを見ても楽しくて。
観ているうちに、あの場面とあの場面にいる人がおんなじだ!とか、執事さんの中にやたら小顔でスタイルのいい人がいるな?とか、すみれ組実はかっこいいよな…とか、どんどん好きなポイントが増えていきました。


舞台を上演する集団のことは、座組、カンパニーとよく表現されますが、宝塚ではそれが「組」なわけですよね。
なんというか、一般的なカンパニーの概念とはまた一味違う、より運命共同体のような、結びつきの強さみたいなものを、見ていてとても強く感じました。
ひとつのものを心を合わせて作り上げる様子、本当に見ていて幸せになりました…。
見てきたものを思い浮かべると、思い出すだけで幸福感が胸にあふれて、じんわりと涙が出てくる。本当に、楽しかった。


そして、その花組で新トップスターをつとめられる柚香光さん…。
なにから書いたらいいのか、わからないです。。
自分でも驚くほどに、ただただ、大好きになってしまいました。なんか今、もうそれしか言えない。
いや、言葉にしたいことはいくらでも、たくさんあるはずなんだけど、全然書けなくなってしまって。。どうしちゃったんだ。
とくに千秋楽のご挨拶を聞いた後はお人柄が突如としてリアルに迫ってきて(※なんせ検索しないで生きているので、ほぼ現地観劇の情報のみでここまできている)、もはやいろんな好きが大洪水になり…ちょっと今は言葉にすることができずにいます。


1月30日に始まったという稽古…そこからの10ヶ月あまりの間に、いったいどれほどに辛いことがあっただろうと、困難に取り囲まれたことだろうかと、こちらからは想像することしかできないけれど。
舞台が好きなおたくとしては、この春に何度も何度も、身を引きちぎられるような思いばかりしてきたから、
千秋楽が千秋楽として無事に幕を開け、最後の挨拶の時間にたどり着けたそのことが、どれほど貴重で得難いものか、観客としてわかりすぎるほどわかりました。
お芝居を愛している人たちが、板の上に立って充実した表情を浮かべている、その様子だけでもう…。


2020年がもし、予定されていたとおり平穏に進む年だったのならば、わたしはきっとはいからさんを見る機会はなく、
それどころか、柚香さんがトップに就任されている間に花組の公演を見ることすら、なかったかもしれないです。
そう思うととても不思議な気持ちになって…

今年は失ったものが本当に本当に多くて、何度立ち上がっても叩きのめされるような出来事は繰り返し起き。
その一連の出来事に、意味を見出すことは、あまりしたくないようにも思うけれど…でも、そうやって明らかに疲弊していた心に、はいからさんという作品が、柚香光さんという存在が、新しい風を入れてくれました。
その風にのって届いたのは、愛とか希望とか、そういったもの。人が生きる上で自然と欲してしまうようなあたたかな概念、そのものの力でした。
現在進行系で血を流しそうな心を、本気で救っていただきました。今はとにかく、感謝の気持ちしかありません。


劇場に満ちていた、割れんばかりの拍手の音量。その1ピースになれたことが、本当に嬉しかったです。

派手にすっ転び勝手にドボン!と威勢よく大海原に飛び込んでしまった初心者ですが、
観客として受け入れてくださって、本当にありがとうございました!

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この数週間で、東京宝塚劇場を軸とした日比谷周辺地図が頭の中に生まれました