こたえなんていらないさ

ミュージカル『刀剣乱舞』を実家とする舞台オタクのブログです。推しとご贔屓がいます。

宝塚花組「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」を観た

本日2月9日、大阪・梅田芸術劇場にて無事に大千秋楽を迎えたNICE WORK IF YOU CAN GET IT。
東京公演を現地で2回、先週土曜のライブ配信の計3回観劇しました。
kageki.hankyu.co.jp
千秋楽が終わった後ではありますが、やはり記録を残しておきたいので、自分用メモとして感想を書きます。




◆ひっくり返ったおもちゃ箱。予想以上に楽しい世界が劇場に

100年の歴史を前にしては、もう永遠に初心者なのでは?って思うのですが、だとしてもまだまだ超のつく宝塚初心者のわたくし。
宝塚大劇場東京宝塚劇場以外の劇場で行われる公演は通称「別箱」って呼ばれるんだよと教わって「へ~!」と思うようなレベルなわけですが、そんなわたしにとって今回、初めての別箱作品の観劇となりました。
宝塚でブロードウェイミュージカルってどんな感じ…?あらすじを追う限り、とにかくドタバタコメディって雰囲気だけど、どんな作品なのかあんまりイメージがつかない!とにかく観に行ってみるしか!という入り方でしたが、ま~~~~~これが。
予想を何倍にも裏切るほどに、超たのしかったです!!!


「おもちゃ箱をひっくり返したような舞台にしたい」というのは演出の原田先生がおっしゃっていたコメントなんですが、本当に言い得て妙だわ!と思うくらい、劇場にてひっくり返りまくっていました。花組おもちゃ箱!
なんとも賑やかで華やかで、バカバカしくてどこまでも愛おしくて。思っていた以上に、心から大好き!最高!と思える作品が観られました!

お話の筋は公式サイトにあるとおり、こんな内容です。

舞台は禁酒法時代のニューヨーク、ロングアイランド。贅沢三昧、苦労知らずのプレイボーイであるジミーは、四度目の結婚を明日に控えて独身最後の夜を楽しんでいたところ、一見ボーイッシュな風体ながらも実にチャーミングな女性ビリーに出会う。ところが彼女の正体は酒の密輸を企てるギャングの一味。そうとも知らずビリーに惹かれてゆくジミー。そんな二人が巻き起こす愉快な大騒動の行方とは……。

「いや、四度目の結婚て~。苦労知らずのプレイボーイ…柚香さん、似合いそ~~!!!」というのはわかったんですが、そんなおぼっちゃまとギャングとにいったいどんなかかわりが!?などなど、具体的なイメージはつかない状態で観劇したんですが、本当に見事なまでに、花組の皆さんが「渾身の・息のぴったりとあった」ドタバタっぷりを披露してくださいました。


なによりコメディって、テンポや間が本当に命だと思うんですよね。
「今面白いことをやっていますよ!どう、笑えるでしょ?」っていうふうに、演出の意図をチラチラ透けさせるタイプの演出が、コメディの中でもわたしはあんまり得意じゃないんですけど、今回のナイスワークにはそういう要素が一切なくて。

登場人物たちは、ただただ本気&必死で目の前の出来事に向き合っていて、その一生懸命だけどおかしくてたまらない様子に、どうしたって笑ってしまう…という、力技ではない、とても丁寧で緻密に考え抜かれた上での良質なコメディ作品だったと感じました。
なんというか、ウェルメイドって言いたくなるような。
その場しのぎの口からでまかせの嘘が嘘を呼んで、次の意外な展開につながっていったり、とにかくテンポの早い掛け合いが多いので、ややもすると観客が話から振り落とされてしまう危険もあるように思うんですが、そんなことは全く起きず。
目まぐるしくも勢いを持ってグイグイと転がり続けるストーリーに、ただ気持ちよく身を委ねていればよく、本当にあっという間の3時間でした。

コメディだからこそ、お芝居の素地の力がとても試される部分があると思うのですが、とにかく舞台上にいる全員が愛しい!と思えるような、素晴らしいチーム感。
こんなものが観られるなんて!と、宝塚を観に来た以前に、「舞台」作品として本当に満足度の高い観劇体験になりました。

アイリーンの発作のようなダンスは言わずもがな、狙ってるのか?というタイミングで突入してくる憎めない署長さん、ランチパーティーの給仕のハチャメチャぶりからの公爵夫人の酔っぱらいの流れ…ものすごいテンポで笑いのネタがドカドカと放り込まれてくるのですが、それらがきちんとまとまってひとつの作品世界を作り上げられているのが、奇跡みたいに感じました。

あれだけ全員が全力で暴れているのに受け取る印象が発散してしまうことはなく、反対にぎゅっと物語の芯に収束していく感覚があるというか…それはすべて、チーム力の為せる技なんじゃないかなと。
本当に感動しましたし、良いものを観たな~!って幸福感で、胸がいっぱいになりました。

◆柚香光さん演じるジミーが大変すぎる件その1:ダメ男なのに(だから)魅力的

そして早速(?)ですが、柚香さんのジミーについての感想を…書こうと思うんだけれど、なんかもうね、、本当に、よくわからない!って気持ちになるほど…すごいお人だ。。
なにから書いたらいいのかよくわからないのですけど、とにかくやっぱり、お芝居の力が凄まじい方だなと思いました。心から。


お金に苦労したことがなく、女性からはモテにモテまくり、誰もが認める美男子で、おおよそ手に入らないものなんかないんじゃない?と思わされるジミー。
彼のプレイボーイっぷりは、女性に積極的にアプローチをしすぎてしまう…というより、「誘われると断れないんだよね、好きって言われると好きになっちゃうんだよな、困ったなぁ(ニコニコ)」みたいな雰囲気で、
つまりグイグイと周りを引っ張っていくような強引さやオーラがあるわけでもなく…ある意味では、物語の中で間違いなく「いちばん何もしてない人」です。ジミー。笑

離婚が正式に成立した(はず)の状態でウキウキと次の婚約者とハネムーンに出かけるくらいの行動力はありますが、それ以外なにかしたっけ?っていうくらい、自分から周囲に働きかけてどうこう、という描写が全然ないんですよね。
むしろビリーたちの酒を隠す企てに巻き込まれ、ジェニーたちショーガールの熱心な遊びのお誘いに巻き込まれ、アイリーンの熱烈な求愛に巻き込まれ…と、仕掛ける要素ゼロ、受ける場面ばかりのように見えます。
こんなに「自分から動いて話を引っ張る」要素がない主人公ってある…?と思うくらいなのに。それなのに!!!
どうしてあんなにも主人公で、真ん中にいるのが当然な様子になってしまえるの!?というのが、ものすごくびっくりしたポイントでした。

いやそら、主役(トップスター)がいて、その主役のために選ばれる作品というのが宝塚だと学びましたので、それは当たり前なのだとは思うんですけど、にしたって~。という。
何もしない主人公が主人公然としていられるのって、わりかしすごいことをやっているんじゃないのか!?と、思わずにはいられませんでした。
そしてそれが成り立つのは、柚香さんの持つ紛れもない「スター性」、そして「役を生きる力」の凄まじい強さによるものだな、と実感しました。


ジミーって、本当にどうしようもないんですよ。まじでどうしようもない!笑
婚約者であるアイリーンが、ふたりの新婚初夜のためにバスルームでウキウキと支度をしている間に訪ねてきたジミー馴染みのショーガールたち。彼女たちからお色気たっぷりに「ねぇ、一緒に海で遊ばない?」と誘惑されるジミー。
「いや、流石にそういうわけには…」と逡巡すると見せかけて…?の一曲が、最高にひどくて大好きでした。
「だけど彼女は♪エンドレス長風呂♪その間に~♪その間に~♪」…じゃないのよ!!!笑
まじでこの歌詞がひどくて笑ってしまうんですけど、そんなふうにどうしようもないダメ男、なのになんだかみんなに愛されるの、悔しいけどわかっちゃうな~…という愛嬌がすごい。勝てない。

ジミーがどういう人物なのか、その行動の背景にはどんな心境があるのか。
そういったことをひとつひとつ丁寧に積み重ねた結果生まれる、あの独特の軽みであり、色気であり、人たらしの魅力なんだろうなと…。
もう、ほんとうにしょうがないんだから、と言いながらも、ついうっかり笑顔にさせられて、気づけば好きになってしまう。
人間、欠点があるほうが魅力的に…といって片付けるにはジミーはダメっぷりが極まりすぎているんですけど笑、やっぱりあれは好きになってしまわざるを得ない。ビリーはさぞかしくやしかっただろう…!と思わずにはいられませんでした。笑

◆柚香光さん演じるジミーが大変すぎる件その2:「圧倒的・美」と観てるこっちの目が取れそうなダンス

そしてそのダメな行動の数々がもはや気にならなくなってしまうほどの、言うまでもない圧倒的なビジュアルの良さ。
いや、やっぱ柚香さんって美しすぎん…?
最初のスピークイージーの場面で、「四度目だ!」ってセリフとともにパッとスポットライトで射抜かれた瞬間から、ウ、ウワ~~~~!!?になりました。美だよ。美がすごいよ。えげつないよ。どうしてなんだよ。
独身最後の夜を仲間たちと楽しむパーティーのシーン、シンプルな黒いスーツ姿での登場なんですが、なんかも~~~。。美。お酒のボトルに頬を寄せようが、ラッパ飲みをしてぐでんぐでんに酔っ払おうが、どう転んでも美でしかない。
その後もおぼっちゃまよろしく、劇中では仕立ての良さそうな色々なお衣装を着こなしますが、ま~~~本当に美です。もう処置なしすぎて匙投げた。
「背筋に何かはいってますか?」みたいな伊集院少尉のあのまっすぐすぎるくらいまっすぐな背中のシルエットとはまた違って、ゆるりと力は抜けているけど、でも何をしていても品のある、「上流階級」の人間であることがわかる自然な立ち姿の美しさ…見事でした。。


そして、ブロードウェイミュージカルらしく!ふんだんにダンスナンバーがあるんですが!!!
もう周知の事実を超えて宇宙の真理なので、わたしなんぞがとくに書かなくても…と思うのですけど、柚香さんのダンス、なんかもうすごすぎて何が起きてるのか、よくわからないです…。

「振り付けを踊っている」感じがしないというか…その場に流れている音楽にただ自然に身を任せているだけ、みたいな、いや最早体から音楽が聞こえてきている気がするみたいな。
音ハメとかいうレベルじゃないんだよなぁ。。になる。
うまく表現できないのですけど、圧倒的にダンスがうまい人の場合、踊りの力で音の方を掌握してしまう強さだったり、表現としてそういうアプローチもあり得るのかなって思うんですが、柚香さんはその真逆な気がする。
ただ素敵な音が流れるから、それに乗って一緒に生きているだけだよ、っていうふうに見える。軽やかで、まるで重力なんてないみたい。


ナイスワークの素晴らしいダンスの数々を観ていて、柚香さんに踊りこなせないリズムなんて、この世にはないんだろうなって思いました。
そしてそういう風にこちらが感じて受け取るまでの間に、ものすごい努力をなされているのに違いなくて…でもそんな気配は微塵も気取らせない。
生命力の塊みたいにエネルギッシュなのに、限界までソフィスティケイテッド。
相反する何かを同時に抱えてしまえるようななにか。真っ暗だと思って覗き込んだ深淵が、宇宙の果ての星空みたいにまばゆく煌めいていた…みたいな、つまり、見つめていると巨大すぎる感情が湧くなにかです。柚香さんのダンス。
だって、タップダンスに関しては、最早タップなんて踏んでないみたいなんですもの。力の抜けた小粋なお洒落さ。
「ちょっと楽しい気分になったからリズムを踏んでみたんだ♪」くらいな雰囲気で、足さばきがとんでもないことになっていて、上半身と下半身で起きてることが違いすぎない!?って思いました…。恐ろしいです。。

◆ジミーとビリー、運命の恋。ハッピーなのに止まらない涙

今回のドタバタのコメディ核になるのは、ジミーとビリー、二人の運命の恋のお話です。
離婚しそびれている、かつ現在進行系で新しいフィアンセがいるにも関わらず、「これは教育目的だよ」とかいってキスをしてくる男…本当にこう書くと、ジミー、お前まじで最悪なのでは?笑と思うんですけど、
ギャングの仕切り屋であるはずのビリーは、そんなどうしようもないプレイボーイのジミーに、否応なしに惹かれてしまい、思いもよらない恋に戸惑いを覚えます。
そんなつもりはなかったのに突然道ならぬ恋に放り出されてしまったビリーを演じる華さんに、もう、めちゃくちゃ泣かされまくりました。。


どうしてこんな奴好きになっちゃったの?って、自分に呆れたりがっかりしていそうで、でもやっぱり好き…という感情を持て余すビリーと、
この状況、何をどうしたらいいのかはよくわからないけど…とにかく、今僕は君が好きなんだ!という気持ちだけにまっすぐなジミー。
柚香さんと華さんの組み合わせ、本当にそこに生きた感情の交流があって、こちらの気持ちが驚くほどに引っ張られまくります。
表情、仕草、声。全身で「今、この役を生きている」ということが伝わってくるお二人なので…コメディなのにどうしてこんなに泣いちゃうんだろう!?と思うくらい、あらゆるシーンで泣きました。

なにかものすごい悲恋の物語であるとか、生き別れになるとかそういう話では全然なくて、あくまでもコメディの中で描かれる、プレイボーイとギャングガールの思いもかけない出会いからの恋。
感情として描かれるにはごくありふれたものであるかもしれない、そのシンプルな「恋心」だけで、こんなにも見る側の気持ちが動いてしまうものなの…?とあっけにとられてしまうほどでした。

「僕は…君が好きだ!」って、恋の喜びを溢れさせるジミーの声や、ギャングである自分の素性と行動をやけくそのように明かしたあとの「…ごめん。」のビリーの声。
そのひとつひとつに、本当に生きているとしか言えない、リアルな感情が息づいていて…。
なんというか、わからないんですが、宝塚においてここまで型にはまらないお芝居も珍しいのでは?みたいな感覚にさせられます。わからないけど…。
柚香さんも華さんも、どこかいびつなまでにお芝居の力が強いところがあるように思えてならず…このコンビにしか絶対に作れない空気だったと思う。
お芝居でぶつかり合うその力が、イーブンなような気がします。そして華さん、あんなおやゆび姫みたいなビジュアルなのに、中身に鋼のようにつよい芯が見える気がします。好きだ…!


一幕の後半、そんな二人によって踊られる「'S Wonderful」。
タップダンスと歌からなる長めのナンバーで、観たときに「この作品、デュエダンが2つあるじゃん!!!」って思いました。
もう…あれは。なんなんだろう。本当にすごい。観たものが奇跡のような素晴らしさで、こちらの語彙がしんでしまう…
「今、君に恋をしている」って、お互いに確かめ合うような。極彩色の感情が、ダンスを通じて舞台の上で交流し合っているような。
観てて、とにかく勝手に涙が出ました。
なにが正しいかなんてわからない、この目の前の相手を好きになるのは、間違った選択なのかもしれない。
だけど変えられない事実は、今君に恋をしているってこと。
ただそれだけを、今この瞬間を抱きしめて。心の赴くままに、喜びに身を任せて。
刹那的なような、それでいて永遠を感じるような。
なんであんなふうに、心を通わせることができるんだろう…。それを当たり前のように表現してしまえるのだろう。
どの瞬間も二人から目を離すことができなくて、本当にあっという間に感じる、大好きすぎるナンバーでした。
技術的に難しいことも色々やっている気がするのだけど、それを忘れてしまうほど、空間をまるごとひとつの幸せな世界に作り上げる、最高のナンバーになっていたと思います。


もうひとつ忘れられないのが、ラストシーンでふたりがまったく同じ音程でユニゾンをする場面です。
「ふたりでいれば」という歌詞で、「ば」の音がロングトーンで伸ばされるのですが…そこが、あまりにもぴったりと揃っているんです。本当に、一分の隙もないくらいに。
最初に聞いた時、感動で鳥肌が立ちました。
ここまで声が揃うのは、おふたりの心が揃っているからに他ならないなと実感して…。「ふたりでいれば」って言葉を、こんなに体現した歌唱があるかよ~!?と思って泣いた。
心をていねいに重ねるお芝居、緻密なのに、その場その場の真剣勝負で体当たりでもあるというか…本当にこのお二人には勝てん。とつくづく思いました。完敗した。




トップコンビの恋心のお芝居がヘビー級すぎて、そこに触れたら力尽きてしまった…笑
なんか全然、うまくまとめられなかったんですけど…(なんせ1月に観てから寝かしすぎまして)
個人的にはですが、ナイスワークを見て、柚香さん、これからますますとんでもないトップスターになられるんだろうな~…って思いました。

わからないんですが、おそらく柚香さんを「ビジュアルおばけな超絶ダンスの人」として認識している人はきっと多いのだと思っていて、だけどそう思って観に行くとお芝居の力にぶん殴られてびっくりすることになるような気がしていて…この先トップとして、もっとすごいことになるんだろうなぁ…みたいなぼんやりとした感慨を得ました。初心者ながら。
拝見するたびにそのすごさに対してこちらの理解が追いつかないので、「柚香さんって何…?」になり、最終的にはもう「あの御方はジャンル:柚香光だ!」として理解しつつあるわたしです。


まじで全然書けてなさすぎるんですが、本編のジミー&ビリー以外のカップルも本当に愛らしくて最高だったのっ!!!公爵夫人大好きー!!!
あと言わずもがなフィナーレの黒燕尾のタップもデュエダンもさいこ~~に素晴らしかったです~~~!!!あきらさんかっこよすぎた!
とにかくトータルで「花組が好きだ!」の気持ちが加速しまくる、幸福な観劇体験でした。


そして何より、初日が初日のまま、千秋楽が千秋楽のままでいられたことに、心の底から安堵しました。
どのような状況の中でも、極上のエンターテインメントを届けてくださる人々に、ありったけの愛と感謝を贈りたいです。
ありがとうナイスワーク!ありがとう花組