こたえなんていらないさ

ミュージカル『刀剣乱舞』を実家とする舞台オタクのブログです。推しとご贔屓がいます。

明日カノ最新シリーズ「洗脳」を最終話まで読んだので、感想をまとめる

ちょっと毛色の違う記事をとつぜんあげます!

皆さんは「明日カノ」読んでますか?
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サイコミで毎週金曜0時に更新される「明日、私は誰かのカノジョ」・通称明日カノを、嬉々として更新日に先読みしている人間です。勿論コミックスは全巻買ってます!
最新シリーズ「洗脳」が1月28日更新分で最終話を迎えたのですが、コメント欄に書き込まれる内容が本当に様々で、読んでいるうちに思わず自分の考えをまとめたくなったので書きます。

※展開について当然のようにめちゃくちゃネタバレをしているので、これから読もうかな~と思ってる方はご注意を!!!




「推しってなんだよマジウケる」について

とりあえずわかりやすいほどに賛否両論!という感じに盛り上がっていたこのワンフレーズについて。
私個人は(日常生活でゴリゴリに推しいるけども)とくに否!とは感じませんでした。その理由は以下です。

最終話、講義が始まる直前に話しかけてきた同級生の女の子に、留奈が「…好きなんだね アイドル?」と話しかける場面があるのですが、
その同級生の持ち物から、彼女にもいわゆる「推し」がいることに気づいた瞬間の留奈は、明らかにぎょっとして青ざめています。
この反応を見て思ったのですが、隼斗の歌い手活動における炎上・その飛び火を経て、自身も開示請求の係争中である留奈にとっては、
推しがいる人たち=ある日突然牙を剥いて襲いかかってくる集団として刷り込まれてしまっているのではないかなと感じました。


シリーズ後半から、留奈がオタクを下に見すぎてる描写がきつい!といったコメントがめちゃくちゃ多かったように思うのですが、
別に炎上前も、彼女はオタクを下に見ているわけでもマウントをとっているわけでもなかったと個人的には感じました。
シンプルにお金の使い方に対する価値観が徹底的に違うだけというか。
なおかつ、炎上後に「ファン・オタク」を十把一絡げにまとめて罵っているような描写も、それこそ「推しってなんだよマジウケる」以前には、とくに見られなかったように思います。

じゃあどうして、留奈は最終的にそんなパンチの効きすぎる一言を繰り出すようになってしまったのか。
留奈の視点から考えると、いわゆるオタク側の感情を類推したり背景にあるものを実際に理解するチャンスって、実は一切なかったんじゃないでしょうか。
隼斗からファンがどういうふうに応援してくれているのかの説明を聞くことはあったし、配信の様子もたまになんとなく見守っていたけど、
別に留奈はバシモトのファンとしてその様子を逐一追っているわけではない。
隼斗が悩んでる風だったオリジナル曲の作曲もできたし、うんうん仕事がんばってるんだろうな~、よかったね!くらいに思っていたら、
ある日突然、そんな意図の一切ない行為を「匂わせだ」と突然叩かれ吊るし上げられ、SNS掲示板で一斉に有る事無い事を書き立てられたわけで、
そこには怒りと恐怖、嫌悪感しか残らなくても当然なんじゃないかなと。

留奈が失ったのは恋愛だけじゃないかもしれない

留奈は炎上の一件で、薄々感じていた隼斗と自分との(おそらくは育ちのバックボーンの)違いに打ちのめされ、その辛さ故にすべてを切り捨てて終わりにしたようにも見えました。

隼斗と自分とは違う、と留奈がひとりで考えるモノローグは複数登場していて、
出会った直後の116話での飲みの場でも「育ちがいいって言うか…人の悪意に触れてこなかったというか…そういう素直な性格っていいよね」と酔っぱらいながら心の声が漏れた感じでつぶやいています。
作曲のきっかけをつくってくれた留奈に、心からの好意でお祝いのワインボトルをサプライズで用意していた隼斗に、
留奈は「世間にはこういう人もいるんだな」とでもいった様に、純粋に胸を打たれていたように見えました。

おそらく、留奈にとって隼斗は「住む世界の違う、光の中に生きる人」でした。
違う背景を持つ者同士だからこそ惹かれあい、時折価値観の違いは感じながらも、恋愛関係としてはあくまでも年相応の明るいものを育んでいたはずの二人は、
見ず知らずの第三者から向けられた悪意のかたまりによって、それを突然解消せざるを得なくなったわけです。
留奈にとっては、もしかしたら今まで知らなかった世界の人と幸せにやっていける可能性もゼロじゃないかも?と思っていた生活に、謎の横槍が入ったような形じゃないのかな。
恋愛関係よりも大きなもの、新しい世界への入り口を徹底的に閉ざされたような感覚になっていてもおかしくないと思う。*1
この経験を以てしてなお、留奈が「推し活」に無条件に肯定的な感情を持てていたら、そっちのほうが不自然じゃないかな、と私は思いました。

隼斗・バシモトはもうちょっと早く覚醒してほしかった

仮にですが、留奈が付き合っている間に隼斗から「こういうファンの人からの言葉がすごく嬉しくて…」みたいな具体的な話を聞いていたりしたら、
留奈の中での「推し活」の印象もまた少しは違ったものになっていたかも?とは思うのですが、おそらくですがその機会もなかったんじゃなかろうか。
というのも、たぶん留奈と付き合っていた時点の隼斗は、自分を叩いてくるのではなく、純粋に楽しく応援しているファンの存在に対しては、あまり深く思いが及んでいなかったように見えます。
留奈と付き合うきっかけになった最初の炎上が足かせとなって、本質的に自分がファンに何を届けていきたいのか、なぜ配信者をやっているのかがわからなくなり、迷走しているように見えました。


最終話の1話前で、グループとしての初ライブを終えた隼斗のもとに届いた1通のDM。
「まつもと」と名乗るファンの長文メッセージは、どこまでも「バシくん」を思いやるもので、
炎上に関する謝罪配信を受けてなお「バシくんの隣に誰かがいてバシくんのことを支えてくれていたら嬉しいな…と思います」と結ばれていました。*2

それを見た隼斗は「っ……」と顔を歪ませ、「ほんと……何やってんだろ俺……」とひとりこぼします。
あの瞬間に隼斗は初めて、人前に立ってパフォーマンスをする自分の活動の意義・それを受け取る先にいるひとりひとりのファンの存在に、
正面から向き合えるようになったんじゃないかなと感じました。

このメッセージを見る直前、同じグループのメンバー(みの)から「活動者としての自覚持って欲しいだけ」と隼斗はお説教をされているのですが、
それも踏まえて、自分がやってきたことを振り返るきっかけが、あのまつもとからのメッセージだったんじゃないかなと。
活動の過程で凹んだメンタルを立て直してくれた留奈と出会い、しかし最終的にその関係が駄目になってしまったことまで含めて「何やってんだろ俺」だったんじゃないかなぁと。

だって、みのが言う通り、隼斗に「配信者・バシモト」としての自覚がもう少し確固としてあったのなら、
今の自分にどういうファンがいるのかを冷静に把握し、その上で避けるべき行動がなんであるのかも判断できていたのでしょう。
もしそうであれば、炎上の発端となった留奈のお店のアカウント「伊織」からのバシモトへのフォローも「そういうのはファンが怪しんで危ないから即止めて!」って言えただろうし、
写真をアップするときは念の為声かけてね、みたいなコミュニケーションも予め取れていた=あのタイミングでの破局は避けられたんじゃないかなと感じました。*3


留奈は活動者ではないし、推しがいた経験もない。
そんな中で一方的に圧倒的な悪意だけをぶつけられたら、そりゃあ留奈は「推しってなんだよマジウケる」にもなるよね、と思ったのでした。
その間を取り持てるのはたぶん隼斗の役割だったけど、それはとくに機能しなかった。なぜなら隼斗自身に自分の活動についての迷いがたくさんあったから、ではないかなと。。
彼自身、自分の行動について中途半端な自覚もあるゆえに、正面切って留奈を引き留めることもできなかったんじゃないかな。
メンバーも留奈との付き合いそのものに対して苦言を呈する人はいなかったですからね……隼斗自身がなんとかしたければなんとかできたかもしれない。
一方で彼女を傷つけたことも、炎上でグループ活動に迷惑がかかったのもどちらも事実。
「何やってんだろ俺」のあとの隼斗はきっと覚醒したんだと思うので、せめて色々が無駄になってないっぽいのは救いだったかも(最終話、登録者数増えて新曲も作れているっぽかったので)。
そもそも隼斗は留奈と付き合って気持ちも安定してうまく行きだした部分があったから、それに比べて留奈は……と思うと、悲しいんだよなぁ。。

プロローグ/エピローグについて

第一話の冒頭に、けっこうキツめの言葉で展開されるモノローグ。

服も容姿も 愛情だって 自分が幸せになるための手段であって 目的じゃないでしょ
その価値観”洗脳”されてるよ

連載期間ストーリーを読み進めながら、私にはどうしても「このモノローグ、主人公・留奈の言葉としては受け取りにくいな……?」という違和感がずっとありました。

留奈はたしかにいわゆるオタクではなく、好きなアイドル・歌い手・俳優などに、わかりやすく言えば「入れ込んで」お金を使う消費行動をとった経験のない子です。
でもだからといって、作中での留奈はそういったいわゆるオタクたちの経験を「バカみたい」といった視点では、決して捉えていなかったように感じていたんですよね。
単に「知らないから理解できない」だけなのであって、それを特に悪し様に捉えている事実はなかったように思います。
隼斗の歌い手・バシモトとしての配信コメントを見守る時に、「なんだかファンのみんなすごく熱いね…」とびっくりして素朴につぶやく場面もありましたが、
あれも別に「顔も見せてないで声だけなのにこんなに沸いてんのウケるww」みたいな体では全くなくて、え、こんな世界があるの!?何!?という純粋な驚きだけだったと感じました。


でも今回最終話の展開と、ラスト1ページに展開されたモノローグを読んで、この違和感がようやく解消されました。
シリーズ第一話のモノローグはもしかして、
最終話、もしくはその少し先の未来にいる留奈の声だったのかな?と考えると、ものすごくしっくりくる気がしたのです。
物語の最終地点を冒頭に持ってきた構成だったのかな、と、最終話を読み終えて感じました。

ラストで留奈は、消費行動についてとりあげた、おそらくはマーケティング関係の講義を受講しています。
彼女の手元には消費の心理や人心掌握術について調べている様子が伺える本もありました。
留奈はこのストーリー「洗脳」で得た一連の経験から、人が消費行動に走る心理をどこまでもシビアに掘り下げていくことに決め、
その結果として、消費行動全般を全力で皮肉った言葉として放っているのが、第一話のモノローグだったのかな、と考えると腑に落ちました。
他の読み方があるかな……と考えたけど、私にはこれしか思いつかなかった!

主人公・留奈はどこに向かうのか

20歳そこそこの女子大生ながら、<お金>を生きる上での第一義に置き、すべてを割り切ったような価値観のもとに夜の仕事で大金を稼ぐ留奈。
先程すこし触れたとおり、最終話の留奈はなんだか不安になるタイトルの本ばかり複数、図書館で借りていることがわかります。
そのラインナップがこちら。

・大学で起業した僕の生き方(←わかる)
・孤独な人程、成功する(←ちょっと悲しいけど、わかる)
・教祖ビジネス(←うん???)
・人を操る対話術(←やめて!???!)

隼斗のファンを巡るあれこれに加えて、信頼していた元バンギャの夜のお仕事の先輩・菜々美さんが「レター先生」というなんだかよくわからない存在に心酔していることを知ってしまったり*4
留奈はとにかく「自分以外の何かに全力で仮託する・大金を使う」心理状態について「いい加減にしてくれよ!なんなんだよさっぱりわからねえ!!!」といよいよ叫びたい気持ちになったのかもしれません。

自分も仕事を通じてお客に完璧な幻想を作り上げて売っている自覚は明確にあった様子の留奈だから、
それをスキル・ノウハウとして掘り下げていったら何が生まれるんだろう?という方向に興味の舵を切っている様子が伺えます。
さらにはそこに、自分の生活を多少なりとも破壊した他者の感情を解き明かしたい意図もあるんだろうなと思います。

隼斗との関係を失う原因になったファン側の暴走を見た留奈は、
自分はそういう心理状態や消費行動を掌握する側にうまいこと回って、最終的に存分にお金を稼ぎつつ、もしかしたらある種の復讐を遂げてやる、くらいの青写真も描いているのかもしれないなと。
ラストにあるとおり、もしも「ホントの神は推しが好きな自分」なら、その究極体として誰かから憧れられる「神」を兼ねた自分を、留奈は目標に置いているのかな、と。*5


留奈が、なにか幼少期・家庭環境まわりに複雑な事情を抱えていること自体は、端々の描写から明らかでした。
まだごく若い学生の身で、奨学金を返しても余るほどの大金を夜職で稼ぎ、それでもお金が目減りしていくことの不安に苛まれる場面もありました。
一方で、彼女がどうしてそこまでお金に執着せざるを得なかったのかその理由が具体的に描かれたわけではなかったため、「主人公に共感できない」という感想も集まりやすかったように見えましたが、
全てを一から十までつまびらかに書けば良いというもんではないと思うし、個人的には造形としては十分つたわるものはあったように思います。

今回のヒロインとしての留奈は、このストーリーでどこまでも「孤独を深めた」存在であるように私には見えました。
前シリーズまでのヒロインたちが、今まではちょっと違う外界に一歩を踏み出す雰囲気だったのに対して(前章ヒロイン・萌の変化があまりにも劇的で鮮やかだったのもある)、留奈の変化はそれとは対比的で、より己の内側に潜っていったような印象があります。
むしろ自分とは明らかに違う存在・隼斗との決定的な断絶を経て、やっぱり自分は自分の世界でひとりで生きていくしか無いんだ、というあまり良くない方向への学習を積んでしまったように思えるのがつらい。
雪あたりともっと踏み込んだ会話ができたなら、ふたりは良い理解者どうしとしての関係を育めるんじゃないかなぁと願っていたりするのですが。。
コメントで留奈が復学していることが何よりのハッピーエンドだと書いている人がいたのには、たしかにそうだよな、、と思った。
個人的にはゆあと同様で、この先に何らかの形で幸を掴んでほしすぎるヒロインでした。留奈に幸あれ。。

最後におまけ・心音(ぽぽろ)について

ぽぽろちゃんは……あかんタイプの闇オタクへの超進化、今すぐやめて~~!!!!!笑
最終話、4ヶ月経ってあっという間になんだか垢抜けて、わかる10代の女の子ってほんと急にきれいになるよね、ってしみじみ思ったら「アンチじゃありません」と名乗るド直球そのもののアンチ垢稼働させてんの、それはさすがに草!!!
そっちに行ったらダメだよ!!!戻ってきな!!!!!……ってなった。
「いってきまぁす」の光そのものの笑顔の下に、ちょ、おま、なにとんでもない闇抱えてんねん!なる。。涙
頼むから、誰か彼女を止めてあげて!!!
こういう感じでオタ活を深めていってしまった場合、どこかで方針転換できるチャンスってあるんだろうか。。。私にはちょっと思いつかない。
まつもとさんのような光のオタクに仮に出会っても、今のぽぽろの状態だと内心で当たり前に見下すんだろうしなぁ~~。。おい~~ぽぽろ~~~!!!(若者が闇落ちするのつらい)



2月頭に次章予告ののち、そこから1ヶ月は休載期間になるとのこと。
毎度ものすごいボリュームの取材量なことがわかりますし、をの先生まずはゆっくり休まれてください!
また次章も楽しみにしています!

*1:それ以前にお金に異常に執着するあまり、留奈は隼斗との関係継続に不安がある様子もあったので、勿論すべてが炎上のせいではなかったですが、別離がいつか来るにせよもうちょっと違う形にはなったはず……

*2:コメントでは疑う声が多かったけど、流石にまつもとさんとつながったりはしてないと思います。。せめてそこはそうであれ、バシよ!?笑

*3:「人前に出る仕事なんだからそういう行為は怪しまれて当然、見つかったらファンは燃やして良し!」と言っているのでは全くなくて、自分の提供している商品価値と消費者が何を望むか?を俯瞰した視点で捉える力がないと、ひどく損をしてしまうお仕事なんだろうな、という意味です。

*4:あのレター先生のくだり。留奈は唯一心を許して相談できる人がいた!と思った矢先、その相手もまた自分を他所に預けた存在だったことに恐ろしさを感じたのではないでしょうか。飲みから帰ってきた翌日の留奈が鏡を見て「酷い顔」と言っているのは、菜々美さんからレター先生に勧誘されそうになったことへのショックを表しているのかなと思いました。

*5:コミックス9巻にも入ってる116話で留奈が落ち込む隼斗に対して「神様じゃあるまいし!一人の人間なんだから!」って明るく言ってるセリフがあって(アプリ内だとサムネにもなってる)、最終話まで読んだあとにここを読むとすげ~~~つらい気持ちになった、二人にはお互いのためにうまくいってほしかったなぁ。。足りない部分を補いあう未来もあっただろうに。