こたえなんていらないさ

ミュージカル『刀剣乱舞』を実家とする舞台オタクのブログです。推しとご贔屓がいます。

宝塚花組「TOP HAT」を観た感想(柚香光さんのタップ・トップコンビのデュエダンについて)


大遅刻なのですが、去る4月6日に千秋楽を迎えた花組「TOP HAT」の感想を書きます!
わたしが観劇したのは3月なので、本当に大遅刻もいいところ。

kageki.hankyu.co.jp
1935年公開のアメリカ映画を原作としたストーリーであり、筋立てはごくシンプル。
あらすじに書いてあるとおり「勘違いから始まるすれ違い・ドタバタラブコメディ」なお話です。
ヒロインが自分の恋した相手を友人の夫と勘違いする、というあらすじから「つまり、最後には誤解がとけてハッピーエンドになるんだろう!」と想像がつくため、
「良い意味で気楽に楽しく観られそう♪まぁ泣くこともないだろう!」と思って臨みました。

……臨んだんですが!
観劇当日のわたしは予想外に涙を流してしまいました。
その理由は、柚香さんのダンスが、あまりにも素晴らしすぎたから……!

以下、れいちゃんのタップとれいまどトップコンビのデュエダンに潔く絞っての感想を書きます!
(別記事でいろんな生徒さんに触れられたら良いなと思っております!いつもそこまでたどり着けないでいる~たまには頑張りたいよぉ。。)

柚香光さんの踊っている姿は、やはり「奇跡」だと思っていいでしょうか?

いつも同じことを言ってしまうけど、でもどうしたってそう思う。
れいちゃんのダンスは、奇跡であり神の御業!
もうそれをこの目で観られたことに感動するばかり、になりました。今回も。

原作映画は未視聴であり、フレッド・アステアの名前こそ知っていれど、うっすらとした知識しかない私。
アステアはれいちゃんが敬愛してやまない”憧れの存在”であるという情報と、
後は幼い頃にレーザーディスクで観た「ザッツ・エンターテインメント」の記憶以外は手がかりが何もない状態で観劇したのですが*1
なんかもう本当に、この演目をれいちゃんに当ててくれたことがありがたすぎて。
劇団が、トップスター・柚香光さん本人の夢を叶えてくれたのでは?と思えて、感謝の気持ちしか湧いてきませんでした。


シルクハット(トップハット)にステッキ、この場合は黒燕尾と呼ぶよりもタキシードと呼んだ方がふさわしいのかな?と感じる、フォーマルど真ん中の装いで、
チャーミングに軽やかに、茶目っ気とほのかどころではなく香る色気を湛えて踊る、れいちゃんのジェリー・トラバース。

柚香光さんがタップダンスを見事に踊っているのではなく、あくまでもブロードウェイのスターであるジェリー・トラバースが踊るタップダンスなんですよね。
ダンスの得意なトップスターがスターダンサーの役をやる。こんな説得力を生める組み合わせがあるだろうか!?納得感と素晴らしさに拍手喝采の気持ちでした。


一番感動したのは、一幕の序盤、ロンドンのホテルについたジェリーがホレスの部屋で踊る「NO STRINGS」でした。
ジャケットを脱ぎ、白いシャツに黒いタキシードパンツのシンプルな装いで、愉しげに軽やかに、縦横無尽にステップを踏むジェリー。
まさに”踊らずにはいられない”といった風情、そんなジェリーの周りの空気までが、リズミカルに鮮やかに動きだす。

初見時、このシーンを観ていたら、いつの間にか勝手に涙がこぼれていました。
れいちゃんが全身から醸し出すジェリーの自由闊達な空気感、ステップのひとつひとつ。
そこには過剰も不足も一切なく、これが正解なのだ、まさしくこうあるべきなのだと思わせられるような、パーフェクトと感じずにおれない完璧な美のかたちがそこにありました。
何よりも、心から楽しそうに空気まで動かして見せるれいちゃんの幸せそうな様子に、深く感動しました。


これは私の勝手な感想ですが、れいちゃんがアステアのタップの真髄をつかもうとしたその結晶が一番溢れ出ていたのが、あの場面ではなかったかなと感じたのです。
色遣いが抑制されたモノトーンの衣装と、情景がホテルの一室というあくまでも日常感のある組み合わせであることで、
余計にその存在の特別感、いうなればスター性が浮き上がってくるようでした。
稽古期間に収録されたナウオンでは「No Stringsどころかがんじがらめな感じ」的なことも仰っていたのに、全くそんな素振りもなく。
下の階で眠るデイルに対して「眠りの精になってあげるのさ」と、床の上に撒いた灰の上ですべらかに踊る後半も、胸をぎゅうと掴まれるような美しさでした。
その足元で、タップ音は曖昧にならずどこまでもクリアに鳴り響いて。
静止する瞬間の全身には露ほどのブレもなく、躍動感と静寂とのぞくぞくするほどの緩急。やっぱりあんなの柚香光さんにしか作り出せない何かだと思います。


ジェリーのソロのシーンでもうひとつ忘れられないのが、二幕のほんの僅かな時間にダンスをするくだり。
まだジェリーのことをホレスだと勘違い真っ最中であるデイルが、彼を懲らしめようと自分の境遇について嘘をつきながらジェリーに迫るも(WILD ABOUT YOU)、まんまと返り討ちにあってしまう場面の後にやってくるひとときです。
デイルが自分を好いてくれているのだと有頂天になって、ホレスの忠告を適当に受け流すジェリー。
ひとりになった彼は場面転換のため降りた幕前で、センターから下手側に移動しながら、ごく軽くといった具合に踊ります。

そのシーンを観ている時、どうしてもジェリーが「月明かりの中で踊っている」ようにしか思えなくて、なんともいえずにハッとさせられたのです。
作中でこのシーンについて時間帯についての詳しい描写はなく、物語の進捗を鑑みるに、おそらく月明かりというにはまだ早い時間帯の出来事のようにも思うのですが、
ジェリーを照らし出すスポットライトと、そのダンスが生み出す情感が、どうしても月明かりを思わせる何かで……
それだけ、れいちゃんのダンスが叙情性豊かということだと理解しているのですが、
たぶん1分にも満たないそのごく短い時間が、私の中では絶対に忘れることの出来ない場面として刻み込まれました。
だって、あまりにも美しくて。


装飾が少なければ少ないほど、れいちゃんの本領は逆説的に発揮されていくように思えてなりません。
れいちゃんのダンスは単に抜群にうまいだけじゃなく、そこに常に心が深くしっかりとこもっている。それが何よりも魅力的です。

お芝居によるジェリー本人の心の表現と、れいちゃん自身が持つダンスの技量が高いレベルで融合していたジェリーの姿。これが観られたことにやっぱり感謝しか湧いてこなくなる……!


つぎはトップコンビのおふたりのダンスについて!

息ぴったりすぎるれいまどのデュエダン①ISN'T THIS A LOVELY DAY

ふたりのデュエットダンス、フィナーレを除けば場面としてはふたつかなと思うんですが、そのどちらもとんでもなかった。
ばちばちのタップダンスで魅せる乗馬クラブ(ISN'T THIS A LOVELY DAY)のシーンと、二幕でベニスに移動したあとにやってくるダンスホールでのナンバー「CHEEK TO CHEEK」。

前者はとにかく、躍動感のかたまりであり、ジェリーの罪な男っぷりが際立つシーンでした。
ジェリーが歌っている間、隣で興味のない様子だったはずのデイルがどんどんと絆されていってしまい、ふいっと顔をそむけながらも徐々に口元が解け出すのが、まぁいじらしくて可愛くて!
「ちょっとデイル~!そんな簡単に!ペースを乱されたら駄目……いやでも仕方ないか……これは相手が悪い!」みたいな気持ちになります。
あれはもう、仕方ないよね。デイルさん、ジェリーと出会ってしまったのが運のツキだったのだ!笑


ダンスパートになってからは、二人ともぎゅっとその時間に集中している感じ。今この時を、一緒に楽しもう!というような交歓がそこにある。
まだどこか探り合いをしているようでもありながら、ふたりで今この瞬間を分かち合えることへの歓びが、確実にそこには表現されていました。
パッ!と勢いよく向き合っては、静止し合う瞬間の表情が、二人ともすごく楽しそうで。
仕掛けあっているというか、「オッ、じゃあ次はどう来る?」をお互いに好きに投げかけている感じに見えました。


れいまどの、こういう丁々発止な感じの言葉のないやり取り、大好きなんですよね!
観ていると、板の上のおふたりがあくまでもイーブンな関係性で、一緒に時間を作り上げていることがよくわかるような気がします。
過剰な遠慮も謙遜もなく、良いものを一緒に楽しく作る!というそんな雰囲気があるなぁと思うのでした。*2

息ぴったりすぎるれいまどのデュエダン②CHEEK TO CHEEK

そしておそらくは本作における二人の最大の見せ場である、二幕の「CHEEK TO CHEEK」。
恋心が生み出すときめきの純度が特濃!と言いたくなるとびきりロマンティックな時間であり、同時におふたりの素晴らしいダンスの技量に度肝を抜かれる場面でもあり。

この場面のデイルはまだジェリーをホレスと勘違いしたままなのですが、
妻である(と思いこんでいる)マッジからジェリーと二人で過ごすことを熱心に薦められ、いったん是非を考えることを放棄します。
「いいわ、彼女が気にしないなら、私も気にしない」と、目の前のジェリーに惹かれる自分の心に素直に向き合い、ダンスに誘う彼の手をとります。


そこから二人がタイトルどおり、”頬を寄せ合って”チークダンスを踊る時間の、なんたる甘やかなことか。
「言葉は何もいらない」と、愛をこめてうっとりとした歌声をデイルの耳元で紡ぐれいちゃんジェリー。
その腕の中で、どきりとするほどに美しい恍惚とした表情を浮かべるまどかちゃんデイル。
曲が始まった段階ではフロアを埋めていた他のカップルがいつの間にか姿を消し、歌の終わりとともにダンスホールはジェリーとデイルのカップル、ふたりだけの空間へと変化していきます。


広い舞台上でふたりきり、デュエットダンスが披露されるこの時間、まずはやはり技量的な面で本当に目を見張ってしまいました。見事すぎる。
特にあの、まどかちゃんが縦に180度回転?に近い体勢になる例の瞬間!
「待って!今何をやったのかさっぱりわからない!?」となってしまった、、あれもリフトの一種なんでしょうか?
直前に一瞬勢いをつけて、まるでなにもない空中を駆け上がるみたいな動作をするんだけど、本当にあれは一体なにがどうなって……!?
円盤の稽古場風景にこのシーンが運良く入ったりしてないかな!?無理かな!?笑
絶対にものすごく難しいことは素人にもわかる、でもそれをあくまでも「軽々と」やってのけているように魅せてしまうおふたりに、脱帽でした。
ナウオンでは(おそらくは海外公演の)映像を観て「これは一体なにがどうなって……?」とこちら側と全く同じリアクションをしているまどかちゃんの様子もありましたが、
それをごく短い稽古期間でああして実現してのけてしまうのですから、トップコンビって本当に凄まじい存在ですね。。

芝居とダンスどちらもぴったりと合う、れいまどの呼吸

劇場でこのシーンを観ながら、この演目をリアルタイムで目撃できた幸をしみじみと噛み締めました。
まさしく「夢のような」と言いたくなるこの場面がここまで魅力的に仕上がっているのは、
ジェリー・デイルとしての気持ちの沿い方と、芸名のおふたりとしてのダンスの呼吸、双方がぴったりと揃っているからじゃないかなと感じました。
そのどちらかが欠けていたら、あんなに魅力溢れるシーンにはならなかったんじゃないかなと。

れいまどは、お芝居とダンス両面での呼吸の合わせ方がとにかく丁寧だなと感じます。
そりゃ、デュエットダンスなのだから当たり前ではあるかもしれないけど、単に「難易度が高いものを見せる」というだけに終わらないところがすごいなと思うんですよね。
ISN'T THIS A LOVELY DAYもCHEEK TO CHEEKも、
「確かに振り付けの中には難易度の高い部分がある、でもそれを踏まえて今このシーンではジェリーとデイルとして何を表現したいのか?」というところまで深く深く踏み込んで、作り上げられたシーンなのだなと思います。
たくさん話し合いも重ねられて、お稽古をいっぱいされたのだろうなと。
だからこそ、観ているこちら側はただただうっとりと、夢見心地になれるのだろうなと思います。

書ききれないので駆け足で、その他言いたいことを殴り書く

言いたいことほんとはまだまだたくさんあるので、以下駆け足でざっと行きます!


まず、まどかちゃん、歌がうまい!(それはそう!みんな知ってる!)
「YOU'RE EASY TO DANCE WITH」と「WILD ABOUT YOU」のまどかちゃん、歌の表現力の幅が広すぎてビビりました。
娘役歌唱じゃない喉の使い方?といったらいいんだろうか……声楽全然詳しくないからわからないけど、そういう歌い方もできるんだ~!みたいな瞬間がいっぱいあって。
ちょっと濁った感じの「about you」の歌い方、まじまじカッケ~!と思いました。
歌いこなせる曲の幅がとにかく広くてびっくり。本作はそもそもソロが3曲もある時点ですごすぎる。
せっかくなので、がつんとミュージカルど真ん中!みたいな難曲、今後花組のまどかちゃんでもぜひ聞いてみたいな~!って思っています。
なんというか、まどかちゃんはやっぱりスーパー娘役さんだと思う。
今後のご活躍もとても楽しみです!


あとどうしても言いたい!
ポスタービジュアルにもなっているCHEEK TO CHEEKのデイルのドレス、ほんっっっとうに素敵!大好き!(※ドレスに字数を割いてしまう女S)

少しくすんだ色合いの落ち着いたピンクが、デイルのキャラクターにとてもよく似合っていると思いました。何より花組カラーですし、宙組初演のときは白だったみたいだから、花組での再演用にピンクを選んでくださったのかな!?
裾が大きく広がらないタイトなシルエットはとてもお洒落で、襟元と裾それぞれにたっぷりとついた細めの羽飾りがゴージャス。
リフトやターンで勢いよく裾がぶわっと広がるとダイナミックな見応えもあって、静止している時も踊っている時も、どちらもとても美しい一着だなと思いました。
そしてあのさばきにくそうな裾の構造を我が物にしてあんな難しい振り付けを踊りこなすまどかちゃん、本当にマーベラスッ……!


そして最後に!我らが柚香光さん、相変わらずのとんでもねえモテ男!そして、「恋」がお強い!!!
れいちゃんジェリーの息をするように恋に落ち、同時に相手もあっさりと恋に落とす仕草、やっぱり天下一品でした。恐ろしい。

そもそも柚香光さん、一緒になったら絶対に苦労させられる系の、でも抗えない魅力を携えた男性像がうますぎる問題があります。
今回、ジェリーはアプローチの仕方がぶっ飛んでいてやばい。あんなの自分に自信がないと許されない何かだよッ!
馬を御したことがないくせに一目惚れした女性と二人きりになるチャンスが欲しくて馬車を走らせちゃうジェリー、冷静に考えるとかなりあぶない人。笑
そんな近づき方されたら流石に怖くない!?めっちゃ避けたくならん!?とは思うけど……思うのに。
でもそういうのとりあえず、まぁいいか~!っていつの間にか不問に付してしまえる、あのチャーミングさ。全然よくないはずなのにおかしいな。
やっぱほんとれいちゃんの演じるモテ男はどこまでも、ヒロインを夢中にさせる説得力がありすぎて、ズルい。笑

そしてあの、誤解が解けたあとの「ジェリーだよ」のウルトラロマンティックっぷりには、ほんと腰が砕けました。
あれを聞いてた私の脳内は、

  • 「ねえなんで今名乗る!?アルベルトへの罪悪感を訴えてたデイルの話、ちゃんと聞いてた笑!?」←ツッコミ①
  • 「でもやっと誤解が解けたんだから、もう周りが見えなくても仕方ないか!?」←納得①
  • 「とはいえデイルが既婚者になっちゃった問題はまだ何も解決してないのでは!!?大丈夫!?」←ツッコミ②
  • 「う~~~ん……でもまぁ、とりあえず、二人が幸せそうだからいっか!!!」←納得②、になった。(※全然よくない)

上記のとおり、観ていてツッコミと納得の応酬が起きるほどに破壊力のある、とろけるような「ジェリーだよ」だったんですが、
それに加え、あのテーブルの上での指の絡め方がまた大問題ではなかったでしょうか。いや、色気ェ……
そのタイミングでデイルを見つめながら指をナチュラルに絡め始めるの、見ててほんとドキドキしちゃったな!?
ほんとうに、もう少し自重してくださってもよろしくてよ!?というあれで……あのシーンはオペラ覗きながら「ヴッ」ってなりました。”恋”があまりに強すぎて。

最後にデイルとアルベルトの結婚が成立していなかったとわかったあと、心から愛おしそうにデイルを抱きしめるその仕草にも、同じように「ヴッ」ってなりました。
だって、優しくて深くて強いハグであるだけでなく、同時にその仕草がどこまでも美しいんだもん……勝てないよ!!!
ラストの「デイル!この手を離さないで」っていう声音の、あのにじみ出るような幸福感も大変忘れがたく。。

というわけで、わたくしは今回も柚香光さんの恋心の匠っぷりに、無事完敗いたしました!!!は~~~ほんと、大好き!!!



1記事あたりのボリュームを圧縮することを試みたのですが全然失敗してます。8000字超えちゃった。圧縮とは???
それなのに、他の生徒さんの話全然書けてないんだよ~!でもそれもいつもだよ~!ってなってます。うう、悔しい。
それこそ別記事としてコンパクトにまとめられたらいいのか?!
とりあえずトプハ1記事目はここまで!

*1:タップダンスという存在を多分この映像で知りました。タップの足元のステージがどんどん小さくなっていくやつが子供心にすごく好きだったんですがなんの映画だったのか全然わからない!また観てみたいな。

*2:これは芸事の上では、れい華にも根底には同じ思想が流れていたように思います。つまりれいちゃんの中で理想とするトップコンビ像がそういうものなのかな?と最近思うようになりました。