梅芸での大千穐楽から気づけば1ヶ月が経ってしまい、このままだとあっという間に8月も終わってしまう!という焦燥感でいっぱい。
旬を逃そうがなんだろうが、未来の自分のために、あの幸せすぎた2ヶ月間の記憶をちゃんと文章にして書き残そうと思う。
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2019,2021から数えてまさかの三度目。
私は今回のロミジュリ2024も心ゆくまで通い倒した。それは石川凌雅くんのベンヴォーリオを観るため!
まずは大好きな彼の「お芝居」についての感想。
あたたかくて真っ直ぐ、どこまでもオープンマインドに明るい一幕
りょうがくんのベンヴォーリオは、本当にあったかくて心根の優しい青年だった。
頼れる兄貴タイプではなくって、どちらかというと可愛い弟タイプが近い。
ロミジュリオタクのくせに極端にベンヴォーリオ偏差値のみが低い私だけど、りょがヴォーリオは2019/2021で出会ったどのベンヴォーリオにも似ていなかったなぁと思う*1。
2024のどのモンタギューの組み合わせの中においても、ロミオ・マキュ・ベンの3人を「ぎゅっとひとかたまりにくっつける」力がとても強い。
なんだろうなぁ……いうなれば接着剤とか触媒?みたいな感じで、そこにりょがヴォーリオをぽんと置いておくことにより、わちゃっとしたやんちゃで楽しい空気感がモンタギューの中にぶわっと生みだされるような感覚があった。
危なっかしいマキュのことをどこかしらでいつも気にかけている眼差し。大好きで大切な仲間としてロミオに正面から笑顔で絡みに行く気安さ。
乳母に「みんなとは違う」と言われる通り、ロミオってやっぱり特別で、名家の跡取り息子というだけでおそらく仲間内からはなんだかんだで一目置かれたりもしているんだと思うんだけど、
りょがヴォーリオはそのロミオに対しても一切の遠慮なく、とくに壁なんか作らずに、自然に隣に居られるところがすごく特徴的なように感じていた。
ロミオふたりからのりょがヴォーリオへのアプローチも、すごく「友達!幼馴染!」というニュアンスが強かった気がして。
とくに、あの生まれながらにして王子ですか?みたいなゆたロミオが、りょがヴォーリオに対してはめちゃくちゃに同い年感あふるる気軽なやり取りを仕掛けてくるので、そこの関係性のニュートラルさには観るたび本当にグッと来ていた。
くるロミオだとなんかもう仲良しすぎるあまり、悪ガキ感もお互いににじみ出てくるっていうか……最早「わーい!」って吹き出しが頭の上に出てそうなくらい、仲良しで楽しそうだった。
マキュに対しても過剰に面倒をみている感じというよりは、自分のうちに”何か”を抱える個としてのマーキューシオのことを、ありのままにいい意味で放っておいて受け入れているような印象だった。
あさひマキュだと、誰にも立ち入ることのできない孤独を抱えた彼の隣で、ただ「そばにいる」ことを選べる、それがりょがヴォーリオの優しさなのかなというふうに感じたし、
ささマキュだと彼のもつ幼さゆえのさみしさに、気を遣いすぎずに自然に寄り添っている印象を受けた。しょうがねえな!みたいな感じで。
なんだろうなぁ、変な過剰さがない、そこがりょがヴォーリオの好きなところだったかもしれない。
とにかく自然体で仲間への「大好き」が全身から溢れている、そんな気の良い存在。
ものすごく真っすぐでオープンマインド、それがりょがヴォーリオ*2。
歌とダンスは別記事にするので世界の王の話は追って!になるんだけど、
一幕で特筆すべきはやっぱり仮面舞踏会の過去いちのやかましさかな!!!
たしか初日の感想でも書いたけど、あんなに舞踏会で誰よりもはしゃぐベンヴォーリオって見たことないよ!?笑
あまりにも視界の中でうるせえので特に初日は本当にわらってしまった……楽しそうで何よりすぎる。
舞踏会を引っ掻き回すのってどちらかというとマーキューシオの役割だと思ってたので、あんなふうに率先して暴れ散らかすベンヴォーリオは新鮮すぎて。
ティボルトへのちょっかいも、もはやうざ絡みといって差し支えないレベルだったしw
優しそうな水田ティボはともかくとして、あんなおっかないもつティボにもよう果敢に向かっていくよね!?っていうちょっかいのかけ方でだいぶ面白すぎたな……
女の子を口説き落とす仕草のけしからんっぷりは素晴らしかったです!あそこは軽薄であればあるほどヨシ!!!
「綺麗は汚い」の感想も歌とダンス枠で別記事に送ります!
怒りと戸惑い、そして悲しみへ急転直下の二幕
明るくて優しいりょがヴォーリオが二幕で見せる表情は、当然ながら物語が転換する二幕では本当に大きく変わる。
これも過去比較がどこまで出来ているんだい?ではあるけれど、二幕のりょがヴォーリオは特に「決闘」の表現が見たことないアプローチだったなぁと思う。
なんというか、状況を俯瞰する部分もありながらも、結局はその場の出来事に正面から飲み込まれているように見える。
激昂するマーキューシオのことを、どこか自分に冷静さを残しながら止めに行く、というイメージをあの場面のベンヴォーリオに抱いていたんだけど、
りょがヴォーリオからはどちらかというと、目の前で起きている現実に対して本気で動揺し、混乱している様子が色濃く見て取れた。
嘘偽りなく必死なの。とにかく。どうにかしようと真剣にもがいている。
途中で止めに入ってくるロミオに対しては明確に”怒り”をぶつける表現だったのも、本当に珍しいベンヴォーリオ像だなと思ったんだよね。
ロミオに向かって「お前だろ!」とか「どーすんだよ!?」って叫んでいて。えぇそこ、怒るんだ!?ってびっくりした。
どうすんだよ、マーキューシオがこんなになっちまったのはお前が俺達を捨ててジュリエットと結婚したからだろ!?って責めてるんだよね。
ロミオとベンヴォーリオが協力してマキュをなんとか止めようとするというより、まずもってその事態を引き起こした原因であるロミオに対する憤りが明確に噴出していて、
あんまり見たことないアプローチに思えかなり新鮮だった。
1公演だけヴォリよしでも観劇したら、もっと落ち着いているというかやはり兄貴分要素がものすごく強くて、こんなに違うんだ!?ってびっくりしたくらい。
ヴォリよしは私にとっても過去に照らして馴染みのあるベンヴォーリオ像だったなという印象。
上記のとおり、明らかに狼狽えて右往左往しているりょがヴォーリオだけど、でも同時に「自分が最悪の事態を止めなければ」という決意はものすごく固いのも見て取れる。
「このままだと本当にやばいことになる」というのを、序盤から明確に察知している予感の強さも特徴的だったかも。
それくらい必死で全身でなんとかしようとしている、けれどそれは叶わない。
そんな彼の前で、親友は命を落とす。
こぼれ落ち、狂っていく大切な仲間たちの運命
マーキューシオの死……ここでマキュの傷を押さえるのはロミオの役割なイメージをもっていたけど、そのロミオの手の上からぎゅっと強く自分の手を重ねて、一緒に止血しようとするりょがヴォーリオ……
この場面、過去ずっと「ロミオだけじゃなくもうちょっとベンヴォーリオのことも考えたってよ!?」ってマキュに対して思って見てきたけど、
なぜか今年はあまりその寂しさを感じなかったのは、あの手の動きのせいもあるのかなぁ、と思ったりした。
泣いているロミオと視線を交わして頷くようにして、一緒に傷を押さえにいく回もあったりして。。(たしかそれはゆたロミオ回だったはず。)
「俺は死ぬんだ」のマキュに対して「動くな!」とか「しっかりしろ!」って叫ぶときもあったね……
しかしその必死の思いは届くことなく、親友の命の炎は目の前で消えていく。
いっぱいにあの大きな瞳を見開いて、愕然とした表情のもと、遠慮なくこぼされる大粒の涙。
あんなふうに正面から、あけっぴろげに嘆かれたら……どうしたって見ていて胸が苦しくなる。
ここでの表現は最終的に、東京公演序盤に驚かされたあの遠慮のないガチ泣きに戻っていったところに、りょがヴォーリオの心の柔らかさみたいなのを感じたりもした。
そこからティボルトを殺してしまうロミオを目撃したときの表情は、ただただ「驚愕」の一言だったと思う。
あの、どこか運命に放り出されたような、ただ見続けることしか許されない立場に、正面から翻弄されている顔。
今こうして振り返っても、めちゃくちゃに感情表現が濃いなぁと改めて思う。。
「代償」でのロミオの支え方も、本当に必死で、自分の身を削るかのようだった。
「僕たちは犠牲者だ」を歌うとき、足元にうずくまるロミオにじっと眼差しを注ぐことが多かったのがすごく印象に残っている。
犠牲者なんだという嘆きを大人たちに訴えかけるより、その結果親友がこうして運命の犠牲になってしまった、と改めてショックを受けてるような感じだった。
その後ロミオに近づくところも、彼のことを励ますようなアプローチではなく、
まず最初に「お前、本当に何やってんだよ……!」というどうしようもなさを滲ませていて、その感情の行きどころのなさはロミオの肩に手を置く時の当たりの強さにも表れていたように思う。
でも同時に、絶対にお前を一人にはしない!という気持ちの強さも溢れさせていた。
なんかこう、同時に複数の感情をぐわっと沸き起こしているところが、めちゃくちゃ人間くさいな!?と書いていて改めて思った。
ぎゅっと背後からロミオのことを抱きかかえるりょがヴォーリオは、
くるロミオだと強く守ってあげようとしているようで、ゆたロミオだと反対にベンヴォーリオのほうが縋り付いているようにも見える回があったりした。
特にね……公演の最終盤はゆたロミオの背に額を寄せてる回があって。あれは見てるこちらの胸が潰れそうになった。
ロミオが追放を言い渡されたとき、大公!って思わず叫んで呆然と大公を見上げるのが基本動作だったと思うのだけど、
大楽では「どうか追放をお赦しください!」のモンタギュー夫人の叫びに合わせるように、がばっとその場に平伏していたのには本当にびっくりさせられた。
体が反射的に勝手に動いたという感じに見えて。
その場の出来事を受け取って、瞬間心が動くままにお芝居するのがりょうがくんの好きなところなんだけど、これは印象に残って忘れられないシーンのひとつ。
なんだろうなぁ……ここまで書いてきたりょがヴォーリオの特徴をひとつ言語化するなら、献身性の強さ、もあるのかもしれない。
彼のうちに、それくらい当たり前に大きな面積を占めて仲間が存在しているということなんだと思う。
「ヴェローナII」での一連の動きは、やはりあのロミオの背に向かって手を伸ばすけれど引っ込める仕草が本当にどうにもしんどくて……
あそこで手を伸ばした時、何を考えていたの?あとからあの瞬間をどう振り返ってたの?と思わざるを得なくて。
なんで首を振ったんだろう、自分じゃロミオの嘆きの深さに追いつくことはできないことを自覚しているから……?
拾ったナイフを額に当てて、ぐしゃぐしゃの泣き顔で走り去る姿。
そこから一人身を起こすロミオの傍らにはもう「死」しか残っていなくて、仲間だった二人の運命が徹底的に分かたれたことが伝わってきて、あまりにも、悲しい。
(※「どうやって伝えよう」に関しては別記事で書きます!あの1曲単体でいいたことがありすぎる!)
「君に会いに」「ジュリエットは亡くなったよ」は、公演期間の中でも一番変化したポイントだったんじゃないだろうか。
公演序盤は、とにかくすごく硬かったと思う。
これは表現としてどうこうという意味じゃなく、あの場面のりょがヴォーリオの心持ちが硬かったんだと思うんだけど、後半では驚くくらいにその反対の柔らかさが出るようになっていた。
最終的に「君に会いに」で微笑むようになって……初めて見た回苦しすぎてどうしようかと思った……。
その笑顔を見た瞬間、単にロミオに事実を伝える役割を果たしに来ただけじゃなく、ベンヴォーリオ自身がロミオに会いたかったんだなぁと思えて、ほんとに涙が止まらなくなった。
序盤ではどこか投げつけるようですらあった「ジュリエットは亡くなったよ」も、ものすごく繊細な伝え方に変わってて、
でもその結果の「嘘だ!」「嘘じゃない!毒を飲んで自ら命を断ったんだ」以降のロミオとの断絶が、どんどんとエグいことになっていった。。
ロミオに拒絶された時、その場に転がって腰を抜かすような体勢になってしまい、そこから力の入らないままの体で立ち上がりぎこちなく歩き去っていく姿、本当に辛かった。
だってあれが、ベンヴォーリオが生きているロミオに会った最後になってしまったなんて……そんなのってないよ……
「どうしたらいいかわからない」気持ちで一緒に置いてけぼりになる幕切れ
そして、最後の霊廟の場面。
ベンヴォーリオに注目して観るとあんなに苦しいだなんて思わなかった……。
過去ずっと、ラスト近辺は比較的全体をとらえる見方をしていて、ベンヴォーリオの一挙手一投足から目を離さない、みたいな受け取りをしたのは流石に今年が初めてだったんだけど、
やってみたら本当にまぁ驚くくらいにしんどかった。。
ここのりょがヴォーリオの表現は、本当に回によって全然違う部分もあって、観るたびに新鮮にずたずたになっていた。
初日を観たときはものすごく鮮明に「自分を責めている」ように感じられたんだけど、
東京公演の中盤ではそれを強めに飲み込んで周りのために動く要素が強くなったように思えて、
でも終盤からまた「現実を飲み込めない」モードが戻ってきてて……本当に繊細に揺らぎ続けるお芝居だった。
霊廟への階段を降りてきたりょがヴォーリオは、ロミオの亡骸を前に驚愕に目を見開いて、
足をもつれさせるに近いような動きでふらふらと後退り、
あとからやってきたモンタギュー女子のひとりに「どうしたの?」って感じに肩を叩かれても、おそらくは無意識に、振り返ることすらなくその手を振り払ってしまう。
ここ、ヴォリよしは笑顔で彼女の手を取ってそっと下ろしてやるので、あまりの違いに目ん玉飛び出たほど。
向き直ってもう一度親友の亡骸をその視界にみとめた瞬間、体じゅうから力が抜けていくような、ぺしゃんとした崩折れ方でその場にへたり込む。
「なにを頼りに生きていこう」って、それはもう本当に言葉そのままの感情を、全身から零しているようだった。
「二人は愛し合っていたのよ、本当に」のキャピュレット夫人の声を聞いて、よろりと立ち上がって泣き崩れる仲間たちの肩に手を置くところ、
そこもどこか心ここにあらずというか、そうしようと決めて動いているというより、自分でもまだどうしたらいいかわからないままに、というギクシャクした力の入らなさがあって。
仲間たちに抱えあげられて体の向きを変え横たえられるロミオをじっと見つめるりょがヴォーリオ。
そこでロミオに向かって何か話しかけるときもあれば、じっと涙をためた瞳でただ見つめているだけのときもあって。
あそこで「話しかける」っていうアプローチも正直過去に観た記憶がなく(※これも私が過去気づいてないだけ説がめちゃくちゃ濃厚ですが)、
「ええ……なにを!?いったい、なにを……どんな言葉を!?」とおもって本当に動揺した。
言葉をかける時も回によってその言葉違ってそうだったし!?しかもその瞬間だけは、親友に向ける表情なのでほのかに笑顔なんだよね!?まじで辛いが!?!!
口元は読み取れなかったけど、たぶん「二人で幸せにな」みたいな、そんな手向けの言葉を贈っているように見えた。
でもその後、両手を組んで祈りを捧げるときは、もうぎゅっと眉根を寄せて唇を噛む、めちゃくちゃに涙を堪える表情になっており……いや、辛いて……
乳母と泣き顔で抱き合い、そこへ大公が現れたことに気づいたりょがヴォーリオは、
自分の役割を果たそうとでもするかのように階段を上がって大公のもとへ歩み寄り、手を差し伸べて情況を伝え、深く一礼をする。
ここで肩にぽんと手をおいてくれる大公の「大人」としての仕草、それを受けるりょがヴォーリオの、物語の中における本来は守られるべき側の「子供」だという事実の対比。
階段の上からそれぞれに嘆きあう両家のひとびとをふらりと見渡すように見つめ、不意に周囲の広がりに気づくような素振りを見せるりょがヴォーリオ。
その瞳から、ばらばらっと涙の粒が光りながら散っていくのを見た回は、本当にずたずたになりました。
そこから思わずほとばしり出るような「今 赦し合おう」。
大公の導きのもとに両家当主の握手と抱擁を見届けて、ぐしゃっと崩れた顔で神父と抱き合うりょがヴォーリオ。
皆とエメを歌うその瞳にはずっと涙が溜まっていて、最後あのろうそくの光に照らされる表情の哀しみに満ちた美しさが、本当に忘れられない。
だってきっと、りょがヴォーリオだって何が起きているのか全然わからないのだ。
大好きで大切だった親友を送るために懸命に体を動かすけれど、その心の内は……どうなの???ってなる。
書いてて思ったけど、りょうがくん体の使い方がほんとうにうまいから「心と体がばらばら」な感じが見ててものすごく強く伝わってきたんだなと気づいた。
目の前を通り過ぎていく、現実とは思えない悲劇的な出来事を、ただ見つめていることしかできない存在。
ベンヴォーリオって、当事者になりきることが許されず、その物語の中で傍観者、目撃者になることが運命づけられているんだなと改めて気付かされたロミジュリ3年生……。
りょうがくんのお芝居の繊細さ、移り変わる表情の豊かさが本当に大好きなんだけど、
それを正面から浴び続けながら一緒に苦しむという、なんだかとても得難い観劇体験ができたなぁと思う。
まじで知らんかった、ベンヴォーリオのオタクってこんな感情でカテコを迎えてたんやな……推しが生きてる霊廟ってそれはそれで、こんなにつらいんだ。。
りょがヴォーリオと一緒に、その情況のすべてに置いていかれる気持ちになり、いつも呆然と幕切れを迎えることになる、それが私にとってのロミジュリ2024だった。
何が言いたいかっていうと、りょうがくんのお芝居の豊かさが本当~に大好きってこと!!!
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全然なにひとつまとまってない!嵐のように言いたいことを断片的に書きなぐっただけになってしまった。。
構成をやりきれなかったのはひとえに「長いこと感想というものを書かなさすぎたから」なんだけど、それでも何も残さないよりはマシでしょう!
歌とダンスについても別記事書く!そして本当はプリンシパルみんなについてちゃんと触れたい!書けるかな!?