こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

舞台『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -New Encounter- ヒプステNEの感想

舞台『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -New Encounter-。
hypnosismic-stage.com
なんと呼ぶのが適切なのかがいまいちよくわからないけど、呼称はなんとなく新生ヒプステ、ヒプステNEあたりになるだろうか。以降、作品タイトルに倣ってヒプステNEと呼ぶことにする。

完全にキャスト起因*1で足を踏み入れることになった、自分にとって全く新しいジャンル・作品だったけれど、
まじで、自分でも信じられないくらい楽しんでいる。ヒプステNE、めちゃくちゃに楽しい!!!

(サムネに使えそうなポスター写真、ブレブレのやつしかなかった……笑)

具体的にどこがどう楽しいのか、感想として一通りまとめた。



作品世界に力ずくで引きずり込む、パワフルなオープニング

一大ジャンルゆえ当然認識はしているが、原作・舞台ともに一切通ってこなかったジャンルゆえ、私の事前知識はほぼゼロ
キャラクターの名前も設定も正直なにもわからないに等しい状態のまま(敢えてその選択をした理由は後述する)、3月1日の私はド緊張して初日の客席に座っていた。
様々な理由から独特に張り詰めたムードだったそのひと時は、しかしあっという間に、熱くうねる興奮の渦に吸い込まれていった。


ドン、とお腹の底に響くような重量感のある効果音で作品は幕を開ける。
どでかいLEDパネルを贅沢に使って、全面に映し出されるクリアな映像。D.D.B(Division Dance Battle)と呼ばれるダンサーチームを背景に、
”ラップバトル”を軸として展開する「ヒプノシスマイク」がどのような世界であるのかが端的に述べられる演出。
その直後、作品のテーマソング「The Tribe of BATTLE EMCEEZ」がド派手にぶちかまされる。

上記のトレーラー映像はショート版でヒプステNEの上演解禁情報として1月5日に世に出たのだけど、
公演の始まる直前にフル尺・8分超の音源配信もスタートしていた。
open.spotify.com

The Tribe of BATTLE EMCEEZ - Single

The Tribe of BATTLE EMCEEZ - Single

  • ヒプノシスマイク -D.R.B- Rule the Stage (-New Encounter- All Cast)
  • J-Pop
  • ¥255
music.apple.com
なので初めて聞く曲ではなかったのだが、生で初めてその披露を全身で浴びた初日の衝撃はちょっと忘れられない。

演劇がかかる箱としては何かと評判が良くないことの多いステラボールだが、ヒプステにはものすごくフィットしていると思う。
ライブハウス仕様のスピーカーによる真正面からこちらを殴ってくるような音圧に襲いかかられ、初日客席の私は否応なしにその世界観に飲み込まれた。
"It's time to Survive or Die
It's time to Countdown
for The Destruction
H.Y.P.N.O.S.Y.S MIC.
天に唾、飛ばす我のMic"

初日客席から自然と巻き起こった歓声と手拍子。ただただ圧倒されて心臓をドキドキさせて、食い入るように舞台を見つめていた。

そこからは怒涛の6ディビジョン、全18名のソロが畳み掛けるように展開する。
3Dアニメーションで踊るキャラクターが映し出されたLEDパネルの奥から、各キャラクターがステージ上に飛び出して来るのだ。
一人目の山田一郎が飛び出てきた時、比喩でなく息を飲んでしまった。
2.5次元とはなにか」を視覚的に叩きつけるような*2、一発で「魅せる」のその手法とエネルギーに圧倒されたのだ。
何年舞台オタクをやってるんだという話だけど、目の前で生身の人間がパフォーマンスすることの持つ力をこれ以上なく突きつけられて、
いい意味での動揺が止まらなくて、オープニングの間じゅううっすら涙が滲むほどだったし、鳥肌が立っていた。
舞台に対してはものすごく角度のついたサイドシートから観ていたから、演出意図が効いた美しい画角では全く無かったんだけれど、それでもその光景は忘れられないものとして私の目に焼き付いた。

私はこのオープニングの時点で「ああ、間違いなく自分にとっての最高のエンタメが新しく始まったんだな」と確信していた。
今振り返っても、あの粟立つような初日のオープニングの興奮を思い出すとものすごく幸せな気持ちになれる。一度きりしかない出会いの瞬間。絶対に忘れたくないな。

バランスよく、わかりやすく展開する本編パート。ミリしらでも全く問題無し

おそらく新シリーズ上演に当たってのこだわりなのだと思うけれど、今作では一気に6ディビジョンが揃って登場する。1チームに3人キャラクターがいるので、その分一人ひとりにかけられる時間はごく短くなってしまうのかな?と思っていたけど、
総じて描き方のバランスがとても取れているように思う。

ヒプステNEのストーリーは原作どおりの展開なのだと聞く。
開催が決定したディビジョンラップバトルに向け、各ディビジョンのチームが結成されていく様子が描かれていくのだが、
舞台上の出来事を追っているだけで各キャラクターの性格や関係性がすんなりと頭に入ってきたので、原作知識が全く無い私でも一切困ることはなかった。
次のディビジョンへの橋渡しというか場面転換やエピソードのつなぎに観ていて全くストレスがないし、
それぞれのディビジョンごとにストーリー展開としての見どころ・起伏がきちんと存在していて、2.5作品の脚本としてかなりよくできていると感じた。(脚本は亀田真二郎さん*3……さすが!)


ちょっとした補足として。
その作品にどう向き合うかは、あくまでもそのお客さんそれぞれの自由に委ねられていると私は思っているんだけど、
個人的には「2.5であるかどうかの前に、舞台として面白いか」を重要視しているところがある。
なのでいわゆる予習として事前知識を入れることを自分に対しては必須としておらず、初見でどういう印象を得てその作品世界を理解していけるかを楽しみにしている節があるんだけど、
ヒプステNEはその点でも本当に好みにハマって楽しめている。
元の作品ファンでなくとも置いていかれる印象は全く無くて、ここを入り口にヒプノシスマイクを楽しんでいけるな、と素直に思えるようなつくり。
新規としてはすごくウェルカム!を感じてその部分でもとても嬉しかったし、一気にリラックスして楽しむぜモードになれた。それも自然とハマれた一因なのだと思う。

「全員大好き!」と叫びたくなる18人のハイスキル集団

これはもう本当に、キャスティングすげ~~~な!と素直に感嘆する気持ち。
今回のヒプステNEは比較的役者としてのキャリアが浅めだったり年齢も若いキャストさんが多い。
そうじゃないキャストさんも勿論いるのだけど(突然の大ベテランが混じっていたりもして)、全体的に今作がはじめましてになる俳優が大半だな、というお客さんは非常に多かったんじゃないだろうか。
私個人で言えば、名前を知っているかどうかは置いておいて、自分の目でちゃんと観たことがある。と自信をもって言えるのが石川凌雅くんと植原卓也くんの2名しかおらず、
各キャラクター以前に、それを演じるキャスト陣についてもミリしらの状態だった。

でも!むしろそれが良かったんじゃないか?と思うくらい。
「よくここまで揃えたな!?」と言いたくなるような18名のハイスキルかつ、つよつよビジュアル集団に迎え撃たれて、初日は本当にたまげた。
予備知識や先入観が一切ない状態で初めてその場に生きるキャラクターに触れる形になったわけだが、
長年この界隈でオタクをやっていると実はそういう機会も滅多になくなってくるので、それがすごく新鮮で楽しめた。
この役者さんならこういう表現をするだろうな、こういうものが観られるだろうな、といった予想が一切ないので、
ある意味では具体的な期待を抱きにくい状態なわけだけど、だからこそよりクリアに、そのキャラクターやキャストの魅力をまっさらに捉えられるような気がして、ものすごく楽しい。
こんな魅力的な役者さんがたくさんいるのか!と優れたパフォーマンスをひたすらニコニコと楽しませてもらっている。
いやまじでみんなすごいし、各ディビションそれぞれに魅力があるので「大好きー!」と叫びたくなってしまう。
この記事では個別には掘り下げないけれど、各ディビションへの感想も書きたいな。


そしてなんといってもダンスが圧巻だったりする。
過去のヒプステを観ていた友人から「ラップは勿論だけどものすごく踊るコンテンツでもあるんだよ~」というのは聞いていたのだが、本当にありえんくらいみんな踊れる。
ここまで全員が粒ぞろいに踊れる2.5作品ってあんまり記憶にないかも……?と思うくらい。
シンプルに上手いダンスを見るのが大大大好きなので、私にとってはヒプステNEはそれだけでも最高コンテンツ!!!なのである。
ラップの巧拙に関しては、当たり前に知見がなさすぎるゆえに判断がつかないというのが正直なところだけど、
素人が観ているかぎりだと「みんな上手だな~!?」ってなる(基本そういうめでたいスタンスなので)。
とはいえ、少なくともリズム感にはだいぶ敏感なつもりなのだが、その観点で気になるようなキャストは誰ひとりとしていない。
あれだけ踊ってラップして……よくそんなことが実現できるな!?と思うような運動量であり負荷なのだけど、
それをキャラクターのビジュアルで・あくまでもキャラクターとしてやりきっているのを見ると、しみじみと「役者ってすごいな……」の気持ちになる。


あとはやはり若い故だろうか、とにかく成長角度が凄まじかった。
公演期間が長めだったのもあり、初日~東京千秋楽にかけての進化がどのディビジョンも強烈で、
観るたびに今日はここが!あそこが!と成長ポイントに出会えるのがとても楽しかった。
みんなが目に見えて自信をつけていく様子がわかって嬉しかったし、板の上でどんどんと自由にもなっていくのを感じて、
作品が深まっていく様子をリアルタイムで追いかけられることの楽しさを久しぶりに味わった。

ラップに詳しくなくてもその魅力を楽しめる、曲の力

ラップミュージックは家族が好きなのでちょっと触れる機会はあったけど自分自身で聴き込んだ経験は全くなく、
元々の音楽の好みからいえば、正直かなり遠い位置にある。
でもそんな状態の私が観ていても、ヒプステNEはものすごく楽しめている。
ラップって音楽・言葉・リズムが渾然一体となっているからこその独特なエネルギーがあるんだなと、今回のヒプステNEで実感した。
客席でリズムを体感するのがとにかく楽しくて心地よい。
テーマソングの「The Tribe of BATTLE EMCEEZ」もだけど、とにかく全編に渡って曲が良い!
セリフのように展開する本編の曲も、2部ライブパートで披露される各ディビジョンの持ち歌も、どれも良い!!と叫びたくなる。


とくに声出しOK、リズムに乗りまくれる2部の楽しさといったらない!!!
ヒプステのオタクはなぜあんなにリンライ(=リングライト)を大量に身につけるのか以前は不思議で仕方なかったんだけど、
通うようになってよくわかった。私もとにかくなるべく光りたくなった(???)。だって、あまりにも楽しすぎて。

シンプルに本編の立ち位置順ではあるが、ライブパートで披露される曲順もすごく好き。
王道ど真ん中で正面から楽しく盛り上げるイケブクロ、クールで危ない魅力をこれでもかと撒き散らすヨコハマ、とびきりキュートにハッピーを届けてくれるCheer up!な感じのシブヤ、
夜を思わせるしっとりした大人の色香で魅せるシンジュク、突き抜けた賑やかさと色気のギャップで大爆発するオオサカ、とにかく客席全員を巻き込むまで容赦しない、パワフルさ全開で殴りかからんとする勢いのナゴヤ
そしてそのあとになだれ込む、全員でぶち上がる再びのフル尺テーマソング「The Tribe of BATTLE EMCEEZ」!!!
本当に目まぐるしいほどカラフルで息つく暇もなく、ひたすらに笑顔で色とりどりのリンライの海で楽しむライブ……こんなの、楽しくないはずがない!!!


これまでペンライトありの2.5現場には大量に通ってきたけど、
舞台の2部パートにおけるペンラさばきってなんとなく独特なレギュレーションがあるきがしていて、
音楽そのものに乗るというか、いわゆる音楽ライブにあるようなリズムへの乗り方は、正直だいぶしづらいところがあるように思う。
「腕でペンライトを振る」ことだけしか想定されてないっていうか……?別にそんな大げさに動かないんだとしても「全身でリズムに乗る」ことは想定されてない気がしてしまい、基本的になるべくじっとしていることが多い。*4
でもヒプステだともっと自然に「音楽に乗る」感覚でライブパートに参加できるのが、個人的にはめちゃくちゃに楽しくてたまらない。
ダンサーさんもガンガンに・多種多様に・しつこいくらいに煽ってくるし笑、各ディビジョンもその特色ごとに客席に色んな呼びかけをしてくれて、とにかく一体感がありまくる。楽しい!
ただ騒ぎたいっていうわけじゃ当然なくて、自然に出したい歓声が楽しく出せる・音楽として盛り上がれるのは、やっぱり体験としてものすごく心が浮き立つものだなと思う。*5
先述した独特の強めのエネルギーがあるぶん、ラップがどうしても苦手という人も少なからずいると思うんだけど(シンプルに耳が疲れちゃうとかは人によってはありそう)、
「ラップは特に詳しくないけど、なんとなくいかつくて敬遠してるかも」くらいであれば、意外に楽しめる可能性があるんじゃないかな?と思う。




New Encountから始まる「新しい歴史」

東京公演は3月17日で15日間・全25ステージを終えた。
初日を観て以降、本当に自分でも驚くくらいヒプステNEに秒でハマってしまい、リセールやら当日引換券やらキャンセル待ちやら……当初よりもだいぶ観劇回数が増えた。
正直なところ、自分がここまでヒプステに向いてるとは思わなかったし、周囲の友人にも軽く引かれるほどだった。それくらい、病みつきになっている。
今週から大阪公演がスタートするが、東京では実施のなかった配信が千秋楽である4月7日に決定しているので、興味がある人は是非見てみてほしい(ABEMAで1週間のアーカイブ付き)。
hypnosismic-stage.com


書いてきたとおり、私はヒプマイ原作に詳しくなく、これまでの舞台シリーズを観てきたわけでもなく、
完全に「新規」の客として今作に通っている。
だからヒプマイ・ヒプステに関してここまで存在してきたことの全てを、文脈を含め、私が新規の立場から完全に理解することは当然不可能だ。
でもそういった意味でも、色んな立場や考え方の人がいて良いと思うし、その人が好きなスタイルで楽しめればいいんじゃないかな。
初日カーテンコールで一郎くんが言ってくれた挨拶の言葉どおりに、私は私の立場から、
こうしてスタートを切ったヒプステNEの「新しい歴史」を、ひとりの観客として一緒に作りながら存分に楽しんでいけたらいいな、と思っている。


どこか”試す”色合いの刺すような空気感だったり、戸惑いや不安……本当に様々な感情がないまぜになっていた、あのぴりついた初日開演前の客席。
それがトリプルカテコではスタオベになった、あの内側から湧き出る熱さの渦巻くような一体感には、本当にグッと来るものがあった。
目の前で力の限り演じる演者と、それを受け取る観客の相互作用で舞台はその日その場に完成するんだなって、しみじみと感動した。


大阪公演もものすごく楽しみ~~~~!!!
もはや楽しみすぎて若干向き合えなくなっているくらい……だって始まったら終わっちゃうんだもん!!!やだよ~!!!

この記事はオタクのテンションでぶっちぎる系というより、意図して真面目気味の文章にしたけど、まぁこれを書いている中の人の本質は ↑ なので、
気が向いたらIQがだだ下がるオタクのぶっちぎり系文章も書くかもしれません。というか、もっと頭の悪いアホな文章をすでに書きたい。笑
ヒプステNE、だいすきだー!!!

*1:石川凌雅くんを見に行きました

*2:前作のラスト演出が背景にあると思っているのですけど観られてないのでしっかりとした言及は避けます

*3:去年マシュステでその手腕に大変お世話になりました。

*4:ペンライトの本丸であろう一般的なアイドル現場に行くことがないため、これが舞台限定なのかアイドル界隈においても似たようなものなのかはよくわからないけど、舞台の場合は「芝居を静かに観客として観る」ことが前提にあってからのライブなので、このあたりは自然とそういう振る舞いが客側にも染み付いているところはあるし、そうじゃない場合に叩かれやすいのはあると思うし、実際邪魔になることも多いかな……みたいな。なので本当にどんなにノリノリになりたい曲調でも必死に自分を押さえていることが多い。笑

*5:ちなみにですが、東京公演には相当数通った一方で、めちゃくちゃに治安が悪いな……?と思う現場にはとくに当たりませんでした。