こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

宝塚花組「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~」初回観劇の感想(6月5日マチネ・宝塚大劇場)

幕開けからの2公演目、6月5日・日曜のマチネで花組マイ初日を迎えて来ました in 宝塚大劇場ー!

大ポスター、大好き!(いきなりめっちゃ頭の悪い文章を……笑)

まずはお芝居の感想のみで1記事更新します!

著名な作曲家でありピアニストであるフランツ・リストの生涯をとりあげる本作。
貴族の開催するサロンのアイドル的存在、超絶技巧のピアノの腕前の持ち主として著名な彼が、その人生の中で追い求めたものは何だったのか。
リストと彼を取り巻く恋人や友人たちとの関わりを通し、その光と影を緻密に描き出した作品です。

人生の複雑性を丹念に織り上げた名作

と、感じております!今回のお芝居!
ちょっと思い出しても、胸がぎゅっとなるような、不意に涙が零れそうになるような、そんな瞬間に満ちている作品でした。
演出の緩急の付け方がとても効いていて、生田先生の狙った通りの世界が舞台上にしっかりと立ち現れているのではないかな?と。
前半のパリの社交界の華やかさ・賑やかさが溢れる場面では、振り切って「派手である」ことに集中した、面白さの溢れた演出が繰り出されます。
演奏を始めそうで始めず、鍵盤から指を離しては悩ましげに髪をかきあげるリストの美貌に「……あぁ~~!」とたまらずにため息を漏らすパリの貴婦人たちの様子は、
あまりにも客席の私たちの気持ちとリンクしすぎているのでつい笑ってしまいますし、
いざリストが演奏を始めた!と思ったら、トップスターの歌と共にまさかのゲーミング仕様で虹色に光りだすピアノ……嘘でしょそんなのズルい!?wwになって、あれには爆笑してしまいました。。だって、光りながらぐるぐる回るピアノ……!?笑
「彼の汗のしずくを持って帰りたい!」みたいな歌のときは、れいちゃんリストから溢れる汗がキラキラ特大ビジューになって具現化してるし、振り切り方が最高すぎた!笑
その後、パリを出て駆け落ちしたリストとマリーが真っ白い衣装で森の中を駆け回るところは、ベッタベタの甘々な70年代少女漫画とおぼしき世界観で、もはやバカップルと呼んでも差し支えないような雰囲気に仕上がっていたりして、
笑ってしまうところ・わかりやすくキュンキュンしてしまうところは、明確にバーン!と眩しいまでの陽のオーラをまとって提示されているなと思いました。


そして、だからこそ引き立つ、人生の「影」の部分。
神童と呼ばれ親に望まれるままハンガリーを離れるも、パリ音楽院に入学できなかったリストの過去。
リストと巡り合い運命を共にできると信じたはずが、離された手はそのままに、どんどんと遠ざかっていく彼を遠くから見つめることしかできなくなるマリー。
誰よりも「野心」を通じて理解しあった相手が躊躇なく名声を捨てたことを受け入れられず、リストを焚きつけて表舞台に引き戻すジョルジュ。
音楽を愛し、親友として友を案じる中で、己の命の灯火が尽きていく運命を変えられないショパン


邂逅と別れ、理解と断絶。
そこにあるのは単純な正解ではなく、ただ思うようにならない、人生の真実。
きらびやかな成功も、運命の人との愛の交歓も、天賦の才を持つ友への嫉妬も、自由を希求する魂も、
そのどれもがフランツ・リストという人物が生き抜く上で、確かに存在した人生の一部だったのだと。
何が間違いで正しかったのか、そんなことを考えてもそれに意味などなくて……リストはただ、「生きる」ことに誠実に、必死だったのだと、そう思いました。

日々を生き抜いたその先に。血の通った人間であるフランツ・リスト

れいちゃん演じるリストは、とにかくどこまでも人間臭い存在でした。
人々から称賛を浴びることを欲し、誰よりも高い位置に立つことを目指し、実際にその才をもって名声を意のままにする様子。
周囲が求める”フランツ・リスト”を熱心に提供する一方で、己に深く穿たれていた空洞に気づいた瞬間、一気に全てを投げ出してしまう極端さ。
巡り合った真の理解者と信じる女性と、歓びのままに心を通わせる夢のような日々。
忘れていた野心に火がつき、一度離れたはずの社交界に舞い戻った途端、そこで収めた成功により再び権力と虚飾に溢れた世界に引き寄せられていく業。
激動の時代を越え、波打ち際に静かに佇むような穏やかさをもって、かつて愛しあった人と再び時を共にした瞬間にこみ上げる、その万感。


そのひとつひとつが、リストが「生きた人間」であるからこそ生み出される、嘘のない感情とその帰結であり、
れいちゃんのお芝居を見ていて、リストはどうしてそんな行動を取るのか?と腑に落ちないような部分がまったくなく、
ただひたすら、ひりつくような生の実在を感じました。
人間性が出来ているとは言い難いからこそ、リストの言動や行動の全てが、とても血の通ったものに感じられて。

何かを追い求め続けている、満たされたいと心の底から願いながらも、自分の身の内にある真実を掴み切ることだけが叶わず、
奥底に純然たる孤独を抱き続けるその様子は、まさに副題のとおり「魂の彷徨」なのだと思いました。


修道院に暮らすリストを、マリーが訪ねてくる物語のラストシーン。
互いに黒い服を身に着けるふたり。そこにはかつての華やいだ空気はなく、年月を経ての再会に、恋する想いが燃え上がることもない。
ただ穏やかに微笑んで言葉を交わしあうその中で、「喜びと、苦しみの全て」という、ポスターに綴られたあの煽り文がリストの台詞として登場するのを聞いたとき、
こらえきれない涙があふれました。

後悔などどこにもない。ただ熱く信じあって共に過ごした日々だけが、確かにそこにある。
遥か向こう、来し方をそれぞれの視点から見つめるようなふたりの表情は、どこまでも凪いでいて。
ラストシーンを徹底的に「静」のみにぐっと抑えた表現で終わらせたあの演出、大正解だったのではないかと思います。
余韻が凄まじくて、最後の数分間だけでびっくりするくらい涙が出てしまいました……。

綺羅星のような花組スターたち。魅力あふるるそれぞれの輝き

リストの他に物語の中心に在る、マリー・ショパン・ジョルジュ(トップ娘役・二番手・三番手)の3人、言わずもがななんですが、本当に!全員自分の魅力を遺憾なく発揮していて、素晴らしかったです。

まずは星風まどかちゃんのマリー・ダグー伯爵夫人。
自由を求める叫びがこめられたようなマリーの最初のソロ、歌声にボロボロ泣かされました。
窮屈でどこにも行けない、何者にもなれない自分をどうか誰か見つけ出してほしいと請い願う、救いを求める切なる心がマリーにあの批評を書かせたのだろうし、
その叫びが真実だったからこそ、記事を読んだリストはいてもたってもいられなくなり、マリーの元を強引に訪ねずにはいられなくなったのでしょう。
「フランツ、お願い、ジュネーブへ」と懇願するその指先が、リストに届くことは二度となかった。
恋人が嬉々として成功を伝えてくる手紙を読み上げながら、彼がもう決して自分の元に戻っては来ないその事実をひとり痛感し、遠くから想うことしかできないあの苦しさ。
それでいて、自らの在り方をその手で掴み取って決めていく強さを、シトワイヤン!と叫ぶ彼女は、同時に身につけてもいくのです。


マイティー(水美舞斗さん)のフレデリック・ショパンショパンが歌う場面は、どれも切なくて苦しくて仕方ありませんでした。
その穏やかな笑顔はどこか透き通っているようでさえあり……音楽を愛し、音楽に愛された存在として、真っ白い光の中に在る、そんな姿に見えました。
友人としてリストの身を心から案じ、どうして君は本当に大切なことに気づかないんだともどかしさを抱く彼は、
死を前にした場面、夢の世界でのリストとの会話で、その思いの全てを愛する友に伝え、この世から静かにいなくなります。
「君が置いていったんだ」「連れて行け」と幼き日の友人の心を、今の彼の元へそっと導いて。
事切れたその後にノクターンが流れるの、あれは本当に無理すぎる。辛くて爆泣きした。
真っ直ぐな明るさはマイティー本人の持ち味でもあると思うのですが、そこに途方もない儚さが乗ったショパンの姿は、
リストにとっての救いと苦しみを同時に表現しているようで、胸が締め付けられました。もうこうやって書いてても泣きそう。


ひとこちゃん(永久輝せあさん)のジョルジュ・サンド。本当に見事すぎた!素晴らしかったです。
男装の麗人としての存在の複雑性をありのままに体現していると思いました。
リストを愛し、別れた後もその野心を揺さぶり続け、のちに愛したショパンに寄り添い、そして彼を見送り……
ジョルジュの行動原理には、清々しいまでに己のエゴが貫かれているのがとてつもなく魅力的でした。
彼女もひとりの人間として、日々を懸命に生き、戦い抜いたのだろうなと。
その魂が持つ強靭さゆえに、彼女は若き日のリストと強烈に惹きつけ合ったのだろうし、リストが貴族たちの社会でのし上がっていく道を拓く力になれたのだろうなと思います。
女役ゆえ、歌の音域も普段とは全然異なるわけですが、さすがの歌唱力でどの歌も抜群に素敵だった!


そして、本作で退団する音くり寿ちゃんと飛龍つかさくん……!涙
パトロンとしてリストを見出したラプリュナレド伯爵夫人。
貴族階級を象徴するかのような憎らしさを存分にたたえていて、
自らの身を飾り立てるアクセサリーとしてのみ音楽家に価値を見出すその残酷さ、くり寿ちゃんは思いっきり力強く演じきっていました!
マリーの夫であるダグー伯爵を演じるつかさくん。
妻が男性の名を騙って新聞に批評を書いたことに激昂し、伯爵夫人たる自覚を持てと彼女を押さえつける彼もまた、
男性中心の身分や名誉が第一の社会に生きる存在としての威圧感がしっかりとあって。
リストに伴われ心ならずもパリに戻ってきたマリーを前にして、自嘲気味に戻ってきてほしいと胸の内を吐露する場面には、
「叶うはずもない」という言葉通りの苦しさが、ありありと滲んでいました。
劇中では二人が対になるように歌唱するシーンがあったりもして、嬉しかったと同時に、やっぱりものすごく、寂しいですよね……!!!涙



掘り下げて書けなかったけどホッティーのタールベルクもほのかちゃんのジラルダンも、あとはなこちゃんのロッシーニも好き!
貴婦人たちも大好きだしその筆頭たるあおいさんの歌声かっこよすぎるし、何よりさおたさんがいてくださって嬉しいし、
結論「花組が好き~!!!」になって暴れました。
とにかくものすごく好きなお芝居でした。刺さりまくった。生田先生、ありがとうございます!!!

歌劇座談会によると今回の作品は「ダークな感じで」*1というオーダーがあったそうですが、
重さと軽さをシーンごとにきっちりと描きわけることにより、真実性の強さを感じさせるとてつもない名作になっているのではないか!?と思います!
れいちゃんのスター性とリストのスター性が「間違いなく本物!」と感じさせられる輝きをもってとけあっていて……そもそもリスト役をれいちゃんに当てるなんて、そんなの天才の仕業としか!!!


そしてがんばって真面目な感想に終始したんですけど、あの本当に、
美が美すぎて!まじでやばいから!れいちゃんのリスト!!!(最後に堪えきれずに叫びだす様子)


ピアノを弾いているシーンのその手の大きさと美しさ。。れいちゃんがピアノを弾いてる様子が実際に見れるとかなんだこれ、夢なんか!!?
そもそも幕開けから、なに!?長椅子に身を投げ出して、気怠げに手を額に当てて「今何時だ?」って。いや、何!!??美ーーッ!!!(※注意喚起ホイッスル)
からのジョルジュとの絡みよ!?いや、濃ーーー!!?大人!?色気!?エロス!!!(ギャーーッ///)になって、もう冒頭数分で頬はほてり、心拍数は上がりまくりでしたね……。実際のとこ体温上がってた自信あるもん。
あのブロンドの髪をかきあげる仕草がちょっとうますぎるんよれいちゃん……どうやったら淑女たちが身悶えするか、さてはリストめ、わかりきってやってるな!?っていうあの感じ!!!つまり客席の我々がそれに被弾して無事に召される、本望です!!!
マリーとキャッキャウフフの追いかけっこからのバックハグでつーかまえた♡するあの真っ白衣装のところはもう、どうしたらいいかわからなかった。あの奇跡の少女漫画みたいなビジュアルだけで客席をばちぼこに萌えで殴れるトップコンビ、本当に強すぎると思う。*2激烈スウィートなおふたり。完璧すぎて、心の底から参りました。。


そういうわけで、そもそもビジュアル的にとんでもなく大勝利・どう考えても見たかったタイプのものが見れるだけでなく、贔屓の素晴らしいピアノの生演奏が拝聴でき、それで更にお芝居も最高の内容だなんて、いいんですか本当に!?生田先生ありがとうございます!?(二度目)
いやーーーこんな素敵なものが!主演作として新規に書き下ろされるなんて!!最高でしかない!嬉しい!!!バンザイッ!!!
まだ1回しか見ていないのですが、題材的に表現はどんどん深まっていくだろうし、とりあえずだいぶ序盤に見れてよかったなぁと思います。
ほぼ1ヶ月後になる後半戦で2回目を観劇するので、変化が今から楽しみです!
そしてまずは無事の大劇場完走を、今回も力いっぱい祈りたいと思います!

*1:これは大団円・ハッピーエンド打ち上げ花火!だった前作「元禄バロックロック」との対比のためかなと感じました。

*2:うまく表現できなくてこの書き方だと見た目だけに言及してる感じ!?って焦ったけどもちろんそんなことなくて、言わずもがなですが、二人きり恋に思うまま身を浸らせる甘さのお芝居が素敵です!れいまど。ただとにかく視覚のインパクトが激烈に「キラキラの少女漫画」で破壊力がやばすぎる、と言いたかった。

ミュージカル るろうに剣心 京都編 感想 / 演出・音楽と各キャラクターについて

5月17日に開幕した「ミュージカル るろうに剣心 京都編」。
初日からすでに複数回観劇済みなのですが、感想をあげるのがすっかり遅くなってしまった!


(初日は曇り空だったので一番晴れてた日の写真にしました)

1記事目なので、主にステアラ上演の舞台としての魅力・見応えと、各キャラクターの皆さんに言及するスタイルでまとめます!
まりおくんの志々雄真実についてはあらためて別記事にすると思いますー!




まずは一言。ものすごく「楽しい!」に尽きる!

もうねぇ本当、この作品見ていてとにかくひたすらに、楽しい!!!(大声) みんな見て!
エンタメど真ん中を贅沢に浴びる喜びを、これでもか~!と存分に味わえるミュージカル作品だなぁと思います。

巨大スクリーン+360度回転する特殊な機構による見応えだけでなく、
申し分なし!と感じる芝居・歌ともに実力派揃いのキャスト陣(本当に皆さん素晴らしい!)、見栄えと共に視界の見やすさも考慮された美しいセット、場面にぴったりとハマる音楽の数々。
休憩をのぞき、一幕二幕がそれぞれ1時間半というかなりの長尺作品なのですが、見ている間はその長さを感じさせない密度の濃さです。
原作内容の取捨選択は、話についていけなくなる一歩手前で踏みとどまったようなギリギリの攻め方なんですが、
かといって見ていて完全に振り落とされてしまうことはまったくなく。改めて、小池先生の手腕、すごすぎ!?ってなりました。
そして小池先生の持ち味がとても生きる作品だなぁと……派手でケレン味があって、こう来てほしい!と感じるところでしっかり大きめの花火がドカンと景気よく上がる感じの演出、見ててものすご~く気持ちがいいです。
とにかく驚くほどにゴージャス!確かにチケットはお高い!が、それにも納得感があるし、むしろ「これ、予算内にちゃんと収まりましたか……?」って心配になるくらいの豪華さ!笑

私は2020年の上演発表のタイミングで初めてちゃんと原作漫画を読んだのですが、
原作の場面がうわっと勢いよく蘇ってくるような瞬間が沢山あって、セリフも主に歌詞にふんだんに取り入れられているし、これは原作ファンの人もきっと嬉しいのでは!?と感じます。
京都編の、清々しいとすら形容したくなるあの疾走感のあるエピソードが、ダイナミックにステアラ中に広がっていて、
2年越しの上演が叶ったことが本当に嬉しくなりました!諦めず待っていて良かった!!

小池修一郎×IHIステージアラウンド東京、それは予想を上回る”情報量”

今回!本当に!ステアラが、まじで超回る!!!
わたしが過去に観劇したのは劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season月 下弦の月」のみなんですけど、
その記憶と比較して「いや、いくらなんでもこんな回りましたっけ!?」くらい回るので、ちょっとウケてしまいました。
下弦に通い倒していた友人も「こんなに回ってなかった気がする!」って言っていたので、比較したらやっぱり多いのかしら!?もうほんと、すげ~動く。笑

事前特番やパンフレットでも触れられているとおり、客席が回転するゆえ本来は東西南北の4つから転換不要なはずのセットが惜しげもなくバンバン入れ替わるのには、すごすぎてちょっと笑ってしまうほど。
「え、この1場面のためだけにこのセット作ったんや!?」みたいな瞬間があったり、、いやほんとすごい……舞台裏は本当に大変なことになっているのでは!?と初日は客席で戦いておりました。
主演の徹平くんは「小池先生が新しいおもちゃを手に入れた」って表現されていましたけど、なんかもうそれ、すごくよくわかる気がする。。笑
あの超大型スクリーンまで使えるわけで、その動きと舞台上のセットを組み合わせた演出は、スケールが本当に大きくて見ていてあっけにとられます。
舞台上のセットにはだいぶ高さが設けられているため(階段状になっており舞台奥が一番高いつくり)、後方寄りの席から見た時にも全景がすごく見やすい印象がありました。
パンフを読んで知ったけど、あれは奥をかなり高めに作る工夫がなされたゆえの見やすさだったんだなぁと!
結果として視界に飛び込んでくる情報量がとてつもなく多くて、見ている間は長さを感じさせない一方、見終わるとしっかりと心地良い疲労感があります、楽しくて&面白くて、すっごくヘトヘトになる!笑


そして今回、私やっぱり小池先生の絵作りが好きなんだよな~!って改めて思いました。
世界が一気にバッ!と広がって目に入ってきたときの、あの絵の決まり方が本当に気持ち良い。その一瞬の見応えで、ひとつの大勝負ができる演出家なんだなぁと。
やはり宝塚歌劇団の方ゆえか、一点透視法的というのか、センターを軸とした空間の広げ方が本当に見事だなぁと感じます。
「幕末血風禄」で華やかに入り乱れる幕末の動乱を生きる人々の様子には、曲の魅力も相まってそれだけでちょっと涙が出そうになりました。。

エンタメを「=娯楽」として、真正面からきっちり丁寧に昇華させる手腕、という意味で、やはりすごく信頼しかないクリエイターだなぁと思うんです。
……いや、紫綬褒章の巨匠を捕まえてお前は一体何をいってるんだって話なんですけど笑、私はやっぱり小池作品が好きです~!

気分を盛り上げまくってくれる、百花繚乱!な音楽

今回劇中音楽を担当されているのは、宝塚歌劇団の太田健先生と、我らがおなじみ和田俊輔さん。
私事ですが2020年に突然ヅカオタの人格も得てしまったため、舞台にハマりたての頃にすぐにライネスの生みの親として名前を覚えた作曲家である和田さんが、太田先生と一緒に小池先生作品に初参加している様子をリアルタイムで体験するのは、なんだかすごく面白いというか感慨深いというか。
舞台を取り巻くひとつの潮流を勝手ながら一緒に体験できているような気持ちにもなっています。


とても個人的な感覚なんですが、作品全体の額縁部分というか、方向性を形作る・骨格にあたるところの音楽を主に太田先生が担当されていて、
その枠組みを和田さんの多彩すぎる様々なジャンルのメロディーがカラフルに彩っているというような印象を受けました。結論、たいへんに豪華です!
本当に「贅沢だわ……」としみじみすること限りなし。いやこれ、CD売ってください!??


好きな歌ばっかりなんですが、以下お気に入りをいくつかあげてみます!
志々雄真実の最初のソロ「弱肉強食」は、
どこで聞けるかな?とワクワクしていた「所詮この世は弱肉強食!」という志々雄の著名なセリフが、まさかの歌い出しにそのままドーン!出てきたので、ちょっと楽しすぎて初日客席で笑ってました(※楽しくなると「楽し~!!?」みたいな情動で、すごい笑っちゃうタイプのオタクで誠にすみません笑)。
剣心がワンフレーズ歌唱に入ってきたあとの「甘いぜ 先輩」は、まりおくんならではのあのハリのある高音で、もうさいっこう!かっこいいーー!!!ってなる。かっこいいなーー!!!

剣心と薫のデュエットである「待宵月」は、メロディがとにかく美しくて……!
特にサビのラストの「人は縋る 待宵月に」の、「月に」部分の処理が本当に好き。
素直に落ち着かせたらおそらくは半音?低いところで展開が終わりそうに思える旋律を、敢えて予想を裏切るように半音上げているように感じているのですが、その差から生まれる広がりが途方も無いなぁと嘆息させられます。
お二人の声の相性もとても素晴らしくて、それぞれの胸の内に固く立てられる誓いの光景、繰り返し見るうちに自然と涙が出てしまう一曲になりました。

「乱弁天」~「乙女の祈りは、もう全体の流れが突き抜けたバカバカしさもあってほんっとうに大好き!!(※めっちゃ褒めてます!!!)
特に乱弁天は「なんでここに手拍子がないんや!??」って初日は混乱するくらいだったんですが、3回目の観劇だった5月23日マチネでようやく手拍子できて、めちゃくちゃ嬉しかったです!!!
薫・操のガールズによる「コラ~!」のユニゾンとか、そもそも「カモンカモン♪」が絶妙に”鎌”にかけられていそうなところとか……たまらん!
手拍子でいうと個人的な願いとしては「おいでやす京都へ」でも手拍子やりたい……!(見てないうちにそろそろ起きるようになってる?そんなことないか!?笑)

あとは一幕ラストの「剣心はどこへ」の、あの畳み掛けるような大々的なカタルシスがも~大好物すぎて。。
これだよこれ~!!!小池修一郎×大田健ならではだよな!?と思えて、あの場面にはめちゃくちゃテンションが上がらざるを得ないです。
全然タイプの違う楽曲が、たった数小節の処理でぐいっと強引なのに違和感なく繋がれていき、それに乗って舞台上では場面が明快にばんばか惜しみなく転換し。
ほぼ全員が出てきてのコーラスによる歌い継ぎから、最強の師匠・比古清十郎と剣心の対峙で終わる一幕……いや、完璧すぎるやろーー!!!
ウォォ、書いてたら早く次を見たくなってきた!!!


以下は各キャラクターを演じる皆さんに、それぞれ短めですが感想を!全員書けなくてすみません!!

緋村剣心/小池徹平さん

圧倒的な座長!もう本当に、素晴らしいの一言です。
外見からして文句なく剣心であるだけでなく、小池先生もパンフレットでさかんに褒めているとおりの「少年漫画の主人公」感の携え方が見事すぎて。
こりゃ誰が見ても剣心だわ……!と嘆息することしきりです。
クリアなだけでなくしっかりとした声量を兼ね備えた、これまた”主人公”感たっぷりの魅力的な歌声と、
なんといっても殺陣が!殺陣がすごすぎます!なんなんだあのスピードは!?

見ていてびっくりするのは、腰の落とし方のとてつもない低さです。
ぐっと腰を落としての前傾姿勢からの斬り込み。その姿勢をとるだけでも消耗しそうだし、そもそもそこから動き出すのが大変そうに思えるのに、
体勢を低めた次の瞬間にあの速度で駆け抜けていける、その身体能力の高さに脱帽です。
特に後半の宗次郎との一騎打ちのスピードがえぐすぎる。
だって、ふたりとも足元見ないで剣を交えながらの横走りで段差を越えるんですよ。。いったいどうなってるの!?
先日のご自身の配信番組では「一幕は全く楽屋に戻る暇もない」とおっしゃってて、負担が相当にえげつないことになってると思うんですが、どうか最後までお怪我なく!!!

志々雄真実/黒羽麻璃央さん

いや~~~もうどうしましょう!?言いたいことがありすぎてどうしたら!?になってるわけなんですが、
まりおくんの志々雄、もう見事すぎてぽかんとしてしまいました、本当に。。推しの勇姿素晴らしすぎて……
素顔を隠すゆえ、純粋に芝居の力だけで勝負できるのが嬉しいと事前に何度もインタビュー等で言っていたまりおくんですが、
そう言っていた理由がめちゃくちゃによくわかる志々雄でした。
表情を伝える術がほぼ目元しかなくなるわけで、演技の難易度としてはいや普通に高いよなって思っていたんですが、
ちゃんとその全身から、佇まいから、志々雄が今何を感じているのか、どういう状態なのかがはっきりと伝わってくる。その純然たるお芝居の力が改めて大好きだなー!としみじみしました。

劇中でさまざまな視点はありながら、最終的には「志々雄真実という強大な敵を倒す」その一点に向かってぎゅっと収束していくストーリーが京都編だと思うので、
剣心たちが立ち向かうべき存在としての"悪"の説得力がなければ、話そのものが成立しなくなってしまう気がするのですが、
その点まりおくんの志々雄は本当に完璧な立ちはだかり方であり、恐ろしさであり、強さを湛えた存在でした。いやーーー、本当にかっこいい。。
あと!歌!歌がまたうまくなってて!!!低音!声量!進化ー!!!ってなったんですが、ちょっとまたあらためて別で書く!!!

四乃森蒼紫/松下優也さん

よく考えたら優也さん見るの私はだいぶ久しぶりだった!
これもパンフレットの座談会で言われているとおりですが、本当に色気がある……!
なんといっても、あの圧巻のソロ「華は添えない」
幕が上がる前の作曲についての和田さんのツイートを見ていたので、いったいどんな難曲を?って思ってたんですが、実際に聞いたら「いや、これ他に誰が歌えるんや!?笑」みたいなバリバリのド難曲だったので、作曲家とボーカリストの楽しげな勝負始まってる~!ってなってしまいました。いや難しいわ。流石だわ!?
どういう譜面なのかもうさっぱりわからねぇ!なりながら聞いてますが、自分の喉を自在に操れる才能って本当にすごいなぁと。。
たぶんあそこは公演終盤に向かってもっと仕上げていかれるんだろうなと思うので、引き続き楽しみです!

瀬田宗次郎/加藤清史郎さん

去年のニュージーズで初めて舞台姿を拝見したんですが、せいしろうくん、舞台姿めっっちゃ、良いよね!!
あまりにも宗次郎なので、いやこんなに役がハマること、ある!?ってびっくりさせられてしまう。。
まりおくんの志々雄との並びがまたいいんだよ~~~「宗」って呼びかける志々雄と、それに応えて隣を見上げる宗次郎~~!!
蒼紫に対する「隠密御庭番衆お頭の名が、泣きますよ」とか、”楽”の感情しかない宗次郎ゆえ、周囲の神経をちょっと逆撫でしてしまうような様子とがめちゃくちゃうまい。
十本刀を呼び寄せる流れで安慈のもとにやって来る場面は、本当にすごいスピードで飛び込んで来て急停止したり、なんていうか行動の特性に「宗次郎なんだな~」と思わせられるところがたくさん。
話題にもなっていますが、剣心との一騎打ちでの志々雄のセリフの再現には驚かされました。
初日はわりと遠めの席で見ていたこともあって、え?今セリフ言ってるの宗次郎だよね?志々雄じゃないよね?って一瞬わからなくなったくらい。
役をまるっと飲み込んで自分のものにしてくタイプの役者さんなのかなぁと感じたり。この先も楽しみです!

比古清十郎/加藤和樹さん

いやちょっと!めちゃくちゃ!めちゃくちゃにかっこいいですねかずきさんの比古!!
あまりにかっこいいもんだから、二幕の京都で戦ってる場面はびっくりして笑いが出てしまった。なんだあのかっこよさ????
剣心にとっての最強の師匠であり、飛天御剣流の奥義を伝授するというその役割、
志々雄と同じでやっぱりものすごく説得力が必要な役だと思うんですが、まーもうそれが完璧で、かっこよくて。。
出番がほぼ二幕からなぶん歌も二幕にぎゅっと集められていますが、特に「比古のヒーロー・ロック」が最高ですよね!?ヒーローってわざわざタイトルに入っとるの心憎いな!ピンチに駆けつけるのは確かにヒーロー以外の何者でもない!
あのちょっと古め、言ってしまえばうっすらダサめのシンセサイザーのイントロで始まる、どこか90年代っぽさのあるロックを、戦いながら朗々と歌い上げる比古清十郎、かっこよすぎるやろ!
歌詞にある「戦ってみちゃどうだ?」のワンフレーズなんかは、すっごくかずきさんの雰囲気と合ってるな~!?になる。
どこかニヒルな、ニヤッと口元に広げる笑顔が良い。立ち姿の大きさとかもいちいち絵になるし。
一緒に見に行った友人たちからも大評判でした。あれはずるい!!!かっこいい!!!

相楽左之助/岐洲匠さん

喧嘩っ早くて義に熱い男!でも真っ直ぐでとにかく気の良いやつ、っていう左之助からっとした気持ちよさが、岐洲くんにとても似合っているな~と思いました。
剣を持たずに拳で戦うキャラクターゆえに、すごく体も鍛えられてて!上半身の厚みが見事。
安慈との戦いソング「二重の極み」がまさかのラップだったのにも初日楽しくなって笑ってました。(我ながらほんとよう笑う客やな!?笑)
あと弥彦とのやりとりが好きです!ガキ扱いしてると見えるけど、その実ちゃんと仲間として扱ってるんだなってわかる空気感なのが好き。
待宵月のシーンで両サイドから二人で屋根に登ってくるところとか、ラストシーンで剣心と薫を残して二人で葵屋に入っていくところとか、
歳は離れてるけどニコイチ感のある二人なのが「少年漫画だな~!」って感じます。良き。

本庄鎌足/奥野壮さん

いやめちゃくちゃ可愛いわ!?ってびっくりした。鎌足、可愛いです!!
背景を全く存じ上げなかったので、初日に鎌足がいきなりガチのバレエを踊りだしたとき、やっぱり楽しくなりすぎて笑ってしまった……あれはまじでびっくりした……
そんなことある???ってなるし、「嫌なやつだけど言ってることはわかる~」っていうそのまんますぎる歌詞でユニゾンする薫・操の歌声に乗って、美しくバレエの動きで躍動する本庄鎌足……いや、どう考えても面白いよ!最高だよ!!!
京都の街に現れてすぐくらい、まだステージ最奥にいるタイミングで念至に向かってウインクしてるのがすごくキュートなのでぜひ確認してみてください!
十本刀の場面で「志々雄様のお側にお使えしたい!」の後に由美とバチバチしてるところもめっちゃ好きです。
いやぁ、にしても「乱弁天」は名曲だよ……手拍子ができてうれしいよ~!(まだ言ってる)

神谷薫/井頭愛海さん

薫殿ーーー!!!ってなってます、めっちゃ、好き~~~!!!
初日は流石にだいぶ緊張されてた?って感じだったのですが、数日ぶりに観劇した最初の土曜日マチネで、すでに舞台姿が見違えていたので本当に驚きました。
舞台上でどう表現すればより届くか、歌声が響くか?っていうことを、日々メキメキと会得していらっしゃるのかなぁという印象です!本当にすごい。
最初の神谷活心流の道場のシーンから、押し出しの強さが全然変わっているし、
恵と歌でやり合うところはより激しく自分の感情を言いたいままに真っ直ぐぶつけている感じで、勢いがとても好ましい。
剣心との心の通わせ方も、ベタッとなりすぎないというか、甘すぎず程よいというか。なによりしっかりと芯の通ったビビッドなヒロイン像で、とても見事だな~と思いました!歌声も伸びやかで明るくてたいへん素敵です!!

巻町操/鈴木梨央さん

操ちゃんも本当に可愛い!なんたって歌もうまいし!
現役高校生って聞いてマジかー!?なってます。若いのにすごい!安定感が抜群にあるように見えます。
豊洲座の高座のところは、声の操り方が上手なだけじゃなく、まだ幕が開いて数分のタイミングなのに初日からとても堂々としてたのがすごくかっこよかったです。
なんともいえないおきゃんな感じというか、跳ねっ返り少女な部分、梨央ちゃんの高めの声質もはまっていてそのまんま操!って感じで、めちゃくちゃ良き!です。いや~可愛い。
薫との共闘、一生懸命で可愛くてふたりともだいすき~!

駒形由美/伶美うららさん

お噂は伺っていましたが!*1ひたすら「美」!!!ってなりました。とにかく美がすごい。
由美の衣装は首元~デコルテがとても大きく開いているデザインですが
うらら様の首の細さと長さと、鎖骨の出方と、その全てが本当に彫刻のようにお美しくて。。
志々雄の一番の理解者として、盲目的に慕っている訳ではなく、どこか一歩線を引いたような大人の寄り添い方がとても魅力的なキャラクターだなと思うのですが、まさにぴったりだなと感じさせられるお姿でした。
宗次郎と同じことを言ってしまうけど、まりおくんの志々雄との並びが良すぎて……いや、志々雄一派最高なんだよ……
並んだ姿がめちゃくちゃに絵になるお二人でした。地獄のシーン、良すぎますよね。。



ここまででお名前、全然書ききれてないですけど……!(なにか不備がありましたらすみません!)
るろ剣とにかく「楽しい」ので、もし迷われてる方がいたら全力でおすすめしたい!損はさせない〜!楽しいよ!!?見においで!!?
やはり少年漫画らしい清涼感というか後味の良さも相まって、終演後に「いいもの見た〜〜〜!」と満足して帰れるタイプの作品だなぁと思います。

全員がシングルキャストで、あの運動量でのロングラン、演じる側は本当に相当ハードだと思うのですが、どうぞ怪我なく全員で無事に千秋楽まで駆け抜けられるよう心から願っております。

次の観劇も楽しみだぁぁー!!!

*1:ヅカオタの人格としては95期ってほんとうになんなんだ!?になりました、すごいなー。。

刀ミュ 真剣乱舞祭2022(らぶフェス)宮城公演初日の感想 ※加州清光と肥前忠広の話しかしてない

*ネタバレ有無はもういいかな!?と思ってタイトルからとっちゃいましたが、ネタバレしています~!

「いやお前次、代々木じゃなかったんかい!」って自分に対してそれはもう全力のツッコミをしたのですが、
色々あって耐えきれずにど平日の宮城、5月25日の初日公演のみ参加の弾丸遠征をして参りました……。*1
結論、行かずにはおれなかったし行かなかったらウルトラ後悔してたな!なので、一片の悔い無しです!反省はしています!(お財布的に)


初日はおそらく円盤にも残らないだろうしディレイも終わってしまったので、忘れたくない~!という気持ちを込めて、不完全ではありますが好きだったところの偏愛記憶を書き残します!
言いたいところだけぎゅっと書いたので、もうバレバレなんですが清光と肥前くんの話題が100%になります!潔いほどに、それ以外の内容が全くないです!ごめんなさい!笑
(なお宮城初日はディレイ配信買ってないので、配信繰り返し見てた人のほうが記憶が正しいと思います、ところどころ怪しいところは目をつむっていただけると幸いです~!)




前説:加州清光には、いつだって会えると嬉しい。

ゲスト刀剣男士は、ゆかりのある他の刀剣男士と一緒に前説を担当するのが恒例であるともうわかっていたので、登場前からドキドキして待ち受けていましたが、
「やっほ~」「主、元気してた?俺は元気ー。」って、どことなく気だるげに出てきてくれた清光を見ただけでもう、胸がいっぱいになった。それはそう。加州清光はいつどこで会っても*2世界一可愛いんだ!!!
元気いっぱいっていうより、なんかアンニュイっていうかちょっぴりダウナーなところが、たまらなく大好きです。声低くてハスキーなのがまた可愛いんじゃよ。あれは刀ミュの清光にしかない可愛さなのよっ!
この時点から、会場で出されている自分のうちわをマメに見ては視線を配ってる様子に泣けてしまいました。
本当にいつだって、客席に100%の愛を向けてくれる、それが清光。。


初日の前説は安定とふたりで、兼さんと堀川くんは音声のみで登場していました。
冒頭、隠れてなかなか出てこない安定に対して「のらねこ にひき」の最初のソロパートをフルで歌いきっちゃう清光。*3
僕の出番だー!とばかりに「扱いにくくてたまーらない!」でウキウキと飛び出してきた安定ですが、
清光から即座に「ちょっと安定。歌いすぎ。」と止められてしまいます。笑

「え!?……あ・つ・か・い・に・く・く・て、……8文字。まだ8文字しか歌ってないよ!?」「歌いすぎ。」
とにかく容赦ない清光、本当に可愛い。。早速それしか言えなくなる!
あんみつの並び自体は音曲祭ぶりなわけですが、お祭りの場という意味では、2017年ぶりという衝撃。
宮城に来られてよかったー!!!に、この時点でなりまくりました。
加州清光に会えたら、いつだって幸せになってしまうんだ。

進化していた肥前くんの「よっちょれよ!」

宮城に来る前に、大阪公演を(うっかり2公演も)配信でがっつりと見ていたのですが、
このお祭り・よさこいパート、大阪では元祖であるところのゲスト刀剣男士のむっちゃん(陸奥守吉行)が、冒頭の「よっちょれよ!」を担当していました。
花道を進んでセンターステージに出てきてからは、むっちゃんと肥前くん二人で交互にセンターの立ち位置前後を交換して、
そのたびに視線を交わしあっては、お互いに何ともいえない充実した表情を浮かべていたのがとても印象的でした。


それを受けての再びのソロ・肥前くんの「よっちょれよ!」なんですが、
冒頭の声の張り方から、愛知で見ていた印象とは大きく変わっていてすごくびっくりしました。
より雄々しく、自信たっぷりに、なんかこう「やったるぜ!!!」って感じの気概が溢れまくっているようで。
眼差しはより凛々しくて、本当に堂々としていて。
「うわぁ、これはまた爆速で一回り大きくなっておられるな!?」と思わず感動しました。経験によりリアルタイムで役者が育っている……!?になり、それを目撃出来たことに思わず心が熱くなってしまった。
むっちゃんとのダブルセンターの経験によって、この曲で表現したい気持ちや伝えたい感情が、よりクリアになったのかな?と。
いや~~~~、宮城のよさこい肥前くん、まっじでかっこよかったです。

あとかっこいいだけじゃなくて、とくに足運びが本当に綺麗なんですよね!?花道進んでくるところ、配信画面だとつい足元を凝視しちゃいます。
他の曲でも思うことなのですが、肥前くんは曲想を捉えたダンス/踊りが本当にうまい……。
この曲・このメロディだからこういう体の使い方をする、っていう理由が伝わってくるというか、振りに歌詞がそのまま乗って目に見えるような気持ちになる瞬間がたくさんあります。ウッ。。(あまりにも「好」)(※この話長くなるので先に行きます)

MCコーナーの肥前くん(大当たり回!)

まずは「お前が知ってる」のあとの江水チームMCタイム!
どこかで回収できたらいいな~って思ってたのですが、当たれて本当に嬉しかった肥前くんの宴会芸!
「じゃ今日は……肥前~。」ってニヤッとした兼さんから呼び出されたのに対し、けっ、みたいなリアクションはしながら比較的素直に歩み出る肥前くん。
兼さんからの「なんだよ素直じゃねえか!」みたいなからかいに対しては、
むすっとしながらも「……約束したからな。」とだけ返す肥前くん。
うわ~これ、大阪楽のむっちゃんのご挨拶のことだぁ~~!?って客席ではめちゃくちゃテンションが上がってしまうわけなんですが、
そんな尊みあふるるこちらの感情はそっちのけな兼さん・大包平からの追求が、めちゃくちゃしつこくて面白かったですw
「約束~?誰とだよ~!」「いいんだよ」「誰とだ?」「誰だよ~!」「いいんだよ!!!」で、押し切る&振り切る肥前くんでした。笑

そのあと割とすっと始めた感じの宴会芸の中身は謎掛けで、

「この土地の名物とかけまして、宴会芸に引っ張り出された俺と解きます。」
その心は?「たた、ずんだ。」

だったと思う。たぶん。佇んでる肥前くん、可愛いね!!!!!(※結局何しても可愛いって言うねこの人)

MCでいうと、「約束の空」後の村正との絡みでは、
「おや?あんなところに、仙台名物、牛タンがありますよ~!」→「それは食うしかねえな!」だったような記憶なんですけど、ちゃんとメモしてなかったのであやふや!!
その前の村正にまとわりつかれるところは「huhuhuhuやめろ!」だったような……?(大阪とおんなじだ~って思った記憶があるんですが、これも嘘かもしれない)

日替わりゲストパート:「解けない魔法」にこみ上げる万感

我らが総隊長のゲスト出陣なので、もう間違いなくこの歌だろうなぁとは思っていたわけですが。
ストリングスアレンジががっつりと入っている単騎バージョンのイントロが流れてきたのを聞いた時、「ああ~~~……」ってなりました。
このイントロを聞くと、どうしてもなんとも言えない切なさがこみ上げてきます。
通常版のイントロにつながる直前のラストの数音の降り方に、胸がぎゅっとなる。


清光の歌う「解けない魔法」からは、他の何からも受け取れない、特別な贈り物を受け取っているような感覚がずっとあります。
どうしてかわからないんだけど、永遠と一瞬、相反するそんな事象を、同時に目撃している気持ちになるのですよね。
りゅうじくんの役者としての表現力と、楽曲が持つ魅力が数年の間に濃く組み合わさって、どんどんと熟成されているのを強く感じます。

ずっと続くものは決してない、それはわかっている。でも、続いてほしいと永遠を願うことはできる。
今はただ、ここで過ごせるこの瞬間を、どこまでも慈しみたい。

その眼差しから、ダンスの振りのひとつひとつから、歌う声から。
りゅうじくんの清光が届けてくれるものが、変わらず本当に大好きです。
刀ミュの加州清光存在そのものが「愛」なんだよなって、改めて噛み締めました。
赤いペンライトを振れて幸せでした。
こんなのどうしたって、「無理して来てよかったな~~!!!」に、ならざるを得ない。。(こうして無理をしがちオタクは偏った成功体験を積んでいくのであった。)


りゅうじくんは自らがボーカルを務めるバンドプロジェクトの全国ツアーのガチ真っ最中のタイミングで、
宮城の前の週にもそちらでライブがあり、水・木のらぶフェス宮城公演を終えたあとはなんと翌日に札幌でバンドのライブを2Days……という、ちょっと信じられないほどの超・過密スケジュールになっていたのですが、
そんな中にも出演を決めてくれたこと、本当に感謝の気持ちしかありません。。
会える機会を作ってくれることはどうしたってありがたくて、最終的に「ありがとう」しか言えなくなってしまう。


そのあとのmistakeは座席位置的にちょうど清光だけが全然見えねえ!(悲)になりがちだったんですが、
清光「Girl 窓の外は星屑の街」
小狐丸「もうタワーの灯りも消える頃さ」

ここの出だしがオリジナルの歌割りで披露されてたのが、も~~~~!ハチャメチャに嬉しかったです。。
清光の衣装は単騎のやつなんだけど、ここ小狐丸と今剣が阿津賀志本公演の2016年のmistakeコートつき衣装なのも、懐かしくてあかーん!なってます。嬉しいよね。。
2016年に動揺のあまりidに刻んでしまった曲なので、はー、やっぱ一生ついてく!ってなりました。好きィィィ!!!涙

えおえおあ:「この感じ、懐かしいですねぇ~!」本当にね~!涙

内番衣装でのえおえおあタイム。
冒頭で下手後方ミニステージにゲスト刀剣男士がやってくるのはもうわかっていたので、清光の登場を待ち構えていたわけですが、
ここからの三条の二振りとのやりとりがも~~~、激エモ注意報でした。
なんなんだろうか、この「見たかったものが見れた」時の、特別な幸せ感は!?

当日にレポしたツイートにぎゅっとまとまってるのでそのまま貼るんですが、


本当に、幕末メンツといるときとも、ちょっと違う清光なんだよねぇぇ!!!
team三条with加州清光のときって、やっぱり圧倒的に一振りだけ若い刀なわけで、みんなから「可愛がられる」or「全員に振り回される」というポジションな清光……

ちょっと甘えた感じというか、年下感のあるわがままな雰囲気をぐいっと出してくるので、その可愛さを久しぶりに浴びて、本当~にやられました。(前回のこのパターンのチャンスは音曲祭カテコでの三日月との絡みでしたね。)
「この感じ、懐かしいですねぇ!」って何回か繰り返してた小狐丸に「わかるよ~~!!!」って心の中で爆音でレスした。いやほんと、わかりすぎるよ。
他にもいまつるちゃんには「なんかさっき、すごく北に行きたがってる人(※榎本武揚氏)から『可愛い』とか言われてたから、今剣はやっちゃ、だめ~。」って意地悪を言ったりしてて。
可愛いポジションは俺のもの~!ってしてる感じだった。カワヨーーー!!!涙


内番衣装で踊る清光は、お祭りぶりなので2017ぶり!に見たんですけど、えおえおあでいうと2016年ぶりなわけでして。
もーーーー!本当に可愛かったよーーーーー!!!!そりゃそうなんだけど、とにかく可愛いんだよ!!!あの振り付け、内番清光に本当に似合う!!!
歌が始まってすぐは、小狐丸とふたりでミニステージの上でなんかちょっかいかけあってふざけてました。
具体的に何をやってるのかははっきりおぼえてないんですが「わちゃって可愛かった」という記憶だけが残っている。
主に清光が鍬つかってなんかしらのいたずらをやって「あっごめんごめん」みたいな、なんとなーくそんな雰囲気だったような……?ここは中の人同士の仲の良さも滲み出てるひとときでした。


そして清光がメインステージに移動したのちには!なんとそこに入れ替わりで肥前くんがやってくるっていう!下手後方ミニステ、まじでどこまでパワースポットなの!?

肥前くんの内番、なんであんなに可愛いんだろう……考えても答えは出ないわけなんですが……可愛かった。。。(それしか言えねえ)(こいつさっきから可愛いしか言ってなくないか?)
清光のたすき掛けのお着物とはまた全然違うベクトルの可愛さなんですよね。だってあのパーカーは、ずるくない~~!??ずるいって言われても困るよねー!?笑

”まずは右手でEを作る”様子とか、”回して上にあげてA”!の様子とかは、まぁ本当に「いちおうやってやる」感というか、、言われたから仕方なくやってまーす的な空気感で、とことん脱力してる肥前くん。

それなのに!?ねぇどうして!?
どうしてそこからあんな最後だけ爆踊りなん???って、また新鮮にしんどくなりました。
ねぇなんか鬱憤でも晴らしとる?くらい、急にのびやかに全身を弾ませて踊り狂う肥前くん。。バネがすごいんじゃ~可愛いんじゃ~!!!代々木で見れるの楽しみだな~!!!
というか配信だとえおえおあの肥前くん、なぜかほとんど映らないんですよね!気配は感じる、くらいの撮れ高の少なさじゃない!?
現地だと後半はガチで下手後方ミニステしか見てないので、未だにどこで誰が何をやってるのかよくわかってません。。笑


えおえおあのラストは、メインステージに集まる刀の中に清光が参加していて、
立ち位置がまだ定まってなかったか、それとも予定よりももっと真ん中においでよ!だったのか、
いまつるちゃん・蜂須賀あたりにわちゃ~っと絡まれて内側にぎゅう!と押し込まれる感じになってて、これもまた、ものすごく可愛かったです。。
可愛い以外に使える日本語ないんだろうか、わたしよ。。

問わず語り~カテコ:思いがけぬ大事件

ラストの「問わず語り」では、後半で清光がちょうど目の前にあたる位置のメインステージにいてくれる時間帯があったので、とにかくずっとオペラで見まくりました。ひたすらに幸せだった……。
そしてやっぱり、りゅうじくんの清光の、感情の表現が好き。佇まいから伝わってくる感情というか。
物語性を身にまとうのが本当に上手いなってしみじみしてしまった。

清光がメインステージ中央付近に移動したタイミングで、今剣がすれ違いざまに、ほんのちょっとだけ清光にぎゅっとくっついたりしてて、それを受けた清光はとても優しいほほえみを返していて。
阿津賀志メンバーの絆、どうしたって泣けてしまうんよ。。初日にしゅんやくんがTwitterに投稿してた写真、あれ見て泣いたよね。。
そして歌の終わり頃には比較的近い位置に清光と肥前くんがいるので、
「やった!?戦闘衣装のふたりが同時に見れるのめちゃくちゃレアやん!!!」の気持ちで再びオペラでガン見していました。(※が、そのレアは数分後にあっけなくひっくり返されるのであった。)


いや~~~~、、からの、問題のカテコ~~~!!!
あんまりちゃんと把握してなかったんだけど、ゲスト刀剣男士がいつ挨拶担当するかって土地による感じなんですかね!?
愛知も大阪も、ゲストが千秋楽で挨拶担当してましたけど、宮城はまさかの初日だったんですよね。。*4


いまつるちゃんから指名をうけた清光が、センターに歩み出てご挨拶をしてくれるタイム。
本当に記憶障害?ってなったのでその前半部分が飛んじゃってるのですが。

だって清光がさぁ、急にさぁ、「……肥前。こっち来て~」って呼んだんだよう。
その瞬間、えっいま何がおきた???なって、まじで頭がフリーズしました。
すぐに続けて「後は~、日向!」って日向くんを指名したので「アッなるほど」って清光の意図を理解できたんですが、本当にびっくりした。。
だって清光の隣に肥前くんが、アッ並んだ、並んで、並んでる……???(※処理落ちにつきしばらくお待ちください)

その後豊前江と大包平も呼び出され、要は「……赤、(この本丸に)増え過ぎじゃない!?」っていう清光の戸惑いが爆発するコーナーだったわけなんですが、
赤の仲間たちに取り囲まれる清光、そもそも隣にいる肥前くん。
これは夢か?と真剣に思いました。(※受け止めきれない事象のことは、基本「夢」で処理すればいいと思っている様子)

呼ばれて隣に来た日向くんが拾ったボタンを「落ちてた」「ボタンどうぞ…笑」ってなぜか清光に渡そうとして断られてたり(たけあきさんの落とし物だったらしいw)、ぎゅっとなったカオスで本当~に可愛かった!
その後、うまくできたら赤だって認めてあげる!的な清光からの無茶振りで大包平の俳句披露になったんですが、
大包平を担当者に指名した後の清光は、その他の赤の仲間たちに「もう戻ってダイジョブだよ~」みたく、立ち位置に戻るように促します。

そこで私が見た光景は!
清光:肥前くんの肩あたりに手を添えて「戻ろうね、はいそっちね~」みたく促す
肥前くん:「なんだよ、戻んのかよ?」みたくちょっと後ろを振り返りながら上手に移動する
……こういうのがさぁ!見られるのがさぁ!真剣乱舞祭なんだよォ~~~!!!なって、本気で拝みました。夢のドリームを、本当にありがとうございました。

肝心の大包平のここで一句!は、
「加州から 俳句の挑戦 受けて立とう!」的な感じだったと記憶してるのですが、記憶があてならん!笑
「加州、どうだ!?」と渾身の力を込めて振り返る大包平に、清光は「……いい。」ってご満悦の笑顔でOKをだしていました!
このあとの清光、これからも(?この後も?)やるからね!的な事を言ってまとめてたので、赤の刀たちは今後継続的に清光からの赤仲間テストを受けることになるんだと思います。笑


この日、終演がだいぶ押してほぼ20:45終了だったんですが、
仮に仙台駅からの東京行き最終新幹線に乗るならば早めに抜けて20:30退出しないと間に合わない……という状況だったんですよね。
最初は当日中に帰る想定だったんですが流石に遠征を決めたのが急すぎて、帰りの仙台駅行きタクシー予約はすでに締め切られており。
「しゃあない、もう翌朝帰るか~!」と思ってホテルを取って臨んだのですが、結果的に泊まりのスケジュールにしてよかったなと、心から思いました。。
仮にこのカテコが見られなかったらと思うと……!?危ないところだった!!!

だって、ここの個人的偏愛の二振りががっつり絡むとは、まさか思ってなかったんだよ。
肥前。」って呼ぶ清光が見られちゃったよ。。ありがとう宮城ーー!!!
宮城まで行くのに1公演しか見られないのか~ってちょっと残念ではあったのですが、結果的には初日に入れてとてもラッキーでした。野生の勘で己が見るべき公演を引き当ててしまった。



元はと言えば、配信でみていた大阪公演のセトリ大シャッフルにおののき、
「どうやら2会場同じセトリだ!つまり乗るしかない!このビッグウェーブに……!?」みたいな勢いで、たぶん前週の月曜?とかに翌週水曜の宮城遠征を決めた気がします。我ながら本当にひどい。笑
Real LoveとBlackoutの曲交換には、本気で刀ミュくんご乱心セトリだなって思って、先にTwitterでネタバレ知った時わらうしかなかったです。あれは「そうはならんやろ」すぎるでしょ!?
村正派推しの皆さん、大変な目に遭われたと思いますが本当にお疲れ様でした!!!
おふたりともさすがの表現力で、2曲ともあっけにとられてしまったよ~。。あんなのもはや新曲じゃんねぇ!?
あれが見られたという意味でも宮城に行って本当に良かったです!


色々予定が狂い倒している感じですが、今度こそ!笑
次は代々木なので、あと1ヶ月弱ワクワクして待とうと思いますー!*5
福岡でセトリがどう変わってるのか楽しみだぁぁ!(配信で広島公演を見ようと思っています!まんばちゃーん)

宮城公演対戦ありがとうございました!!!

※これあとで気づいたんですが、Shuan(肥前くん)をつけたつもりが、Red(清光)をつけてる気がしますね。まぁどっちも正解っ!笑

*1:9時-13時勤務→14時台の新幹線で仙台へ→18時公演に参加→ホテル泊→翌朝7:20くらいの新幹線で東京へ帰還→そのまま8時間フルタイム勤務プラス残業しました。なにしてんの???

*2:誇張じゃなく一番いろんな場所で会った刀剣男士が清光だなと気づいて思わず数えてしまいました。今はなきアイア2.5シアタートーキョーに始まり、赤坂ACTシアターキャナルシティ劇場、サンケイホールブリーゼ両国国技館、虹橋芸術中心、天王洲銀河劇場日本武道館さいたまスーパーアリーナ幕張メッセイベントホール、TDCホール、東京ガーデンシアター、セキスイハイムスーパーアリーナ、13箇所!これでも全然出陣箇所の全部じゃないのが、本当にすごいよ清光。

*3:ここ、もしかして安定がうちあわせよりも遅く出てきた?ってちょっと思ってます。「青い瞳のたれ目」あたりで清光が若干素笑いしてたというか「え、まじ?」みたいな雰囲気感じたんだよなぁ。気のせいかもしれないけど!とにかく可愛かった。

*4:これ、よく考えたら宮城が村正のラストの地だったゆえでしたね。なので千秋楽のご挨拶は村正→宮城限定ゲストは清光、ってパターンだったんだなぁと後からようやく理解しました。

*5:この裏で、現在進行系でるろ剣京都編 in ステアラに通っている女です。週末までにそっちの感想も書きたいんだけどどうして私は一人しかいないんだ???

【ネタバレあり】刀ミュ 真剣乱舞祭2022(らぶフェス)初見 in 愛知公演の感想という名の、衝動なぐり書き

ミュージカル『刀剣乱舞』真剣乱舞祭2022!開幕しましたね!
福井初日から1週間のあいだ、もはやどくさいスイッチを思わせるレベルのTwitterミュート運用でネタバレ被弾0で乗り切り、
全ツ2箇所目となる愛知・日本ガイシホールにて5月15日無事にマチソワ観劇してきました。

本当はがっつり構成を考えてから書きたいのですがそうするとこの先の観劇鬼スケジュールの都合上、着手が7月になってしまいそうなので!
荒ぶる感情の波動だけを記録する目的で、感想を殴り書きします!なのでレポではありません!!!
あなぐま個人の胸の内に去来したよしなしごとの備忘録ですのでそれでもよろしければ!




そうだ、これは「真剣乱舞祭」だったのだ

とにかくまずはその一言!これが刀ミュの「祭」なのだ。

心覚を踏襲した、小面をつけた童女のような存在と、水心子正秀の邂逅から、真剣乱舞祭2022は幕を開けます。
夢とうつつの間を彷徨うかのような水心子は、その名を呼ぶ鶴丸国永の声ではっと我に返ります。
このあたりの描写の詳細は、別途改めて掘り下げるとして!
まずこの導入からして、刀ミュにおける<祭>の扱い方のブレのなさを感じました。
2018の「弔い、ですか?」の堀川くんと巴形薙刀のやりとりを思い出すようで。
その後に刀剣男士全員によって「神送り」と歌われる、静かで荘厳な”祀り”を思わせる歌。ここはどちらかというと、神々しさが歌合2019に近い印象を与える演出でした。


ここまでで十分、「う~~ん、真剣乱舞祭!!!」という気持ちですでに痺れていたのですが、そのあとに来ましたね。ハレハレ祭り。
正直、歌われるかなぁと想像してはいたのです。いまこのタイミングで、季節をずらしてでも敢えて真剣乱舞祭をやるのだ!と刀ミュが決めた意味を考えた時に、真っ先に思い浮かんだことがこれでした。


だけどね、いくら想像してはいてもね。実際に会場に流れた瞬間、もう感極まって。ぶわっと涙が出てきて。
あの冬と同じように、白を基調とした揃いの衣装を身に着けた刀剣男士のみんなが、力強く舞い踊る。
2018年の祭りを知っている子も知らない子も一緒になって、ひとつの本丸の中で熱をわけあって、心を合わせて。
背中に己の紋を誇らしげに背負って、一人ひとりが艶やかに雄々しく、曲名のとおりの晴れ晴れとした表情で命そのものの躍動をする。


そこから怒涛の勢いで繰り出されるのは、2018年の<東西祭り対決>で披露された、日本各地のお祭りの曲たち。
ここもそのまま同じフォーマットでやるのだとは全く想像してなかったので、祇園祭が始まって息を呑みました。
あの大好きだった曲を、こうしてまた現地で聞けているという喜びが、この目で目撃出来ているのだという幸せが、身の内に爆発しそうにこみ上げました。
そうだよね、だって<祭り>をやるって言ったんだもんね……!


そうして祭り曲が披露されたのち、ライブパートへと繋ぐ流れも、2018の演出をそのまま思い起こさせるものでした。
平将門と小面との間に立ち、自分の居場所を見失いそうな水心子は、抱く感情こそ異なっているけれども、存在としてはあのとき「楽しいな!」と笑っていた巴さんのようであり、
そんな水心子を再び”こちら側”に引き戻しに現れる鶴丸国永は、「そう、それが祭りだ!」と雄々しく宣言した、かつての三日月宗近のようであり。

ここが、ミュージカル『刀剣乱舞』の現在地

ずっと前を向いて、高みを目指して駆け抜けてきた刀ミュという演目。
かつてその躍進は真剣乱舞祭2018を成功させ、紅白歌合戦への出陣を叶え、
2.5次元の枠組みを新たな方向で乗り越えるような源氏双騎を生み出し、
和の文化とより深く融合した歌合乱舞狂乱を実現させてきました。

そこに直撃した、コロナ禍の混乱。
前を向こうにも、先へ進もうにも、一切の自由が奪われたような期間が続き、
その中で灯せた明かりを懸命に手繰り寄せるように、繋いできたこの2年間です。


今回の真剣乱舞祭2022について私は、これはミュージカル『刀剣乱舞』の”誇りを湛えた現在地の宣言”なのだと、思いました。
直線上に先に進み続けることだけが全てではないのだと。
今いる地点に、より深く根を張って、同心円状に周囲に枝を伸ばすように、その世界を織り上げて広げていくこともできるのだと。

かつて積み重ねてきた思い出たちを改めて丁寧に磨き上げ、そこから生み出す新しい光を客席と共有したい。
たとえ困難があろうとも、今という時間を生きる喜びを、祭りという形でしっかりと刻み込みたい。
そんな願いが込められた演目なのだ、そう思いました。


稽古期間も、おそらくは相変わらずたくさんの制約に縛られていることと思います。
私達が買うチケット代が大きく値上がりしたことからも、そこにある困難さは容易にうかがい知ることができます。
本当に沢山の壁を乗り越えなければ叶えられない上演だったと思うのですが、
それでもこうして華々しく、眩しいほどの光に満ちた演目を届けてくれたことに、やっぱり感謝しかありません。
毎回、もはや馬鹿の一つ覚えのように言ってしまうけど、私はやっぱり、刀ミュが好き!
声は出せない2時間半の中、心の内で目一杯そう叫びました。愛してる!!!



ここまでが、とりあえず初見のまじめな感動として、短くてもどうしても書き残したかった内容です。

以下はもっと個人的な「好」の感情の暴れを書きますので、人格が変わります。
端的に言うと詐欺レベルでめちゃくちゃIQが下がりますのでご注意ください。笑
覚悟を決めてスクロールしてね!!!




個人的な患い:肥前忠広くんは今すぐ職員室に来てください

「……仮に肥前くんを職員室に呼んだところで、ぜって~~~来ね~~~!」と想像しただけで、たまらん……なってまた萌えた(※ばかなのではないだろうか?)。*1
やばくないですか?なにがやばいって、さっきまでの文章との温度差。
以降これでいきますからね!よろしくお願いします!!!


刀ミュの肥前忠広、もうホントにだめ。どうやっても無理。助からない!!!
私、自分でこのうわ言にものすごい確信めいた既視感があって、
これは方向性としては完全にかの加州清光への敗北とおんなじですね……三日月宗近とはちょっとちがうんだ……(そうなんだ?)(そうなのよ)
数年おきに私は刀ミュの刀剣男士に一撃重傷を食らわせられる羽目になる。
肥前くん、ちょっとまじで意味がわからなくて、クリティカルヒットのその先へ!って感じです。それは一体どこなの???
今年のチケットは完全に肥前くんのためにとっているわけなんですが、もうその決断に関してあっぱれだよ私。一片の悔い無しだよ!おかげでありえん詰め込みスケジュールが6月末にやってくるんだけど!!!

以下肥前忠広を患っているさまを駆け足でまとめます。

患い①「よっちょれよ!!!」

ハレハレ祭りのあのお祭り衣装で踊る肥前くん、もちろんそれだけでも~~~十分に「!!!……!!!…!!(※「好」の波状攻撃を受ける様)」って感じなんですが、
あの、お祭り曲の中の、あの、、よさこいが……よさこい……(砂になって消えていく)


わたし2018の西軍のよさこい、ほんっっっっっっとに好きだったんですよ、西軍のお祭りパートの中で一番すきで、
あの「坊さんかんざし買うを見た」でのけぞる三日月宗近に毎度「アアアアアアア」ってなり続けていたんですけど、

よさこいの冒頭、「よっちょれよ!!!」肥前くんだったところで、いったんそこまでの記憶全部スパーーーン!飛びました。
いやほんと、油断もいいとこ。
なんせその前の曲が、雪まつり→エイサーに変わっていたので!!!よさこいがそのまま披露されるって思ってなかったんだな!!!
エイサーを聞いて「うわぁ新曲だ~!そうか~2018は冬だったもんね、今は雪ってタイミングじゃないし、季節&地域を広げたのね~!新曲もあるんだ、うわ~!」って、私は呑気に思っていたのよ!
そしたらさぁぁ、肥前くんが、「よっちょれよ!!!!」って、
肥前くんがーーーーー!!!がーーー!!!!

……だっていや、あの、土佐の刀な。……そうでした。
この油断がひどい2022でした。そらそうやろがい。むしろなんで予想してなかったんかい。
衝撃のあまり例によってペンライトも振れず、かといってオペラも構えられず、
よさこいが花道に出てくるあたりまでは本当にただただ硬直して、あばばば……になりました。ウワー思い返しても動悸がします。(だいじょうぶ?)(ではない)
もうほんとだめだ……どうしたらいいかわからないよ……


これは余談ですが、私には普段インターネットで便宜上「マブ」と呼んでいる付き合い10年目の舞台オタクの友人がいるのですが、
その某マブが愛知夜公演のチケットを譲ってくれて、それがなんとセンステ正面位置のアリーナ席だったんですね。
とんでもねえ良席をまわしてくれたその理由は、「あのよさこいを見てだめになるあなぐまを見てオモロ!になりたかったから」だったそうで、本当~~に。その通りになりました。
マチネを2階スタンドで見てた時から「夜あそこに座ったらわたし死ぬのでは?」ってなった。そうなった。
だって、真正面から、よさこいでこちらに向かって進んでくる肥前くん……そんな……アリーナ席はこの1回きりであとは全部スタンドなんですが、もう全ッ然悔いないです……サンキューマブ!!!

患い②肥前忠広 in「約束の空」

いやもうほんとさ!!!???待って!!!??嘘でしょ!??
今回のライブ曲はけっこう元のチームがバラされてるのですが(いない刀剣男士も多いので)、それゆえ初見だと誰がいるか本当にわからなくて!
イントロで「うわ~~~約束の空だ!」ってテンションあがって葵咲本紀あたりの色をつけねば!ってこんちゃんペンラを手にとったんですけど、
嘘、まって肥前くんいる!!?って気づいてもうそこから大パニック。

だってあの!あの振り付けだよ!!!!本山先生節が炸裂しているとしか言いようのないあのキュートでリズミカルなアイドルダンス!!!
めちゃくちゃに好きな2部曲で、葵咲本紀の時は鶴丸かっこいい国永さんにやられまくっていたわけなんですが、
まって、並んどる

鶴丸国永→肥前忠広の並びでメインステージ上手にてサビを踊られて、ここでも無事に死亡しました。
振り付けの中でも「刻み込んだ約束を」の動きと、「promise me promise you たったひとつ」の動きが特に好きすぎてNGなんですけど(なにがだよ)、
そこを並んで踊ってたからね、その二振りが……え、なにこれ?夢?
まごうことなきあんたの夢叶えたろかスペシャルだった。信じられん。
好きすぎて2019年に浴びるように見ていたあの振り付け、肥前くんが踊るとまた見たことのない体の使い方があってもうギャーッてなります。ギャーッって。くるしい……今すぐにまた見たい……。
水観劇以来自分の中では当たり前すぎてちゃんと言及するのを忘れてたんですが、
肥前くんは本当にダンスが上手いです。とても上手い。
まだ見たことない人は是非現地or配信で要チェケラ!なのです、本当に体の使い方が素晴らしいので。。全身のスタイルバランスもめちゃくちゃよくて……
本山先生の思い描く理想のアイドルダンスの踊り手なのでは?みたく思ってるところある。
Twitterでは何回も言ったんだけど、全ての拍が可視化される印象を受けます。
甘くなって曖昧に流れてしまうところがなくて、半拍分まで振りが全てきっちり目に見えてなおかつ美しく、キメの瞬間の決まり方の精度がえぐい。
全刀ミュのオタクに是非刮目いただきたい。特に加州清光のダンスが好きなオタクは絶対に注目してください!!!


患い③内番・爆踊り・えおえおあ → ETERNAL FRAME

「内番衣装でえおえおあ!」っていうのはそれこそそのまんま2016の踏襲なわけで、ここでも文脈を思って懐かしくなり、かつ久々に現地でえおえおあできる~~!って喜びがこみ上げるわけなのですが、
ブロマイド出たことでわかってはいるものの、
肥前忠広の内番衣装なにあれかわいすぎない????

ゲームの内番静止画を見て「パーカーまじかわいい……スニーカーの踵ふんでるまじかわいい……」てニヤニヤして楽しみにしてたんですけど、
ねえ待って!それがいらっしゃいます!!!実際に!目の前に!!!ウワァーーーー2.5次元楽しい!!!??ってなった(おもわず初心を思い出す)。


えおえおあの冒頭、肥前くんは鍬をもってメインステージ上手側で黙々と土を耕してるんですが、後半になると下手側のミニステージにやってきます。
そこでさ~~~、えおえおあ、するんだけどさ~~~!(それはそう)
振り付け指南のところは手だけでふわ~っとそれなりにテキトーにやってるかんじ。んで途中でしゃがみこみます。それがまたヤンキーじみていてあら大変、めちゃくちゃにかわいい。
大サビに入って「魔法の言葉が響いてゆく~♪」手を左右に振るところは、再びすごくてきと~なかんじで、やる気なくふわ~んだら~ん、と腕を動かすだけ、って感じなんですが、
サビ後半に入って立ち上がった瞬間、まじで突然の爆踊り・えおえおあが始まるのでここでも命がなくなった。緩急に振り落とされた。リズミカルがすぎる。スタイルがよすぎる。躍動するえおえおあ。
「あんな可愛いことある?!なに!!???」ってなる。ほんとうに可愛くて可愛いしかいえないし、ほんとうに急な爆踊りなので、直前までのしゃがみこみとの温度差でどうしたってあんなの寝込む。躍動するえおえおあ……(患)


そのあと心覚のウルトラ可愛いペンライト曲である「ETERNAL FRAME」が来るんですが、これも、も~~~……なに……
サビの後半かな?メインステージに来た肥前くん、これまた爆踊りなさってました。
キレが凄まじくて何ならパーカーから腹チラする勢いで、ちょ~~~負けん気たっぷりに踊ってて……正視してたら視神経が焼き尽くされそうなった、記憶が砂になる……待っていなくならないで記憶……
みんなでサビでやるペンライトを横にブンブン振る動きも絶妙にやる気ないっていうか、わかりやすく元気いっぱい!みたいな感じとは当然違っていて、つまりはキャラが完璧なのですよ。
あれだけダンスが得意な様子がありながらも、ちゃんと同時に肥前忠広なんだよッ!!!
ペンライトをめっちゃブンブン振るけど同時になんとなく適当さがあって、もうとにかく理解が追いつかないくらい可愛い。


ここまで書きなぐって思ったけど、アー、刀剣男士を見ていてこうやって「可愛い」の語彙が使いつくされるのは、やっぱり加州清光を見ている時以来だな!!!って実感して戦いています。
IQがひどく急降下する文章も久しぶりだなー!!!鶴丸かっこいい国永さんの時のほうがまだ心に余裕があった感じする。鶴丸はかっこよかったもんな!
そうか……つまり、この方向性の「可愛い」によわいんか、私……(突如として深まる自己理解)
つまりそれくらいやべえよ肥前くん!!!完敗です。クリティカルヒットの向こう側には、本当に何があるんでしょうか……?


……すみません、前半と後半の人格の温度差で、それこそ風邪ひきませんでした???どうしてこうなるんだろう???
まじめな話もネジが吹っ飛んだ話ももっとたくさん書きたいけど!
(号泣必至だった愛知千秋楽のカテコご挨拶なんかはとてもじゃないけど短時間じゃ文章に感情を乗せられなかったので、書くのを見送っています!)

わたくし明日からしばらくるろ剣 in ステアラの民ゆえ、初見の衝動をほぼ推敲無しで叩きつけました!!!乱文失礼いたしましたーー!!!
アッ残りのらぶフェスは代々木で見ます!!!

愛知公演対戦ありがとうございました!!!(何と戦ったんだ???)

*1:最初書いた時は職員室来ないって思ったけど今はやっぱりちゃんと来る気がする……ってわざわざ脚注でそれ、書き足す!?笑

刀ミュ 江水散花雪 感想 / 歴史を守るその意味は~和泉守兼定と肥前忠広を中心に~

江水散花雪感想、2記事目を書きました!
この記事では、江水散花雪とはどういうテーマの作品だったのか?というところと、
極になって帰ってきた兼さんのその成長および、本作でわたしが目を離せなかった刀剣男士・肥前忠広について書きました。
まんばちゃんと大包平について書いた1記事目はこちらから。
anagmaram.hatenablog.com


「歴史を守る意味」をシンプルに問い直す作品

江水散花雪、大筋としてはとてもわかりやすい物語だったように感じました。
複雑性は薄いというか、観念的な部分もあまりなかったというか。
設定上の謎が残される部分は多々あれど、直球ストレートが投げ込まれてきたな!?という印象が強かったです。
なんせ、ここ最近の刀ミュの流れで言いますとね!久しぶりに本公演に三日月宗近の影がよぎらなかったので!ちょっとホッとしたところがあるというか、個人的にはそれだけでだいぶ見やすかったのです。笑
三日月推しには心労がありすぎるんよ。心覚とか心覚とか……あの作品のこと、私は未だに消化ができていません!
私の受け取り方が極端すぎるかもしれないけど、江水には見ながらドキドキして疑心暗鬼になったりする必要がなかったといいますか……(三日月推しの心労を、どうぞお察しください。。笑)
少年漫画感というか、ジャンプ感?努力・友情・勝利!が久しぶりにすごく強い作品だったなぁと思います。
それももちろん受け取り方は人によると思いますが、個人的にはからっとしていて勢いがあって、大好きでした!


今回の主題は、「そもそも、刀剣男士はなぜ歴史を守らなければならないのか」という任務の意義に向き合うことだったように思います。
「もしも本来出会うはずのない吉田松陰井伊直弼が出会い、友情を育んだら?」のIfから始まった、正史とは異なる歴史の歩み。
その小さなIfから生み出された新たな流れは、こぶし大の雪玉が急な坂をひとりでに転がり落ちていく間に巨大な塊に変わっていくかのように、いつの間にかどんどんと歴史全体においても大きな変化を生み出してしまう。
仮に歴史が守られなかった場合、その世界では何が起きてしまうのか……その様子が物語の中で大変わかりやすく提示されたために、刀剣男士たちの任務の重要性や意義が浮き彫りになったように感じました。


歴史が改変されてしまうと、失われる多くの物事がある。
代わりに生まれる良い変化もあるけれども、しかしそれは積もり積もって結局は「今」を否定することになる。
今回の部隊が遭遇した幕末の世界では、徳川家の将軍後継者問題も起きず、安政の大獄も、桜田門外の変も起きませんでした。
その結果として大政奉還明治維新に相当する出来事が数十年前倒しで起き、戊辰戦争にあたる内戦もなく、改革はすべてが平和裏に進められました。
確かにその歴史は素晴らしいものだったかもしれないけれど、そのまま進んでしまえば、その先にあるのは今とは全く異なった世界になることはどうしたって明白。
歴史改変を許してしまえば、今立っている自分たちの立ち位置が危うくなる。存在そのもの、実在を揺らがす事態になる。だからこそ、歴史は守られなければならない。
それは自分たちの今と未来を守るための戦いなのだと、刀剣男士たちの任務そのものについて、今回そんなふうに理解しました。


そして想像ですが、本作で主が出陣前の山姥切国広に託したのは、以下のような内容だったのではないでしょうか。
「今大包平たちが向かっている遠征任務先の幕末の様子が、どうもおかしい。
このままだと歴史改変が手のつけられないレベルまで進み、最悪、放棄された世界になってしまうかもしれない。
……が、裏返せばそれは歴史の重要性に向き合う経験を積める、またとない機会にもなるだろう。
だからギリギリまで手を出さずに彼らを見守っておいてほしい。万一危険が及んだ際には確実に退避ができるよう、サポートしてほしい」
こんな感じの無茶振りだったんじゃないでしょうか。
放棄された世界の可能性を睨みながら出陣を続けることが主の意図だと事前に伝われば、きっと余計な反発もあるだろうからと、山姥切は「俺が勝手にやったことにする」と告げて出陣したのだと思います。

危険と隣り合わせではありながらも、放棄された世界の恐ろしさに向き合えば、嫌でも歴史を守る任務の重要性は深く刀剣男士たちの内側に根を下ろす。
その機会を特に狙いすましたというわけではないのでしょうが、せっかくならば役に立てておきたい、大変だけど山姥切になら任せられる……みたいな背景の任務だったのかなぁと感じました。*1


実際に、今回出陣した男士たちはみなそれぞれに成長を遂げたことと思います。
隊長を任じられていた大包平にとっては事態そのものが大きな試練だったでしょうし、
どこか達観していて主に執着しない風でもある小竜景光にとってはそんな自分の内面に向き合うきっかけが生まれ、
無邪気に「良いこと」を信じてしまう危うさがある南泉一文字には刀剣男士としての自覚が深く刻まれ、
”人斬りの刀”という出自と主への思いの間で複雑に葛藤する肥前忠広には思いもよらない感情との出会いがあり、
修行を終えて戻ってきた和泉守兼定には、旅の中で確かめてきた元の主への想いを改めて抱き直す機会が。
立場は異なりながらも、各自が「歴史を守る」ことの意義を捉え直して、自分なりに何かを乗りこえたり視野を広げたりした、そんな出陣だったのではないでしょうか。

”修行”を経て一回り大きくなって帰ってきた、かっこよくて強い!兼さん

今回はなんといっても!極の姿が刀ミュで初めて登場した作品となりました。
作中で刀剣男士が修行に旅立つ姿が初めて描写されたのは、2017年11月~2018年1月に上演された「つはものどもがゆめのあと」でした(最後に今剣が本丸を旅立ちます)。
同じく2018年5月に千秋楽を迎えた「結びの響、始まりの音」で、新選組の刀4振りが修行に旅立っていたので、実に4年を経て刀ミュでもようやく修行フラグが回収された形です。

今回の兼さん、なっかなか舞台上に姿を見せないので不思議に思っていたら、まさかの極姿での登場。家で初日配信を見ながら叫びそうになりました。。
極の衣装もウィッグも、またあれはかなり大変な造形だと思うんだけど、素晴らしい再現度。これにはさすが刀ミュ!の一言。なびくポニーテールのまぁなんと美しいこと!
またここの登場シーンの兼さんのソロが、爆裂にかっこよかったですね!!!
周囲を取り囲んで爆踊りする時間遡行軍はもはや完全にミュージカル的ダンサーの役割を果たしてるわけなんですが(時間遡行軍の振り付けのせいで、兼さんがフロアを沸かしてる…ってなってた笑)、
ここの間奏の部分では2部の時間遡行軍ソング「吾が名を呼べ」が使われていたりもして。
劇場で見た時、歌終わりに兼さんが納刀し暗転した瞬間はもう呆けてました。あまりのかっこよさに呆然として拍手するしかなかった。
あんなにかっこよくて強い戻って来かたをするなんて、にくいね~!ってなる。(流石だよ兼さん!って脳内の堀川国広がスタオベしている)


またもう1曲のソロ「散る花を」では、盛大に涙腺をやられました。もうこの曲に関しては、有澤くんの表現が素晴らしかった。*2
千秋楽のあとに楽曲リストが明かされた時、作詞者を見て「ですよねー!!!」と叫びました。なぜならこの曲だけは、脚本の伊藤栄之進さんが作詞していたため。。いや~そうだと思ったよね。。
「奪うな、俺から、あの人を」っていうセリフが本当にしんどみ極まる。あんなの泣けて泣けてしゃあない。。

刀剣男士として”心”を得た今、もしあの人=土方歳三が違う道を歩んでいたら、命を永らえて後世で活躍していたら……そう自由に「想像する」ことを、兼さんは否定しない。
でも、決してそうならないために、自分は歴史を守るのだと、力強く言い切るのです。
「好きだから 美しいと思うから」のところ、メロディの美しさも相まって、聞いていて本当に涙が止められなかった。。
自分が愛したかつての主を奪うことを許さない。たとえ歴史の中で儚く散る運命であろうとも、その姿を美しいと思い、愛していたのだから。
かつての主の、歴史通りのありのままの姿を守ることが俺の役目だと、改めて誓いを立ててみせるような兼さん。
その姿は本当に堂々としていて、迷いがなくて、あまりにもかっこよかった。


兼さんに関する描写については、修行に行って戻ってくることの意味をこれ以上なく表現している脚本と演出で、すごく説得力があった!と感じました。
原作ゲームの設定どおり、刀剣男士たちがかつての自分の足跡に向き合うことで新たな強さを得て帰ってくる”修行”というイベントを、
舞台上の物語の中にしっかりと落とし込んで、表現しきってみせたなという印象でした。

”人斬りの刀”である事実に向き合い続ける肥前忠広

今作でわたしが夢中になって見ていたのが、肥前忠広でした。
彼は”人斬り以蔵”の持ち刀であり、幕末期に刀として実際に多くの人を殺める武器だった存在。

物語の後半、肥前くんは今回の誤った歴史の流れを元に戻す一助にならないかと考え、闇夜に紛れて”天誅”と称し、本来は幕末の混乱期に命を落としていたはずの人物を密かに手にかけていきます。
それを目撃した兼さんに「人斬りは楽しいかい?」と声をかけられたあとの、ふたりの一連のやりとり。
咎められたかと思った肥前くんが、兼さんに皮肉を込めて言い返す「人斬りは楽しいかい?」なんですが、
ここの一言が初日配信で見たときと東京公演終盤では、言い方が全く違っていたのがとても印象に残っています。
最初はどこか揶揄するような、兼さんを煽るような調子での言い方だったのが、
公演終盤では何がしかの感情をぐっと堪え、ワントーン落とされた「人斬りは楽しいかい?」になっていて。
それはまるで「楽しいわけねえだろ、そんなのあんたが一番よくわかってんじゃねえか?」とでも言いたげな調子に聞こえました。


しかしそんな彼のかつての主は、改変された歴史の流れの中では”人斬り以蔵”からその立場を大きく変えており、折り目正しい振る舞いで勝海舟の警護にあたっていました。
夜の街中で彼と出くわし、そのまま刀を交えることになった肥前くんですが、
「人を斬って、何になるというのです!」と以蔵本人から面と向かって怒鳴られ、返す言葉を失います。
まるで主自身を否定するかのような言葉を本人から投げかけられた肥前くんの心中、察するに余りあるもの……。
以蔵に対する「やめろ、その喋り方!」という肥前くんの叫びは、自分が知っている本来の姿ではないことへの耐え難い抵抗を表していたと思います。聞いていてとても苦しさが伝わってきました。
この一連の歴史改変による岡田以蔵の変質は、肥前くんにとっては己の存在否定にも繋がりかねないもので、あまりにも過酷。

結局、そのまま岡田以蔵を斬ることができなかった肥前くんが歌うソロ「人知れず」。
曲中に漂う、何とも表現し難い哀しみがとても見事でした。見ていてどうしても苦しくなってしまう。。
限界まで照明が絞られた暗いステージの上、哀切のこもるメロディに乗ってひとり暗躍するように刃を閃かせる肥前忠広。
彼の周囲にかざされる提灯は、当時岡田以蔵が斬った相手である藩のものばかり……
人を斬る、誰かの命を奪うことを、今も昔も己の役目として在り続けるその様子。
そんな自分をどこか自嘲するようでもある肥前くん。しかし一方でその在り方こそが、肥前くんと元の主を繋ぐものでもある。


その後、”放棄された世界”となった後の江戸で、肥前くんは自我を失った状態の岡田以蔵と再び出会い、自らの手で彼を斬ることとなります。
答えがないとわかりながらも「正しい歴史と今回のこの歴史、あんたにとって、どっちが幸せなんだよ!?」と問いかけずにはいられない肥前くん。
人斬りとして生きたことは、果たして元の主にとって幸せだったと言えるのか。その人生を、主自身はどう捉えていたのか。
歴史の流れが揺らいだことで、付随して主への思いも様々にかき乱されていく中で、それでも全てを堪え、最終的に肥前くんは以蔵の命を奪います。

直後の肥前くんが行き合ったのは、他でもない兼さんでした。
荒い息を吐き、複雑に吹き荒れる感情を身の内に押し留めたような顔で駆け込んできた肥前くんを見て、兼さんは何が起きたのかを察し、
「泣けよ。……俺は泣いたぜ。一度だけな」と声をかけます。


兼さんの言葉に肥前くんは胸を突かれたような表情になり、じわりと膝を落として泣き崩れます。
その肩を優しい表情でぎゅっと抱いて、ぽんぽんと叩いてやる兼さん。
そして、この時に背景に流れる音楽……それはむすはじのラストで、土方さんが最期を迎えるシーンに流れているのと同じものでした。
むすはじのあの場面で、膝をついて子供のような泣き顔で泣いていた兼さん。
目の前の江水の世界に重なるように、むすはじの当時の光景が記憶の中からありありと蘇ってきて、「本当にまたこうやって……文脈で殴るように泣かせてくるんだから刀ミュは!?」ってなりました。あんなことされたら、泣かずにおれんだろ!

函館で、主の死に向き合ったあの感情を経験したことのある兼さんだから、肥前くんの痛みが手にとるようにわかり、余計なことを言わずにただ肩を貸すことができる。
ほんの少しの間だけ、うつむいて涙を零す肥前くん。
でも抱き起こすように肩に回された兼さんの腕をふいと払って、すぐに堪えるようにきっと顔を上げ、上を睨み据えてひとりで歩き出します。
それを受けた兼さんは、肥前くんの背を見てまたちょっとだけ笑い、自分もその後から何も言わずについていくのでした。
この程よい距離感が!ベタベタしてないこの感じが!!!ミュージカル刀剣乱舞!!!ってなります……好き!!!


あの時兼さんがいてくれなかったら、肥前くんは自分の気持ちに折り合いをつけることができなかっただろうし、
涙という形で感情を吐き出すこともできなかっただろうと思います。
それは本当に苦しいことだと思うから……頼れる先輩としての兼さんが、あの時隣にいてくれて、本当によかった。

刀ミュを見ていると、ただ側にいることがそれだけで誰かの力になるのだなと感じさせられるシーンが、本当にたくさんあります。
根底の部分で、生きること、人が人を思うことを信じているその脚本の力が、私はやっぱりとても大好きです。


「かなしいことがあっても、そのさきに、ぼくたちがいるんだから!」という、今剣のかつてのセリフに全てが込められているようにも思うのですが、
歴史を守ることは、大切な人のかつて生きた足跡を愛すること、そこから繋がっている未来に立つ自分たちの存在証明でもある。
うまく表現できないのですが、過去に何かしらの深い思い入れがあってこそ、刀剣男士の歴史を守る任務は成立しうるものなんじゃないかなと、兼さんと肥前くんの姿を見ながら、そんなことも改めて考えた作品でした。
何が正義だったのか、それは時代や立場によって大きく移ろう。それでも、自分が今ここにいるのは過去あってのことなのだと、それをまずは全て肯定してこそ、先に進んでいくことができるのだと。



寝かせすぎたこともあり、読める形の感想としてまとめられるのはこのへんまで!ということでそろそろギブアップ。。書けてないことが多すぎるけど、触れられてない刀剣男士も場面もみんな当たり前に好きなのよ……!
江水はなんでか、見ていて本当に少年漫画みたいな疾走感を感じたんですよね。
刀ミュがシリーズとしてだいぶ長くなってきたぶん、自分の視点にはどうしても様々に過去の文脈が乗っており、その分小難しい見方になってしまうことも多いなと感じたりもするのですが、
本作はそのへんの肩の荷があまりなく、シンプルにワクワクして「楽しい」に全振りして見ることができたように思います。楽しかったです!
公演を通じて様々な困難もあり、半端に触れることが出来なかったのでその件については何も書き残せませんでしたが、とにかくトータルで大好きな作品でした。アーカイブ配信、待ってます!!!

*1:しかしそんな主にも予測できない結果として、まんばちゃんは自分だけが本丸に帰らない選択をしかけてしまうのですが。。このあたりは江水感想の1記事目に詳しく書きました。

*2:「散る花を」ですが、途中でTheme of Shinsen-gumiのメロディを使いやがりましたね。いやそれを、兼さんが歌うかよ!?と思って本当にびびった。幕末天狼傳初演から、絶対に逃さないという刀ミュくんの強い意志を感じた……。

刀ミュ 江水散花雪 感想 / 『隊長』という役割と、その成長~山姥切国広と大包平を巡って~

寝かせすぎてしまった!毎度のことながら!
らぶフェス2022が始まる前に、まじの駆け込みで感想をまとめます!
今回は、まとめられたところから細切れにアップする珍しい試み。どこまで書けるかわからないけど!
あのですね刀ミュの感想あるあるなんですけど、群像劇としてあまりにも見事であるゆえに「何から書いたらいいかわからない!」問題があるんですよ……!笑

まずは今回、山姥切国広と大包平を巡る『隊長』としての成長について書きました。
文章の人格が謎にグラグラなんですが、なんとなく以下本文はである・だ調となっております。
そして以下に展開しているのは、今作を見た筆者の主観たっぷりの「わたしはこの二振りをこう捉えた」という、あくまでも個人の感想のかたまりです!
ゆえに解釈違いも多々あると思われますので、そこに関してはどうぞご容赦くださいね~!




迷う大包平。導こうとする山姥切。先輩・後輩の描かれ方

山姥切国広と大包平、この二振りは本作で非常に対照的な存在として描かれている。
彼らが対話するシーンは非常に多く、そのやり取りの中で両者の特徴の違いははっきりと対比される。
他の刀からも”古参”であると称されるほどに経験豊富である一方、言葉では多くを語らない山姥切と、
まだ本丸に来て日が浅く、刀剣の横綱たる自負心は多分に持っていながらも、その実まだ刀剣男士としては迷うことの多い大包平


大包平は、プライドが高い。
しかし同時に、正面切って己の至らない部分を認め、今の自分はどうすべきなのかを、先輩である山姥切に対して教えを請うことができる素直さをも併せ持つ。
彼には刀として傑作であるその確固たる誇りがあり、素晴らしいもの・美しいものを確かに見定められる審美眼も持ち合わせている。
ゆえに、己自身になにか足りない部分があったとき、それをそのままにしておくことを良しとしない。それが大包平という男なのだと思う。
大包平は、ひたすらにひたむきに、良き隊長であろうと奮闘している。
それは刀剣男士として研鑽を積み重ねようとする、眩しいほどに真っ直ぐな成長の在り方だ。


対する山姥切は、とにかく自分にも目の前の相手にも、ある種の厳しさを持って相対する。
戦えば誰よりも強く、戦闘において傷を負うことも稀だ。出来事の先を読んだようなその振る舞いはときにひどく仲間を翻弄する。そんな彼はいつもすべて自分の中だけで、何か答えを出しているふうに見える。

山姥切がそれほどまでに強く厳しいのは、過去の自分の行動に悔いがあるから。
本作後半で明かされるが、山姥切には出陣の際に仲間を失ったという、痛ましい過去がある。
その仲間の死の責は、当時隊長を務めていた自分にあると考える山姥切は、おそらくは己への失望を深く抱き続けている。
おそらく主からは、仲間の死について強く責められたりは絶対にしていないのだと思う。むしろあの主からは「あなたのせいではありません」というような声がかかっているはず。
それでも山姥切国広は、自分のことがどうしても許せないままでいる。
しかし、彼はそうして過去の失態を悔いたからこそ、古参の刀として本丸で一目置かれるほどに刀剣男士として強くもなり、主から困難な任務も任せられるような存在になった。


そんな山姥切は「お前は俺のようにはなるな」という強い戒めを込めて、距離を以て隊長としての大包平の様子を見守る。
足りない部分に真摯に向き合い、足掻き、さらなる高みを目指そうという大包平の在り方は、おそらくは刀剣男士としてとても好ましく、頼もしいものとして、山姥切の目に映っていたのではないだろうか。
ある意味、期待をかけているとも言える。
だからこそ山姥切は「上から見ているつもりはない。対等な上で、俺のほうが上だ」「俺のことなどさっさと超えていってしまえ」などとぶっきらぼうなことを言ってしまう。
山姥切のそんな(言葉足らずな)叱咤激励は、大包平の資質を見込んでのもの。
これだけ真摯な男なら、判断が困難な局面に置かれたときも仲間をきっと無事に守りおおせるだろうと、おそらく山姥切は考えている。


……ここまでの流れであれば、山姥切は先輩として大包平を(言葉足らずではあれど)真っ当に導いた存在である。
時に伝わりづらい部分はありながらも、本丸の良き先輩として振る舞っていただけ、そのはずだった。
しかし、山姥切が内に抱える思わぬ脆弱性が、物語の最終盤で露見する。

守られるべき「本丸の仲間」。そこにいるのは誰か

過去を悔いながらひたすらに強くなることは、山姥切を決して楽にすることはなかった。
むしろ強くなればなるほど、己の中に他者と分かち合えない領域が増えていったのではないだろうかと感じさせられるものがある。*1
もともとの性質上、口数も多い方ではないだろうし、自己開示が得意だとは当然思えないから、他の古参の刀たちや主もそういう彼の特性を尊重して、「安心して放っておいた」ところがあるのではないかと想像している。ある意味では手のかからない存在、というか。
しかしそうして程よく放っておかれる中で、山姥切が己に向ける苛烈な眼差しは、おそらくは主の預かり知らぬレベルで研ぎ澄まされすぎたのではないだろうか。*2


その結果として山姥切は、放棄された世界に自ら取り残されるという選択をとる。閉じかけた時の流れの入り口から大包平が脱出しそびれないよう彼を力強く外へと押し出し、「いい隊長になれよ!」と叫んで。

彼は、自分の存在を守るべき「本丸」の埒外にあるものとして置いてしまったのだ。しかも、それをいとも当然の行為として、何ら疑問を挟まずに。
それは単なる自己憐憫や自己犠牲ともまた違った行動原理だと思う。
”必ず本丸に無事に帰されるべき、大切な仲間たち”という定義の中に、おそらく山姥切の意識下では当たり前のように自分だけが存在していないのだ。悲しいことに。
これは単に「自己肯定感が低いから」「自暴自棄になってしまったから」といった話でもないと思う。
彼に尋ねれば、きっとごく淡々とした調子で「本丸の仲間に何か危機的状況が訪れたときに、自分は特に優先されるべき存在ではないと思った。それだけだ。」みたいな答えが返ってくるのじゃなかろうか。……なんてことを言うのだ!?(勝手に想像して悲しみながら憤ってしまわざるを得ない。。)
それはまるで、自分でも思わぬほど深く穿たれていた悔恨の念の奥底まで、ふと魅入られて取り込まれてしまった、といったような。


しかしそれをひっくり返したのが、任務中に経験不足からくる不甲斐なさを募らせていたはずの、大包平だった。
彼は渾身の大声でもって「許さん!許さんぞ山姥切国広!」と叫び、閉じてしまったはずの時の流れの入り口を、意志のこもった怪力でえいやとこじ開けてみせる。

大包平は、任務の中で今の己に足りないものを深く自覚していた。
刀剣男士としての戦闘能力、困難な状況の中で皆を導く指針の示し方や、視野の広さ。そういった要素の数々が、自分にはまだ不足していることを痛感していた。
しかしそうして惑い続ける中で、大包平は「お前はそれでいい」と繰り返し先輩の男士たち(山姥切国広と和泉守兼定)に言われ続ける。
伝えられはすれこそ、意味を説明されることのないその言葉に「どういう意味だ?」と苛立ちながらも、素直に”その気持ち”を大事にし続けた結果、大包平は一番大切なことを決して見失わなかった。

それは、「仲間を守る」ということ。
彼らの任務は、言うまでもなく歴史を守ることだ。しかしその上で、命を容易く散らしてしまってはいけない。
モノであり、ヒトである今の彼らは、「命あっての物種」なのだ。それを無くしてしまっては元も子もない。
武人にとっての名誉の死、という言葉が頭の中によぎることも、刀であった彼らにはきっとあるだろう。仲間のための犠牲、それもあり得ることだとも理解はしているはず。
しかしそれでも大包平は、お前の取ろうとしているその行動は間違っていると、山姥切に怒りながら訴えに戻ってくる。
それは、自分に刀剣男士としての大切な学びを多く与えてくれた山姥切国広のことを、間違いなく、当たり前に守るべき「仲間のひとり」だと思っていたから。
自分にその学びをくれた本人が、本丸の仲間という枠組みの埒外にあることを、言葉通りに「許さない」と強く思ったから。
導かれ、育てられるはずだった立場の大包平は、その瞬間に山姥切を大きく救ったのだ。


その大包平の姿に、虚を突かれたような表情を浮かべる山姥切。
あの時の大包平は時の流れの入り口だけでなく、山姥切の心も一緒にぐいっとこじ開けたのだと思う。
意図してかせざるでか、いつの間にかかたく凝っていた山姥切の内面に、
本質的に”仲間である”というのはどういうことなのか、本来は彼自身もわかっていたはずのその事実が、勢いよくあたたかに流れ込んできたのだと思う。
そして山姥切は、大包平の日向を歩くようなその堂々とした在り方をきちんと理解し、心の内で深く尊重していたからこそ、その流れ込んできた真っ直ぐな思いを受け止めることができたんだろう。

隊長の役割は、本丸へ仲間を無事に帰すこと、と山姥切はかつて大包平に言った。
その「仲間」には、隊長である自分も含まれなければならないのだ。
そうでなければ、もしも本丸から山姥切が失われてしまえば、
今の山姥切が仲間を失った自分を許せないのと同じように、仲間たちも己を許すことが出来なくなってしまうのだという事実を、山姥切は素直に認められたのだと思う。

簡単には馴れ合わない。でもきちんと尊重し合う、それが刀ミュの刀剣男士

物語の最終盤。桜田門外の変の後、雪のさなかに山姥切が見せる「……どいつもこいつも」のあの笑顔。
どこか呆れたような、しかし鬱陶しさは感じさせない、気心の知れた相手へ向けられたそんな柔らかさを声に滲ませて、彼はふっと笑み零す。
その様子からは、かつて仲間を失ったその苦しみがひとつ解け、改めて仲間と共に在ることに向き合えるようになった、そんな心境の変化が感じられるようだった。
山姥切の中に流れる時間は、再びゆるやかに動き出したのだ。


己の中にある美学を突き詰めきって目の前の壁を正面突破した大包平の成長と、
十分に広いはずだった視野の中に、実は自分だけがいなかったことに突如気づいた、山姥切の成長。
二振りは「隊長」という役割を通じて、自己と互いへの理解を深め合い、新たな一歩を踏み出した。

お互いのすべてを理解できるとは言えない、でも信頼しあうことはできる。
単純に馴れ合うのでもなく、寄りかかるのでもなく、肩を並べてただそこに在る姿。
経験値の歴然たる差がある者同士、明確な先輩と後輩であっても、そこにあるのは上下関係ではなく、あくまでもれっきとしたひとつの個としての交流なのだ。

まずお互いに対する尊重があり、ぎこちなくても真正面から互いに関係性を築いていく。その様子こそが、ものすごく「これぞ、ミュージカル『刀剣乱舞』だ……!」と感じられて、本当に大好きだった。
これだよこれ、私が好きな刀ミュは~!と胸の内で叫びたくなるような、胸のすく美しい清々しさがそこにあったなと思う。



思いっきり二振りに絞った掘り下げを書いてみました!どうしてもこの話の本文がである・だ調になったのはまんばちゃんのせいだと思う(?)
まんばちゃんと兼さんの関係性も大好きだったのですが、それをうまくこのテーマには盛り込めず!
そしてそもそも、まんばちゃんの歌がうますぎる件についても何も書けてない!笑 あと「いい隊長になれよ!」の表現の変化とか……。
あれもこれも書こうとするととっ散らかって永遠にまとまらないので今回はテーマを超絞りました!
江水の記事これで最後にならないように、頑張りたいな……がんば……れるか!?

その後:2記事目を書きました。
anagmaram.hatenablog.com

*1:さらなる個人的な解釈を付け加えると、まんばちゃんの場合はだいぶ後天的に身に着けた「強さ」だと思うので、刀ミュ三日月の抱えている孤独とは、まただいぶ質が異なる何かだと感じている。

*2:冒頭での審神者との会話における「俺が勝手にやったことにする」という部分。これは何も山姥切が我が身を捨てて放棄された世界に残ることを言っているのではなく、そうなる危険性を放置しながら「放棄された世界」を招き寄せ、経験の浅い刀たちにその恐ろしさを体験させる一連の流れのことを言っているのだと思う。山姥切があんな行動に出るとは主にも予想が出来なかったんじゃないだろうか。

宝塚花組「TOP HAT」を観た感想(柚香光さんのタップ・トップコンビのデュエダンについて)


大遅刻なのですが、去る4月6日に千秋楽を迎えた花組「TOP HAT」の感想を書きます!
わたしが観劇したのは3月なので、本当に大遅刻もいいところ。

kageki.hankyu.co.jp
1935年公開のアメリカ映画を原作としたストーリーであり、筋立てはごくシンプル。
あらすじに書いてあるとおり「勘違いから始まるすれ違い・ドタバタラブコメディ」なお話です。
ヒロインが自分の恋した相手を友人の夫と勘違いする、というあらすじから「つまり、最後には誤解がとけてハッピーエンドになるんだろう!」と想像がつくため、
「良い意味で気楽に楽しく観られそう♪まぁ泣くこともないだろう!」と思って臨みました。

……臨んだんですが!
観劇当日のわたしは予想外に涙を流してしまいました。
その理由は、柚香さんのダンスが、あまりにも素晴らしすぎたから……!

以下、れいちゃんのタップとれいまどトップコンビのデュエダンに潔く絞っての感想を書きます!
(別記事でいろんな生徒さんに触れられたら良いなと思っております!いつもそこまでたどり着けないでいる~たまには頑張りたいよぉ。。)

柚香光さんの踊っている姿は、やはり「奇跡」だと思っていいでしょうか?

いつも同じことを言ってしまうけど、でもどうしたってそう思う。
れいちゃんのダンスは、奇跡であり神の御業!
もうそれをこの目で観られたことに感動するばかり、になりました。今回も。

原作映画は未視聴であり、フレッド・アステアの名前こそ知っていれど、うっすらとした知識しかない私。
アステアはれいちゃんが敬愛してやまない”憧れの存在”であるという情報と、
後は幼い頃にレーザーディスクで観た「ザッツ・エンターテインメント」の記憶以外は手がかりが何もない状態で観劇したのですが*1
なんかもう本当に、この演目をれいちゃんに当ててくれたことがありがたすぎて。
劇団が、トップスター・柚香光さん本人の夢を叶えてくれたのでは?と思えて、感謝の気持ちしか湧いてきませんでした。


シルクハット(トップハット)にステッキ、この場合は黒燕尾と呼ぶよりもタキシードと呼んだ方がふさわしいのかな?と感じる、フォーマルど真ん中の装いで、
チャーミングに軽やかに、茶目っ気とほのかどころではなく香る色気を湛えて踊る、れいちゃんのジェリー・トラバース。

柚香光さんがタップダンスを見事に踊っているのではなく、あくまでもブロードウェイのスターであるジェリー・トラバースが踊るタップダンスなんですよね。
ダンスの得意なトップスターがスターダンサーの役をやる。こんな説得力を生める組み合わせがあるだろうか!?納得感と素晴らしさに拍手喝采の気持ちでした。


一番感動したのは、一幕の序盤、ロンドンのホテルについたジェリーがホレスの部屋で踊る「NO STRINGS」でした。
ジャケットを脱ぎ、白いシャツに黒いタキシードパンツのシンプルな装いで、愉しげに軽やかに、縦横無尽にステップを踏むジェリー。
まさに”踊らずにはいられない”といった風情、そんなジェリーの周りの空気までが、リズミカルに鮮やかに動きだす。

初見時、このシーンを観ていたら、いつの間にか勝手に涙がこぼれていました。
れいちゃんが全身から醸し出すジェリーの自由闊達な空気感、ステップのひとつひとつ。
そこには過剰も不足も一切なく、これが正解なのだ、まさしくこうあるべきなのだと思わせられるような、パーフェクトと感じずにおれない完璧な美のかたちがそこにありました。
何よりも、心から楽しそうに空気まで動かして見せるれいちゃんの幸せそうな様子に、深く感動しました。


これは私の勝手な感想ですが、れいちゃんがアステアのタップの真髄をつかもうとしたその結晶が一番溢れ出ていたのが、あの場面ではなかったかなと感じたのです。
色遣いが抑制されたモノトーンの衣装と、情景がホテルの一室というあくまでも日常感のある組み合わせであることで、
余計にその存在の特別感、いうなればスター性が浮き上がってくるようでした。
稽古期間に収録されたナウオンでは「No Stringsどころかがんじがらめな感じ」的なことも仰っていたのに、全くそんな素振りもなく。
下の階で眠るデイルに対して「眠りの精になってあげるのさ」と、床の上に撒いた灰の上ですべらかに踊る後半も、胸をぎゅうと掴まれるような美しさでした。
その足元で、タップ音は曖昧にならずどこまでもクリアに鳴り響いて。
静止する瞬間の全身には露ほどのブレもなく、躍動感と静寂とのぞくぞくするほどの緩急。やっぱりあんなの柚香光さんにしか作り出せない何かだと思います。


ジェリーのソロのシーンでもうひとつ忘れられないのが、二幕のほんの僅かな時間にダンスをするくだり。
まだジェリーのことをホレスだと勘違い真っ最中であるデイルが、彼を懲らしめようと自分の境遇について嘘をつきながらジェリーに迫るも(WILD ABOUT YOU)、まんまと返り討ちにあってしまう場面の後にやってくるひとときです。
デイルが自分を好いてくれているのだと有頂天になって、ホレスの忠告を適当に受け流すジェリー。
ひとりになった彼は場面転換のため降りた幕前で、センターから下手側に移動しながら、ごく軽くといった具合に踊ります。

そのシーンを観ている時、どうしてもジェリーが「月明かりの中で踊っている」ようにしか思えなくて、なんともいえずにハッとさせられたのです。
作中でこのシーンについて時間帯についての詳しい描写はなく、物語の進捗を鑑みるに、おそらく月明かりというにはまだ早い時間帯の出来事のようにも思うのですが、
ジェリーを照らし出すスポットライトと、そのダンスが生み出す情感が、どうしても月明かりを思わせる何かで……
それだけ、れいちゃんのダンスが叙情性豊かということだと理解しているのですが、
たぶん1分にも満たないそのごく短い時間が、私の中では絶対に忘れることの出来ない場面として刻み込まれました。
だって、あまりにも美しくて。


装飾が少なければ少ないほど、れいちゃんの本領は逆説的に発揮されていくように思えてなりません。
れいちゃんのダンスは単に抜群にうまいだけじゃなく、そこに常に心が深くしっかりとこもっている。それが何よりも魅力的です。

お芝居によるジェリー本人の心の表現と、れいちゃん自身が持つダンスの技量が高いレベルで融合していたジェリーの姿。これが観られたことにやっぱり感謝しか湧いてこなくなる……!


つぎはトップコンビのおふたりのダンスについて!

息ぴったりすぎるれいまどのデュエダン①ISN'T THIS A LOVELY DAY

ふたりのデュエットダンス、フィナーレを除けば場面としてはふたつかなと思うんですが、そのどちらもとんでもなかった。
ばちばちのタップダンスで魅せる乗馬クラブ(ISN'T THIS A LOVELY DAY)のシーンと、二幕でベニスに移動したあとにやってくるダンスホールでのナンバー「CHEEK TO CHEEK」。

前者はとにかく、躍動感のかたまりであり、ジェリーの罪な男っぷりが際立つシーンでした。
ジェリーが歌っている間、隣で興味のない様子だったはずのデイルがどんどんと絆されていってしまい、ふいっと顔をそむけながらも徐々に口元が解け出すのが、まぁいじらしくて可愛くて!
「ちょっとデイル~!そんな簡単に!ペースを乱されたら駄目……いやでも仕方ないか……これは相手が悪い!」みたいな気持ちになります。
あれはもう、仕方ないよね。デイルさん、ジェリーと出会ってしまったのが運のツキだったのだ!笑


ダンスパートになってからは、二人ともぎゅっとその時間に集中している感じ。今この時を、一緒に楽しもう!というような交歓がそこにある。
まだどこか探り合いをしているようでもありながら、ふたりで今この瞬間を分かち合えることへの歓びが、確実にそこには表現されていました。
パッ!と勢いよく向き合っては、静止し合う瞬間の表情が、二人ともすごく楽しそうで。
仕掛けあっているというか、「オッ、じゃあ次はどう来る?」をお互いに好きに投げかけている感じに見えました。


れいまどの、こういう丁々発止な感じの言葉のないやり取り、大好きなんですよね!
観ていると、板の上のおふたりがあくまでもイーブンな関係性で、一緒に時間を作り上げていることがよくわかるような気がします。
過剰な遠慮も謙遜もなく、良いものを一緒に楽しく作る!というそんな雰囲気があるなぁと思うのでした。*2

息ぴったりすぎるれいまどのデュエダン②CHEEK TO CHEEK

そしておそらくは本作における二人の最大の見せ場である、二幕の「CHEEK TO CHEEK」。
恋心が生み出すときめきの純度が特濃!と言いたくなるとびきりロマンティックな時間であり、同時におふたりの素晴らしいダンスの技量に度肝を抜かれる場面でもあり。

この場面のデイルはまだジェリーをホレスと勘違いしたままなのですが、
妻である(と思いこんでいる)マッジからジェリーと二人で過ごすことを熱心に薦められ、いったん是非を考えることを放棄します。
「いいわ、彼女が気にしないなら、私も気にしない」と、目の前のジェリーに惹かれる自分の心に素直に向き合い、ダンスに誘う彼の手をとります。


そこから二人がタイトルどおり、”頬を寄せ合って”チークダンスを踊る時間の、なんたる甘やかなことか。
「言葉は何もいらない」と、愛をこめてうっとりとした歌声をデイルの耳元で紡ぐれいちゃんジェリー。
その腕の中で、どきりとするほどに美しい恍惚とした表情を浮かべるまどかちゃんデイル。
曲が始まった段階ではフロアを埋めていた他のカップルがいつの間にか姿を消し、歌の終わりとともにダンスホールはジェリーとデイルのカップル、ふたりだけの空間へと変化していきます。


広い舞台上でふたりきり、デュエットダンスが披露されるこの時間、まずはやはり技量的な面で本当に目を見張ってしまいました。見事すぎる。
特にあの、まどかちゃんが縦に180度回転?に近い体勢になる例の瞬間!
「待って!今何をやったのかさっぱりわからない!?」となってしまった、、あれもリフトの一種なんでしょうか?
直前に一瞬勢いをつけて、まるでなにもない空中を駆け上がるみたいな動作をするんだけど、本当にあれは一体なにがどうなって……!?
円盤の稽古場風景にこのシーンが運良く入ったりしてないかな!?無理かな!?笑
絶対にものすごく難しいことは素人にもわかる、でもそれをあくまでも「軽々と」やってのけているように魅せてしまうおふたりに、脱帽でした。
ナウオンでは(おそらくは海外公演の)映像を観て「これは一体なにがどうなって……?」とこちら側と全く同じリアクションをしているまどかちゃんの様子もありましたが、
それをごく短い稽古期間でああして実現してのけてしまうのですから、トップコンビって本当に凄まじい存在ですね。。

芝居とダンスどちらもぴったりと合う、れいまどの呼吸

劇場でこのシーンを観ながら、この演目をリアルタイムで目撃できた幸をしみじみと噛み締めました。
まさしく「夢のような」と言いたくなるこの場面がここまで魅力的に仕上がっているのは、
ジェリー・デイルとしての気持ちの沿い方と、芸名のおふたりとしてのダンスの呼吸、双方がぴったりと揃っているからじゃないかなと感じました。
そのどちらかが欠けていたら、あんなに魅力溢れるシーンにはならなかったんじゃないかなと。

れいまどは、お芝居とダンス両面での呼吸の合わせ方がとにかく丁寧だなと感じます。
そりゃ、デュエットダンスなのだから当たり前ではあるかもしれないけど、単に「難易度が高いものを見せる」というだけに終わらないところがすごいなと思うんですよね。
ISN'T THIS A LOVELY DAYもCHEEK TO CHEEKも、
「確かに振り付けの中には難易度の高い部分がある、でもそれを踏まえて今このシーンではジェリーとデイルとして何を表現したいのか?」というところまで深く深く踏み込んで、作り上げられたシーンなのだなと思います。
たくさん話し合いも重ねられて、お稽古をいっぱいされたのだろうなと。
だからこそ、観ているこちら側はただただうっとりと、夢見心地になれるのだろうなと思います。

書ききれないので駆け足で、その他言いたいことを殴り書く

言いたいことほんとはまだまだたくさんあるので、以下駆け足でざっと行きます!


まず、まどかちゃん、歌がうまい!(それはそう!みんな知ってる!)
「YOU'RE EASY TO DANCE WITH」と「WILD ABOUT YOU」のまどかちゃん、歌の表現力の幅が広すぎてビビりました。
娘役歌唱じゃない喉の使い方?といったらいいんだろうか……声楽全然詳しくないからわからないけど、そういう歌い方もできるんだ~!みたいな瞬間がいっぱいあって。
ちょっと濁った感じの「about you」の歌い方、まじまじカッケ~!と思いました。
歌いこなせる曲の幅がとにかく広くてびっくり。本作はそもそもソロが3曲もある時点ですごすぎる。
せっかくなので、がつんとミュージカルど真ん中!みたいな難曲、今後花組のまどかちゃんでもぜひ聞いてみたいな~!って思っています。
なんというか、まどかちゃんはやっぱりスーパー娘役さんだと思う。
今後のご活躍もとても楽しみです!


あとどうしても言いたい!
ポスタービジュアルにもなっているCHEEK TO CHEEKのデイルのドレス、ほんっっっとうに素敵!大好き!(※ドレスに字数を割いてしまう女S)

少しくすんだ色合いの落ち着いたピンクが、デイルのキャラクターにとてもよく似合っていると思いました。何より花組カラーですし、宙組初演のときは白だったみたいだから、花組での再演用にピンクを選んでくださったのかな!?
裾が大きく広がらないタイトなシルエットはとてもお洒落で、襟元と裾それぞれにたっぷりとついた細めの羽飾りがゴージャス。
リフトやターンで勢いよく裾がぶわっと広がるとダイナミックな見応えもあって、静止している時も踊っている時も、どちらもとても美しい一着だなと思いました。
そしてあのさばきにくそうな裾の構造を我が物にしてあんな難しい振り付けを踊りこなすまどかちゃん、本当にマーベラスッ……!


そして最後に!我らが柚香光さん、相変わらずのとんでもねえモテ男!そして、「恋」がお強い!!!
れいちゃんジェリーの息をするように恋に落ち、同時に相手もあっさりと恋に落とす仕草、やっぱり天下一品でした。恐ろしい。

そもそも柚香光さん、一緒になったら絶対に苦労させられる系の、でも抗えない魅力を携えた男性像がうますぎる問題があります。
今回、ジェリーはアプローチの仕方がぶっ飛んでいてやばい。あんなの自分に自信がないと許されない何かだよッ!
馬を御したことがないくせに一目惚れした女性と二人きりになるチャンスが欲しくて馬車を走らせちゃうジェリー、冷静に考えるとかなりあぶない人。笑
そんな近づき方されたら流石に怖くない!?めっちゃ避けたくならん!?とは思うけど……思うのに。
でもそういうのとりあえず、まぁいいか~!っていつの間にか不問に付してしまえる、あのチャーミングさ。全然よくないはずなのにおかしいな。
やっぱほんとれいちゃんの演じるモテ男はどこまでも、ヒロインを夢中にさせる説得力がありすぎて、ズルい。笑

そしてあの、誤解が解けたあとの「ジェリーだよ」のウルトラロマンティックっぷりには、ほんと腰が砕けました。
あれを聞いてた私の脳内は、

  • 「ねえなんで今名乗る!?アルベルトへの罪悪感を訴えてたデイルの話、ちゃんと聞いてた笑!?」←ツッコミ①
  • 「でもやっと誤解が解けたんだから、もう周りが見えなくても仕方ないか!?」←納得①
  • 「とはいえデイルが既婚者になっちゃった問題はまだ何も解決してないのでは!!?大丈夫!?」←ツッコミ②
  • 「う~~~ん……でもまぁ、とりあえず、二人が幸せそうだからいっか!!!」←納得②、になった。(※全然よくない)

上記のとおり、観ていてツッコミと納得の応酬が起きるほどに破壊力のある、とろけるような「ジェリーだよ」だったんですが、
それに加え、あのテーブルの上での指の絡め方がまた大問題ではなかったでしょうか。いや、色気ェ……
そのタイミングでデイルを見つめながら指をナチュラルに絡め始めるの、見ててほんとドキドキしちゃったな!?
ほんとうに、もう少し自重してくださってもよろしくてよ!?というあれで……あのシーンはオペラ覗きながら「ヴッ」ってなりました。”恋”があまりに強すぎて。

最後にデイルとアルベルトの結婚が成立していなかったとわかったあと、心から愛おしそうにデイルを抱きしめるその仕草にも、同じように「ヴッ」ってなりました。
だって、優しくて深くて強いハグであるだけでなく、同時にその仕草がどこまでも美しいんだもん……勝てないよ!!!
ラストの「デイル!この手を離さないで」っていう声音の、あのにじみ出るような幸福感も大変忘れがたく。。

というわけで、わたくしは今回も柚香光さんの恋心の匠っぷりに、無事完敗いたしました!!!は~~~ほんと、大好き!!!



1記事あたりのボリュームを圧縮することを試みたのですが全然失敗してます。8000字超えちゃった。圧縮とは???
それなのに、他の生徒さんの話全然書けてないんだよ~!でもそれもいつもだよ~!ってなってます。うう、悔しい。
それこそ別記事としてコンパクトにまとめられたらいいのか?!
とりあえずトプハ1記事目はここまで!

*1:タップダンスという存在を多分この映像で知りました。タップの足元のステージがどんどん小さくなっていくやつが子供心にすごく好きだったんですがなんの映画だったのか全然わからない!また観てみたいな。

*2:これは芸事の上では、れい華にも根底には同じ思想が流れていたように思います。つまりれいちゃんの中で理想とするトップコンビ像がそういうものなのかな?と最近思うようになりました。