こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

「光がここにあって」― ひとつの最高到達点を見た冬。~らぶフェス2018を総括しての感想、その2~

これを書き終わる頃には、多分日付が変わっているんだろうなぁ。変わった先の日付は、12月31日。第69回NHK紅白歌合戦の、当日というわけでして…!
「紅白を経験していない自分でいられる時間が残り僅かだ」というわけの分からないことを口走りっぱなしなのですが、今の状態でどうしても、らぶフェス2018の総括をしておきたい…!
先日ライブパート楽曲については全曲コメントを書いたので、今回は作品全体について書きます。わりと概念的?なおはなしになりそう。



今年のらぶフェス2018は、流石の3年目の貫禄というか、あらゆる面において、やりたいこと・やれることを全部つめつめに盛り込んだ印象の「今だからこそできる」圧巻のステージだったと思います。
それは演出、楽曲、そしてストーリーの全てがそうだったと感じています。


らぶフェスという真冬のお祭りを、初年度である2016年から貫くテーマ。それは、
「祭りとは、彼岸と此岸を繋ぐもの」
という、一度聞いたら忘れられないフレーズです。

2016年当時は、な、なるほど、そういう世界観フムフム!となりつつも、個人的には三日月による「加州清光は、三条の手中にあり!」という宣言のわけのわからなさ(※褒めてる)に必死でついていくことで、正直まずは精一杯でした。2日間マチソワでの4公演っていう凝縮した見方になっちゃったのもあるし。そのために、作品の中での「彼岸に立つ者」と「此岸に生きる者」の対比を、私自身はそこまで繊細には味わえていなかったかな~と思うところがあります。
いや、なんていうか、まだ刀ミュが描こうとしてる文脈に今ほど慣れていなかったっていうのも大きい気がする。そもそも、ライブだよ!って言ってたくせに、いざ行ってみたらがっつり物語があるんだもん、本当にびっくりしたよねぇ…!

そして2016年は、幕末天狼傳を駆け抜けた先で一度行き倒れていたという事情もあり、なぜか一切の感想をブログに書き残していないという、後から悔やまれすぎる失態をおかした私なんですが、そんなポンコツな状況でも、当時からとても強く印象に残っている場面があります。
それは、ラスト近辺、三日月宗近から「三条と新選組、どちらと共にあるのか」を選択するように迫られた時の清光が返す答えです。

「祭りとは、彼岸と此岸を繋ぐものなんでしょ。俺の選ぶは違うんだ。
モノであり、ヒトである俺は、…全部繋ぐよ!」

この、言葉に尽くせないほどの清光の真っ直ぐな姿に、両国国技館で、本当に心臓を撃ち抜かれたような思いになりました。

刀ミュの物語は、「どちらかを選ぶ」ことを無理に強いることがないように思います。しかしその裏返しのように、どの答えが誤りで、どの答えが正解なのかを、明確にすることもしない。
だけれど、物語の中にいる刀剣男士たちが自らの意思をもって目の前の出来事に真摯にぶつかり、答えを出そうともがくその時に、必ず手を差し伸べてくれる仲間の存在が、確かに描かれている。

もしかしたら「夢と現」にも例えられるような、三条と新選組という対照的な存在。そのどちらか片方だけを選ぶことはせず、自らそのあわいを繋ぐ架け橋になると宣言する清光の姿は、その先に続く刀ミュの物語の方向性を、ひとつ明確に打ち出したようなものだった気がします。
彼岸と此岸を繋ぐもの、というその世界観は、そんな清光の健気で凛々しい姿とともに、私の中に深く刻み込まれました。


らぶフェス2017では、真冬の百物語を題材として、男士たちがかわるがわるに不思議な話を披露していくという形がとられます。
そして最終的には、その百物語の発案者であるところの青江が、どこか憑かれたような表情で百話目を語ろうとします。自らの名の謂れとなった子連れの女幽霊の話、御神刀たりえない理由とされているその逸話を語り進める青江のことを、しかし途中で石切丸が優しく制します。百物語は、最後まで語らなくても良いんだよ、と言って。
「それもそうだね」と言って穏やかに微笑んだ青江は、今剣と石切丸と三人で、手を繋いで帰っていく。その手のぬくもりをお互いに感じ合う様子を歌った「てのひら」は、緊張した場面をすごしたさにわたちをほっと解きほぐしてくれるような、じんわりとした優しさに満ちていました。
百物語という題材にもふさわしく、彼岸と此岸という言葉が、少し背筋をぞくりとさせるような形で描かれたのが2017年の特徴だったかなと思います。


そして、3年目となった今年は、そもそもの「祭り」という存在を、真正面からとらえなおすような作品構成になっていました。
刀剣男士18振りによる、まさかの東西祭り対決…!本当に圧倒された。あまりにも素晴らしかった。最早コンセプトの勝利を感じました。
祭り対決が始まった直後に歌われる楽曲は、公開されたリストによると「ハレハレ祭り」というタイトルだそうなんですが…あのね、ほんとにね、らぶフェスっていう場そのものが、私達にとって間違いなくひとつの大きな「ハレ」の場なんだよね…!
日常という「ケ」を越えた先に初めて会えるもの。放っておいてもその場にいると心が勝手に浮き立ってしまう、これ以上ない非日常を体感できる、年に一度の特別な場所。
そんな会場で聞く「ハレハレ祭り」は、本当にどうやったって説明できないほどにみんなみんな、全員がかっこよくて…。
「ついにこんな表現を真正面から見せてくれるまでになった、ミュージカル刀剣乱舞…!!!……!!!」ってなりました。(←あまりの出来事に思わず二度ほど息を飲み込んでしまっている様子)


今回の祭り対決というテーマとあの凝った演出が可能になったのは、やっぱりあくまでもらぶフェスが「3年目」を迎えたという、時間の経過がなせるものだったのではないかな、と思いました。その予想を遥かに越えた進化に、これまでの歩みを感じて、もうグッと来ざるを得なかった。

まず、お客さんと作品との間で、祭りの定義がしっかりと共有できていること。
祭りの意味を問い直す巴さんの姿を通じて、「彼岸」から「此岸」に向けての祈りの存在を静かに明らかにしてみせるというその流れに、やっぱり刀ミュの物語の根底には、限りない優しさがあるんだな…って実感しました。
彼岸にいる元の主や、犬猫蝸牛たちと呼応しあって、ひとり「楽しいな」と零す巴さんの表情と声とが、忘れられない。
なんていったらいいのかな…「今のお客さんにはきっと間違いなくこの表現が伝わるだろう」って、作り手側である御笠ノさんや茅野さんが、こちらへ物語を理解する機会を、信頼して力強く、手渡してくれたような気がしました。

そして何より、全力でお祭りを表現するみんなの姿が、本当に、かっこよかった。
刀剣男士である彼らは、刀であったことはあれど、顕現するまで人であった経験はない。この世において、彼ら自身が実際に祭りを体感したことがあったとしたら、それはきっとモノとしての記憶にほかならない。
かつての主と共に過ごした縁のある土地で聞き馴染んだ祭り囃子を、それぞれが胸の内で思い返すように、誇らしげに精一杯披露してみせているのだな、って思ったら、なんかもう、どう表現したらよいのかわからない気持ちになりました。
言葉にしようとすると陳腐になりすぎるし本当にうまくいえないんだけど、「和」の世界が持つ奥行き、ある意味ではどこまでも混沌としている様子に、胸をわしづかみにされてしまう。だってそもそも巴さんの歌い出しが「天地初めて向かいし時」なんだもの…。あめつち、ですよ…。
そしてその混沌の中を、己の身ひとつで力強く駆け抜けていくことの美しさと尊さ、みたいなものを感じます。

今年のらぶフェスは、日本刀をモチーフとした「刀剣乱舞」だからこそ、そしてそこに歌と踊りを携えることのできる「刀ミュ」だからこそ描き出せた、唯一無二の世界だったと思います。
祇園祭の山鉾や、ねぶた祭りの大きなねぶた。自軍の祭りの歌を誇らしげに、堂々と声を張って歌い上げるむっちゃんや蜻蛉切さん。手元で打ち鳴らされる鐘と鳴子。腰を落としながら踏みしめるその足取りや、宙に翻っては残像を残す舞姿。みんながそれぞれの背に宿す、流麗な筆致の白虎と青龍。

らぶフェス初日から、かっこよさについて語る他の語彙についてずーーーっと考えているんだけど、ほんとにこれ以上、出てこない…わかりやすく言ってしまえばそれはきっと男らしさであり、日本らしさであり、色気や力強さ…などなどになっていくんだけど、その全てを包括してみんなが携えていたのは、やっぱり紛れもない「かっこよさ」だったなって思います。
祭り対決の西軍・東軍がそれぞれ、これまでの刀ミュ本公演では見たことのない魅力をこれでもかというくらい見せつけてくれたので、心底みんなに惚れ直しました。
ほんと、紅白の後に刀ミュに興味を持った人がいたら、真っ先にらぶフェス2018を見せたいくらいの気持ちになるの…。イケメンだよね、顔がいいよね、みんなキラキラしてるよね!でもねそれだけじゃないんだ。こういう方向性の痺れるようなかっこよさを、真っ直ぐに体現してくれる存在でもあるんだよ、もうほんと、伊達じゃないから体感してー!!!って叫びたい。。今までも「刀ミュを見て!」の気持ちは強く持ってはいたけど、これほどまでにコンテンツとして届いてほしい!って思うのはらぶフェス2018が一番かもしれない。この言葉にならないかっこよさの熱すぎる集合体を、沢山の人に届けたい…!ってなってしまう。
そこにしっかりとしたストーリーがあり、さらに華やかなライブが乗っかっていく様子が、最早本公演の一部と二部そのものだったな、っていう風にも思えたり。
本当に、こんなことまでできるようになったんだ、のオンパレードでした。毎年これ以上ないくらいにらぶフェスを楽しんでるけど、やっぱり私は、今年が一番楽しかった…気がする!(といいつつ順番をつけたくない気持ちが強い)
こんな感じで、あらゆる意味で、私は今年のらぶフェスのことを、ひとつの「最高到達点」だな、と個人的に強く感じたのでした。


そしてこの「最高到達点」という感想を根底で深く貫いている、今回のらぶフェスで一番心に突き刺さったとあるシーンがあります。

それは幕張の大千秋楽、ライブパートに入ってからの二曲目。阿津賀志巴里の楽曲であり、もともと本当に大好きな歌である「In My Light」の一場面です。

Cメロが終わるあたりで、踊りながら花道を駆けぬけた三日月は、メインステージ中央にたどり着き、そこから大サビ出だしのソロを歌います。

「限りある世界だって 曖昧な未来だって
消せない(消せない)(消せない)光が ここにあって」

この「光がここにあって」を歌った瞬間の三日月が、まりおくんが、本当に、これまで見たことのないような表情をしていました。
少しだけ首を傾けて、額の上に自分の手をかざして、どこか眩しそうに目を細めて。内側から自然と感情がこぼれ出るように、顔中に笑顔を広げたその様子に、見ていて本気で呼吸をすることを忘れた。
なんて顔をするんだろうって、思ったんです。
ここのパートは、最後のサビにおけるソロゆえに、本来いわゆる三日月らしいキメ顔が炸裂するはずの場面です。阿津賀志巴里の本公演では、光が「ここに」あって、と自分の足元を両手で力強く指さして、勇ましくキリッとした表情で笑っていることがほとんどだった。それまでのらぶフェスの公演でも、阿津賀志巴里と同じ方向性のお顔をしていたような記憶があります。

なんだけど、そのらぶフェスの千秋楽で三日月が見せた表情は、過去のどれとも違っていた。
言うならば、今ここに自分が立っていることへの誇らしさが滲み出ているような。作ったものでは決して無いことがわかる、自然と溢れ出てしまうことが止められないような、どこまでも晴れやかな微笑みだった。
内側で静かな爆発が起こっているような、その喜びの表現。今までの刀ミュの歩みや、この千秋楽の時間を、今この時のまりおくん自身が掛け値なく全肯定をしているようにも思えるような、あまりにも眩しいお顔でした。

―光がここにあって、って歌っている君が、今の私にとっての「光」そのものだ。

そう思ったら、涙が止まらなくなりました。
こんな光景を、表情を見せてくれてありがとうって、心の底から思いました。
スクリーンに輝くように大写しになったあのお顔を見た瞬間、肩を揺さぶられるような感覚になったというか、胸をつかれるような思いがしたというか、もうなんかとにかく「ウワァーーーー!!!!??」って状態になってしまい…勝手に涙がぼたぼた出てきて、もうどうしたらいいかわからないよ!!!!?って思ったんですけど…「消せない光がここにあって」。もう、このサビ、本当になんてすさまじいセンテンスをぶん投げてくるんだろう…。
後日偶然、他にも全く同じ感想を抱いている方がいることがわかったりして、あ~やっぱりそうですよね!?ですよねー!?ってなったりもしました。あの場面を見て同じ感慨を抱いた人がいるのがなんだかすごく嬉しかった。
そして、これは幸いなことに千秋楽、なおかつソロである以上他のカメラワークも考えにくく、つまり円盤にもアーカイブ配信にもきっと100%の確率でアップで残るシーンなので、是非にここの三日月に注目してみていただきたいです!!!そしてできれば、阿津賀志巴里と見比べてみてほしい。本当に、全然ジャンルの違う表情をしていることがおわかりいただけるとおもいます…!

この三日月の表情を見た時に、あぁ、ここがミュージカル刀剣乱舞がたどり着いた、ひとつの最高到達点なんだな、って確信がどこまでも強まったのでした。
忘れられないシーン、大好きなシーンは本当に沢山あるんだけれど、私にとってのらぶフェス2018のサビは、間違いなく、ここでした…!
こんな瞬間を見せてもらえるから、やっぱり舞台を見ることがやめられないし、好きを追いかけることが止まらなくなるんだな…って実感したりもした。本当にそれくらい、私にとってものすごくものすごく、見ることができて幸せだった瞬間でした。絶対に忘れたくない。



はー、こうして書いている間に、紅白が始まるまで、もう24時間を切っちゃったよ。
らぶフェス2018という最高到達点を迎えたみんなだけど、でもこれから、また新しいひとつの最高を、NHKホールに作りに行くんだね…ってなって、もうだめだエンドレスで泣けています。まじで危ない人に成り果てている。紅白にむけて、どんなにがんばっても心の準備がまじでできない…も~ほんと、どうしたらいいんだろう!!!???

2018年は、どう振り返っても、奇跡のような1年でした。苦しい出来事ふくめて、ほんとうにいろんなことがあったけど、今年の刀ミュの歩みのそのラストが紅白出陣であることを、とにかく全力で喜んでいたいなと、思います…!

真剣乱舞祭2018、本当に本当に楽しかった!!!!!!!今年も沢山のしあわせをありがとうミュージカル刀剣乱舞!!!!!