こたえなんていらないさ

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刀ミュ 壽 乱舞音曲祭 1部パートの感想

1月9日に、予定どおりに初日を迎えた、刀ミュ5周年を記念する演目、壽 乱舞音曲祭。
musical-toukenranbu.jp

一筋縄ではいかない、過去に類を見ないあまりにも困難な状況の中で幕の開いたのこの作品は、
今のわたしたちにどうしても必要な、希望の光そのものでした。
以下に感想を書きます!(もはやいつもどおりではありますが、三日月についてが多めになります。)

※追記:今更ですがネタバレしかしていません!




会場に響く、演奏前のオーケストラによる音出しのにぎやかな楽器の音。これ、わざわざ録音したんですね!になった、ガラコン感が出てすごく好き!
その音色が鳴り止んだ後、ステージ上に現れたのは、日向正宗と浦島虎徹
刀ミュで恒例になっている”上演中の諸注意”を客席に伝えつつ、とくに「光る棒」=ペンライトを点けるタイミングについてを、二振りが実技を添えてレクチャーしてくれるコーナーから始まりました。

パライソで初登場だったこの二振りを、初めて目にするお客さん、本当に多かったはず…。
初日、お客さんを前にした日向くんも浦島くんも、まさに万感の思いをたたえた表情をしていて、もうこの時点からこちらの涙腺が怪しかった。また舞台に立てて、本当によかった…。
普段は刀ミュ本丸の審神者の声で「ここぞ!」というペンライトのつけ時を教えられるわたしたちですが、もうそれは文脈として共有してるよね!とでも言うような振る舞いで、正面スクリーンにそのまま「ここぞ!」の画像を出してくる今回の方式、斬新で笑ってしまいました。(「ここぞ!」「消灯」、地味に忙しくて大変なんじゃ!笑)


そして滞りなくレクチャーが終わり、笑顔でふたりがはけていったその後、暗闇に包まれる会場。
どこからともなく響いてくる、びゅうと吹きすさぶような、激しい風の音。
もはや耳に馴染んでしまったその音の中、白っぽくぼんやりとした光に浮かび上がるように、ステージが明るくなっていきます。
地を這う靄のように流れ落ちるスモークの中、ひとり階段状のセットの頂点に佇んでいたのは、予想どおりに、三日月宗近の姿でした。
その手に携えるは、他でもない、蓮の花。

「しくしく くれくれ しくしく くれくれ…」

阿津賀志山異聞2018巴里の冒頭とまったく同じその演出に、心臓が止まるかというような思いになりながら、それでも耳はしっかりとその声を聞いている。
あぁ、またあなたはそうして一人で。時の流れの中で、誰かに思いを馳せているのですね、と。
「半座わかつ 華のうてな 誰が為にここにある」の、あの高音を。またリアルタイムで聞く日が来るとは、思わなかった…。
息の根を止められたようになってぼんやりしているところに、舞台上の三日月はどこか遠くを見やるような眼差しで、ひとり静かに微笑むのです。
5年という時間について「瞬きほどの時間のようで」と表現しながら、その透徹した瞳で来し方を思い返しては笑み零す天下五剣。

そう、5年。その時間をわたしたちは、この本丸と一緒に過ごしてきた。
辿ってきた足取りを、重ねてきた時間を、共に紐解いていく、これから訪れるのはそんな特別なひととき。


◆「5年間の歩み」を丁寧になぞる1部

幕開けの仕方にもう情緒がめちゃくちゃにやられてしまいましたが、結論からいうと、1部はそのまま「ミュージカルパートの楽曲を、作品ごとに順を追って振り返る」という、ごくシンプルな構成になっていました。
しかしシンプルであるからこそ、正面からその作品の存在を突きつけられるというか、ありありと思い出せる部分が増えるというか…。
それはまるで、自分の中にある刀ミュの思い出を、観劇しながらひとつひとつ、丁寧に取り出して見つめ直していく作業のようでした。


まず最初に歌われたのは、「名残月」。
阿津賀志山異聞の公演では岩融が歌うこの曲を、今回歌唱したのは小狐丸。
何度でも言いたくなってしまうけど…本当に、小狐丸殿も、歌がうまくなられた…!
それはもう、トライアル・阿津賀志山本公演の頃と、最早比べることができないほどに。
涼くんの小狐丸の歌声、なんて表現したらいいのかわからないのですが、歌唱法がとっても「和」の世界観に似合う気がして、他の刀剣男士にはない味わいにあふれているのがとっても好き。


そしてそこから再び舞台上に現れるは、やはり三日月宗近
「舞をひとさし」の一言から、「返歌 名残月」を歌唱してくれました。
もう。。もうほんと。。歌が…。まりおくんの歌が…。
その話は2部でさんざんするつもりですので、いったんさらっと流しますけれど… 歌が うまい。。。
「今咲き誇る 花の哀れよ」の高音ロングトーンでボリュームが爆発していたのは、阿津賀志巴里の2018のときにもうすでにびっくりしていたけど、
今度はそのあとの「消えゆく定め知りつつも」に差し掛かってもたっぷりとした声量を保っていることに、びっくりした。。。
もうまりおくんの歌が大変なことになっているということだけで1本記事書きたいよ…。
低音の響かせ方がまたどえらい進化している、とここで思ってゾクゾクしたんですが、いや~~なんかもうとんでもなかったんだよね。。。ちょっと、歌については後ほど2部パートでじっくり。。


その次に続くは、清光や鶴丸を迎えての「戦うモノの鎮魂歌」。これ阿津賀志巴里では歌唱がなくなった曲だったので、ほんっとうに久しぶりに聞いた!
あの三日月の衣装で殺陣を交えて舞い踊る姿、いつぶり?わたしが見てるこれ、幻?ってなって…なんかもう…なんかもう…!!!涙
初日、感極まってめちゃくちゃになった。。いや、もうすでにここに至る前にめちゃくちゃになってたけど。
歌って踊ってるよぉ!三日月がいるよぉ!!!ってなってしまい…この感情を、いったいどう表現したら良いんだろう。
こうして改めて文字にしていくと、初っ端からけっこうな分量で2年ぶりの推しに殴られていて大変だなぁ。。
いっぱいいっぱいになりながらオペラグラスを覗いているのですが、その隣に清光がいたり鶴丸がいたりして、その点においても「アレ?わたし、幻覚見てるのかなぁ…」って思いました。
この3振りが一同に会する日が来るとは…!という。なんかもうそれだけでも感無量になる。。視界にギュウギュウに詰まってしまう、刀ミュの歴史。。。


その後も、各公演の楽曲が、公演の時間軸をそのままなぞるリレーのように、刀剣男士たちによって歌い継がれていきます。
幕末天狼傳からは「ユメひとつ」、三百年の子守唄からは「瑠璃色の空」。
つはものどもがゆめのあとからは「ゆめのあと」、結びの響、始まりの音からは「序章」、そして葵咲本紀からは「太刀風」が。
各部隊、全ての刀剣男士が揃うわけではないので、ところどころに他の刀剣男士が参加しながら、全員でバトンを渡していくように歌がつながっていくその様子は、
まさしく刀ミュの歴史を追体験するようなひとときでした。
曲がりなりにもトライアルから見てきた身として、やはりその歩みのひとつひとつにはそれぞれの思い出があって…
続いてきたこと、守ってきたもの、積み重ねてきた努力。
嘘のないその「5年間」という時間をぎゅっと濃縮して総まとめするような。
「ものが語る故、物語」そのものを体現するような、演出がシンプルであるが故に、語られた物語の輪郭が際立つような、そんな印象を受けました。

◆観たかったものを見せてくれる時間。江の刀たちと虎徹兄弟

また、刀派として縁のある男士たちを揃えての嬉しい場面も。
葵咲本紀で篭手切江がまだ見ぬ夢のすていじを思って歌う「未熟な私は夢を見る」は、江の刀が勢揃いしての賑やかでゴージャスな場面が出現。まさしく夢のすていじ!
めんばーが増えた!って、嬉しくて鼻血が出そうになっちゃう篭手切くんを見てたら、もうこっちまで嬉しくなってしまって。。
もともと葵咲本紀を観ているときから大好きな楽曲だったので、「夢が叶ったねよかったね…!」という思いでいっぱいになりました。
江のみんな、揃うと絵面が最高に楽しいですね!
4振りそれぞれの個性がはっきりと出ていて、それでいてちゃんとチームとしてのまとまりがあって。
りいだあのど真ん中男前りいだあっぷり、どうなってんのほんとすごいよね!?って思うし、桑名くんは大地に根ざしたどっしりとした存在感を醸し出しているし、松井くんのノーブルでゴシックロマン…!って感じのどこか怪しい美しさがたまらないし。(特に踊る松井くん、とっても素敵だなと思ってみてます!)
こんな風に揃われたら、篭手切くんじゃなくても嬉しくなっちゃうよね!と思いながら、全力笑顔でペンライトを振るの、本当に楽しかったです…!


そして、浦島くんが海を見つめて歌うとある歌では、虎徹兄弟が勢揃いします。
「海は広いな 大きいな」から始まるこの歌、見ていれば察しがつくと思うので言っても良いのかな…と思うんですが、パライソの浦島くんのソロ曲なんですよね。
海を見つめながら「こっちの手には兄ちゃん!こっちの手にも、兄ちゃん!これで、どうだぁー!」って笑顔で叫んでいる浦島くんの隣に、本当に兄ふたりがやってくる場面、なんなら1部で一番泣いたかもしれない。。

長曽祢さんの笑顔は本当におおらかで広々としていて、はっちの表情はこれまで見たことないような柔らかくて優しいもので…弟を前にすると、そんな顔になるんだねってびっくりさせられた。。
あの時間に流れる、まさしく夕日みたいな色合いのオレンジ色のあたたかさに、胸が締め付けられるようで、見ていて涙が止まりませんでした。
糸川くんの浦島虎徹、本当によくぞこんな最高の弟が来てくれた!?ってなるような存在感。。
欠けていたピースがぴったりとはまったかのような、奇跡みたいな組み合わせ。
長くシリーズを見続けていると、こんな場面にも巡り会えるんだなぁと、しみじみと嬉しくなりました。


江のパートも虎徹兄弟のパートも、こちら側が「これが見たかったんだよ!」と感じるものをぶつけてくれるやつで、その手腕の確かさたるや、やっぱり刀ミュは流石だな!って思います。
ごく丁寧に、こちらが期待するものを、それ以上のクオリティでちゃんと届けてくれる、この信頼のおけるっぷりと言ったら。。
キャストのみんなも、本当に嬉しいんだろうな…というのが伝わる笑顔ばかりが溢れていて、
歴史を重ねてきたからこそ、今こういう場面が見られているということの喜びを、たくさん噛み締めました。

◆今見ているのは、夢なのか現実なのか。厳島神社奉納公演ぶりに披露された「まほろばに」

らぶフェス2017のラストを彷彿とさせるような「かざぐるま」の全員歌唱で、1部はクライマックスを迎える…のですが。
その後に待ち受けていた曲がまた、とんでもなくて。。

雅楽の笙や龍笛の音色が響く中、ステージ中央でスポットライトにひとり照らし出される三日月。
そしてその背後には、2016年の秋の夜に見た、厳島神社の鳥居が…。
厳島神社奉納公演のために当時書き下ろされた「まほろばに」が、あの日の夜以来、初めて歌われたのでした。


もうこの歌い出しから、頭をガンっと殴られたような衝撃が走った…
まりおくんの三日月の表情が、その佇まいが、もう「神様」そのものだった。

その透き通る青い眼差しに、いったい何を映しているのだろう。
悠久の時を経て生きるその身で、いったい何を感じているのだろう。
顔中に柔らかく、穏やかに広げたその微笑みは、
目の前のこのひとときを、ただ慈しんでいるような、
「今、ここに在る」ことに、ひとり静かな祈りを捧げるような…そんな表情に思えました。


眼前にする光景がやはりこの世の現実のものとは信じられなくて、夢かうつつか…と、ただ目を見開いて見つめることしか出来なかった。
ゆったりとした足運びも、袖を手繰る手付きも、頭上にかざすその指先まで、一部の隙も存在せず、完璧に全てが美しくて…
なんでそんな風に舞えるのだろうと、呆気にとられるような思いでした。
初日は3バルからだったのでオペラグラスを両手で握りつぶす勢いで見ていたのですが、自分の呼吸でレンズが曇るのが嫌で、本気で限界まで息を止めて見ていたので、
休憩時間に入った直後は頭が痛くなって、しばらく頭を抱えてうつむく羽目になりました(深刻そう)。


見ながら、時間が止まってほしいと思いました。
呼吸をすることを忘れて、ひたすらに息を飲んで見守ったその一挙手一投足が、あまりにも美しくて。
なんと表現すれば、あの存在感に追いつけるのかわからない。
あんな風に、どこか近寄りがたいほどの神々しさを身にまとっている三日月は、本当に初めて見た気がします。


12月にカレンダーのお渡し会があったとき、まりおくんは久しぶりに三日月を演じることについて、
「楽しみに、厳しい目で見てほしいです」と言っていたんですよね…。
刀ミュから離れていた期間が長いので、その間に経験してきたものでどんな風に演じるんだろうと、期待して見ていてほしい、といったニュアンスのことをおっしゃってて。
「うわぁ、自分から明確にハードルを上げてきたな!?」って思って、否応なしにワクワクが増していたんですけど、その言葉の意味が、嫌というほどわかった気持ちになった。

もう、こんな表現までたどり着かれていたのですねと、ただただ、感服する思いでした。
直接は演じていない間も、まりおくんの中には「三日月宗近」という存在が共にあり続けていて。
いざ蓋を開けてその存在を外に呼び出した結果、じっくりと内側で育まれた、全く新たな姿が、わたしたちの目の前に現れることになったんだなぁと。
表現の階段を、一気に数段飛ばしで登っていて、そんなところにいるなんて思いもしなかった、というような。


こんなものが見られる日が来るとは…と、言葉にならない思いが嵐のように胸の内を襲ってきて、もう何も言えない…になりました。
刀ミュの三日月が、本当に大好き。まりおくんの三日月が、いてくれてよかった。
他の刀剣男士に囲まれて、中央に立ち、看板を背負うその姿は、例えようもなく頼もしく、
そして1部のラストに、ちらりと背後を見返るその瞳には、ダメ押しで射抜かれて。。
なんかなぁ、もうなぁ…
「生きててよかった」以外の感想が思いつけなくってなぁ。。
こんなに幸せでいいのかな、って思ったな(しかし、ここまででまだ1部なのである)。



1部と2部でまったくベクトルの異なるそれぞれに恐ろしいものを剛速球で投げつけてくる、それが刀ミュ!
というわけでいったんここまでは1部のお話。続きまして2部を更新します!

(↓その後2部も感想書きました↓)
刀ミュ 壽 乱舞音曲祭 2部パートの感想 - こたえなんていらないさ