こたえなんていらないさ

主に刀ミュ(ミュージカル『刀剣乱舞』)を愛しながら、舞台まわりをぐるぐるしている人

いつか変わりゆく世界と自己と― 映画「いなくなれ、群青」感想

「この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる。」
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今をときめく(ってまさに使うべき人すぎる)横浜流星くん・飯豊まりえさん主演の映画、「いなくなれ、群青」を見てきました。なぜなら応援している黒羽麻璃央くんが、流星くん演じる主人公・七草の友人役として出演されているからです~!(嬉)

原作がベストセラー/青春ファンタジー小説…とのことなのですが未読、なので基本的には予告編の情報だけで見に行ってきたのですが、予想以上に受け取るものが大きかった映画でした。
ストーリーの根幹に触れるネタバレはなしで、感想を書いてみようと思います。




◆圧倒的な映像美

これは9月7日のトーク付き上映*1でまりおくんが言ってた言葉そのままなんですけど、本当に、驚くほどに映像が美しくて。
小手先だけで撮ろうとしても絶対に無理で、自然の光を生かして、時間をかけて作らないと、あんな風な映像には絶対にならない、って思う。
冒頭に貼った作品Webサイトからも再生できますが、その美しさが味わえる予告編はこちら。
youtu.be


全編、単純にキラキラしているのとは違う、独特に青みがかった、なんともいえない透明感に満ちていて。
生い茂る草の濃いみどり、荒々しさを持って打ち寄せる灰色の波。
雲間から透けるように差し込む光。水たまりに打ち付けられて弾ける雨粒。
自然そのものが持つ色合いが、贅沢なほどに画面を彩っていて、なによりその中に佇む高校生たちの瑞々しさが、ぐっと引き立つようでした。

綺麗・美しいと評される映像って、いろいろあると思うのです。
その中において、群青の映像の美しさ、なんだか個人的にはいわゆる”既視感”があまりなかったように思えて。どこに置いたらいいのか、判別のつかない美しさ、だった。
はいはいこういう感じね、なるほど…って、なりそうでならない。

退廃的なわけでもなく、過剰に美化しているわけでもなく。
だけどものすごいこだわりが詰まっていることが、画面からひしひしと伝わってくるんですよね。
「この世界を絶対にこう撮りたい」っていう、どこか鬼気迫るほどの情熱があることを感じました。
常に共通した色使いに貫かれていて、どの場面を切り取って取り出しても、世界観が崩れることがない。
どこか頑固なまでに、映像美としてひとつの世界観が維持されているそのことが、リアリティのラインが難しい、ファンタジー要素の強い物語を成り立たたせるなによりの力になっていると思いました。
あの色合いの中にもう一度、身を浸しに行きたくなる。

◆「青春の残酷さ」

物語の舞台は「階段島」という、そこへたどり着くまでの記憶を無くした人たちが集まる不思議な島。
階段島は、”魔女”に管理されている。でも、その魔女の正体を知る人はいない。
外界へ連絡を取る手段はなく、島の人々が元の世界に帰るためには、それぞれが「無くしたもの」を見つけなければならない。
そんな謎に包まれた島に暮らす高校生たちが、この物語の主人公。
彼らは寮に住まい、ごく普通に学校に通いながら、平穏な日々を過ごしている。


さっきも使った言葉ですが、設定として「リアリティのラインはとても難しい」と感じます。外の世界に連絡が取れない・元の世界の記憶がないことって、そんなに簡単に受け入れて生活できるものなの?っていう疑問は、正直なところ、どうしても拭えないまま残りはする。
だけどそこへの引っかかりで一切世界を受け入れられない、というわけでもなくて。(もちろん、脚本の整合性にゴリゴリに意識を砕くなら、頷けないポイントはあることは否定しないけれど。)
その難しさの上で、この映画がちゃんと作品として成り立っているのは、その中に生きる高校生たちの心情を真ん中に据えて、心の動きをとにかく丁寧に追っているからだと感じました。


群青の映画で描かれているのは、10代独特の、世界と自己への「認識」についての、ひりつくような痛みと苦しみだったように思います。こう書くと、なんだかただ痛々しいだけの話みたいに聞こえてしまうんだけど、そういうことじゃないんだよな…表現が難しいな。。

大人ではないけれど、子供でもない。万能感があるようで、同時に無力感もある。
「自分たちは管理されているのだ」と言われたら、先に「そういうものか」と諦めが生じるような。
自分の力でどこまで抗えるのか、どこまでなら・何なら突破できるのか、わかりそうでわからない。
その絶妙なラインに立つ、10代の高校生が主役の物語だから、階段島の不思議な設定がギリギリのところで生きたものとして存在できたのかな、という気がします。

七草と真辺、それぞれの選択の背景にあるものが「青春の残酷さ」だったわけだけど(具体的にどう、という話をするとネタバレになるので言えない)、
あそこまで純粋に、刃物のようでさえある真っ直ぐさで、目の前の相手に向き合おうとする姿勢は、10代の限られた数年間だけが持てる、ある種の特権とも呼べるものだと思う。

わたしはもうそこをとうの昔に通り過ぎた人間だから、そんな風に遠くを目を細めて振り返るような感想になるんですが、劇中の七草や真辺と同じ年齢でこの作品を見たら、どんな感情になるんだろう、と思いました。もうわたしには、二度とわからない感覚。

◆役者の瑞々しさ

主役の2人と、彼らを取り巻く高校の生徒としてメインで登場する5名、計7名の高校生役キャストがいるのですが、全員本当に、良い。。素晴らしかったです。

流星くんの七草は、演じる上で「感情を押し込めて、常に内圧をかけて演じてほしいというオーダーをした」ということが監督の発言としてパンフレットに書いてあったのですが、納得。内面を大きく吐露することをしないから、本心では何を考えているかわからない七草。その表情の繊細さが見事でした。
ともすればつまらない絵になってしまいそうなのに、とことん目つきおよび全身の佇まいで語れる役者だなと。
なんというか、とくに目元に「憂い」がものすごくあると思うんですよね。透明感があるのに、同時に陰の部分も感じさせるお顔をしてる。
あとモノローグが素晴らしいです!抑えているのに、どこかにしっかりと感情が滲む声の出し方。
というか、流星くん、いつの間にかめちゃくちゃに売れっ子に…すごい…。世の中の流れをいまいち把握していないので、今の状況に正直びっくりしている。*2
インスタフォロワー数が180万人と知ってひっくり返りました。すごい…(それしか言えなくなってる)


飯豊まりえちゃん演じる真辺がまとう「正しさ」や「真っ直ぐさ」、そのありのままの姿がときに誰かを傷つけることもある、というのが、目を背けたくなるほどに痛かった。
凛として、目の前のことに妥協せずにぶつかっていく彼女は、波紋を広げ、周りの人を強く揺さぶる。
ある意味では不協和音を生じさせる役割を担うわけだけど、描き方は難しいキャラクターでもあると思うんですよね。行き過ぎると多分、単なる嫌な奴になってしまうけど、そうならずに踏みとどまっていて、バランスがすごく良かった。
まりえちゃんの真辺、すごく「生」や「動」を感じさせる姿で、命そのものみたいな輝きを放っていた。
あとセーラー服が似合いすぎる。すらりと伸びた脚のまっすぐさが羨ましい!高校生のころああいう脚になりたくて仕方なかったことを思い出しました。


松岡広大くんの佐々岡もすごく良かったんだよ~!そうなんだよ、広大くん、お芝居うまいんだよ…ってなりながら見てた。
パンフレットには、広大くんは佐々岡をオーディションで勝ち取ったと書いてありました。いや、本当にぴったりの役だと思う!
やっぱり舞台で鍛えているから発声がものすごく聞き取りやすいんだよね。
がむしゃらで、ヒーローめいた行動に憧れて突っ走っていく佐々岡の憎めなさ、すごく魅力的に演じられていました。


そしてまりおくんのナド。
出てくるのは基本的に屋上のシーンだけ、彼が声を交わすのは七草とのみ。
まりおくん自身が「ナドは本当に実在してるのかもわからないと思いながら演じてた」「つかめない人物なので、演じる上で無理につかもうとするのはやめた」と言ってたんですけど、その言葉の意味がすごくよくわかるな、と見ていて感じました。
本当にそこまで自然に在れるのか…と思ってしまうくらい、すっとその場に溶け込むように、景色の一部みたいに存在していて、見事だった。す、好き…!(とつぜん抑えられなくなる推しへの感情)(抑えて)

窓枠から飛び出すあのシーンに「ウワァ」と心臓を撃ち抜かれていたんですが、もともとあれは台本にはなく、窓枠にもたれて待機するまりおくんの美しさに驚いた監督が「そのままそこから出てきてもらえますか?」で実現した、と昨日のトークで聞くことができてめっちゃ興奮しました。待機してるだけで絵になってしまうまりおくんの美しさ~!ってなってしまう…。笑
あと、エンドロールでいわゆる「止め」の位置にお名前が出てくること、すごく嬉しかったです。



ネタバレにつながることは言わないようにしたので、なんだかふわっとした感想に終始してしまったし、原作を好きな人から見ると的はずれなことも言ってるかもしれないですが!

「いわゆるラノベ原作なんでしょ、じゃあ自分にはあんまり関係ないかな」で片付けてしまうこともできるのかもしれないけど、この映画を見て、あ~そういうことじゃないな、と思った。そうやって関わる前に判断して切り捨てていくことで失われる体験って、きっと本当に大きい。


自分らしく在りながら、一方で相手を尊重し続けることの難しさは、大人になっても永遠に続く。
あの閉じ込められた階段島の世界の中で、その難しさに向き合い続ける7人は、どうしたって美しかった。

七草と真辺の間にあるのは恋愛感情じゃなくて、まだ名前のついてない、ものすごく純度の高い、相手を大事に思う気持ちだったなぁと思います。


世界も自分も隣の誰かも、いつかきっと変わっていく。
だから今、向き合うことを選びたい。
そんな祈りのようななにかを、受け取った気がする映画でした。

*1:これに行ってました。 https://inakunare-gunjo.tumblr.com/post/187551965866/%E5%85%AC%E9%96%8B%E8%A8%98%E5%BF%B5%E6%B8%8B%E8%B0%B7humax%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%EF%BC%93days%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88

*2:流星くんのことは2014年のトッキュウジャーを見ていたのでそれをきっかけに知ったはず。翌年に舞台「もののふ白き虎」で安西慎太郎くんとのW主演をされてて、見に行ったなぁ。当時から美しかったです。