こたえなんていらないさ

舞台オタクの観劇感想その他もろもろブログです。

帝国劇場「THE MUSICAL CONCERT」(帝劇コン)プログラムA・8月16日公演を見てきた

帝劇コン、プログラムAに行ってきました。
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正しいセトリはまだパンフレットを購入できておらず、流石に記憶は無理でわからないんですが(今回劇場での販売は見送られているので通販予定)、
1911年に開業した帝国劇場の歴史を、基本的には時間軸をたどる形で歌い継いでいくコンサートです。
プログラムA・B・Cの3日程が組まれているのですが、出演者数が一番多いのがA。
個人的に見たいキャストさんがAに集っていたので、絶対にここ!と狙ったチケットがあたってくれて、本当によかった…!


ステージ奥にスタンバイするオーケストラ。指揮者のひとふりで勇ましく始まるオープニング。
徐々に明るくなる舞台上に現れる、アンサンブルのみなさん、そしてその中心にはプログラムAの司会をつとめる井上芳雄さんの姿が。
セット階段の最上段、中央に立ち、笑顔で客席に両腕を広げた芳雄さんの頭上のスクリーンに、ぱっと白い文字で「ようこそ帝劇へ」と映し出されたのを見たとき、まだほぼなにも始まっていないのに、ボロボロ涙がこぼれました。


いまこの瞬間、目の前で、迫力を持って届けられるパフォーマンスの、生にしかない息遣いとエネルギー。
力強い歌声に震える空気、ぐわんと正面から押し寄せる音圧。
きらびやかな照明と、色とりどりの衣装と。
歌の合間に弾ける、劇場じゅうを包み込むような思いの詰まった拍手。
こうして思い出すだけで、体の内側が幸福感に満ち溢れる思いになります。


どのパフォーマンスも素晴らしかったのですが…どうしたって思い入れが濃くなってしまう「エリザベート」について書きますね。
今日はとんでもないものが見られました。


初日の8月14日はリアルタイムで配信されており、その最中に東宝演劇部の公式アカウントがTwitterで随時セトリを案内していました。
なので何が歌われるかは観劇前から予めわかっていたんですが、キャストの組み合わせがその時とは変わっていて、サプライズに思いっきり殴られました…!


エリザベートから披露されたのはトートとシシィのデュエットである「私が踊る時」、そしてトートとルドルフのデュエット、「闇が広がる」の2曲。
なんとそのどちらも、14日とはキャストが変わっていて!(なんせ、プログラムAには本当にトートが渋滞しているw)


上手から、真っ白いドレスを着た一路真輝さんが登場されたとき、本当に驚いて胸元をおさえてしまった。
一路さんといえば、宝塚版で日本ではじめてトートを演じられ、退団された後には長きにわたり東宝版でシシィを演じられた、まさにはじまりの存在です。
今年発売されたエリザ20周年のパンフでその足跡をつぶさに読んだばかりだったので、まさか、一路さんのシシィを自分のこの目で見られる機会があるなんて…!?と、心底たまげて目が飛び出そうになりました。
そしてそれを受けて登場したのは、芳雄さんのトート…!
芳雄さんは初演のルドルフ役でミュージカルデビューされていて、つまり20年前に母と息子を演じたおふたりです。
目の前でまさに歴史が新しく動いている様子に、もうあっけにとられてものすごい顔で舞台上を見つめるしかありませんでした。迫力が凄まじくて…あんなもの見てしまってよいの!!?
お二人とも本当にかっこよくて…絶対にトートに負けやしないシシィだわと思った…鳥肌が立つくらい、かっこよかった!
エリザという作品のことを大好きでいてよかったと、思わずそんなことを思ってしまうような、夢のような瞬間でした。


そしてその後に歌われた「闇が広がる」。あれには、本当に心臓がやられました。
あのイントロと共に最初に舞台上に現れたのは、なんと古川雄大さん。それってつまり…ゆんルドルフじゃん!!?この時点でライフが歓喜のあまりゼロになり、そして下手側から登場したのは我らがしろたんトート…!ゆ、夢!!夢叶った!!!!!となりまして…いやマジで、「生きててよかった」って心の底から思いました…。
わたしが2015年・2016年に見たトートとルドルフはこの組み合わせで、ほんっとうにツボに刺さる配役だったのです。。。ふたりとも声が大好き、ビジュアルの組み合わせも大好き…!
ゆうたさんは今やトート閣下であらせられるし、さすがにもうルドルフは見られないよなぁ~と思って諦めていたので、いや、こんな夢叶っていいの?!となりました。
あのしろたんトートの、感情が読めない、あからさまに”人外”の存在の独特の演技、大好きすぎる。。。
首を傾けてじっとルドルフを見つめながらじわりと近づいてくる様子…口元にかざす手の動き、うああ~~~あれがまた見られるなんて!本当に!最高!!!涙
「立ち上がれよ」のけしかけ方っていうかなんていうか、、外側からじわりと徐々に締め付けるような独特の追い詰め方で…!あんなのに狙われたらそりゃ助からない!あれは無理だ!!!
そしてゆうたさんのルドルフ、もーーーーなんであんなに透き通るように「悲劇」が似合うのか。死にすうっと魅入られていくのか。。…あんだけ美しかったらもうそうなっても仕方ないか!!!(結論はやい)
2016年当時からは当然のことながら更に歌唱に磨きがかかっているので、聴き応えがそもそも半端なかったです。もうさすが。というか、存在すべてが美の暴力だった。あの「我慢できない」のぐわっと盛り上がる高音、テンションがぶちあがりました。。王座にーーー座るんだーー王座ァーーー!!!!涙
しかも本来ルドルフが上パートなのに、おふたりで交互に上下ハモリを交代していて…?なにが起きてるのかわからず「?!??!」でもう宇宙猫状態だったよ…
ああ~~~本当にありがとう東宝……もう二度と拝めないと思っていた組み合わせを実現させてくれて…!!!
正直、ここの衝撃が強すぎてあらかたの記憶が吹っ飛んだというのもあり、それ以外について触れる隙がなくこのエントリー終わりそうです…(そんな!?)
でも本当にどのパフォーマンスもぴかぴかに輝いていて、全身でそれらを受け止めた多幸感に、帰宅してからもまだ突っ伏しています。



行けたらいいなぁと思っていたけど、でもそれが叶う確信は持てなくて、だからこそ今日本当に帝劇に行けたこと、ものすごく嬉しかったです。

たしかあれは5月頃、帝劇が公演を再開する情報が朝の情報番組で出たとき、その日付は「8月14日」となっていて、
もともとその日程って、何をやるはずだっけ…?と調べたら、帝劇コンの初日予定日でした。
「行きたいね、行けたらいいね(でも行けるかわからないね…)」って会話を友人たちとしていたあの日からも、もう数ヶ月経っている。
帝劇の公演再開は、実際はもう数週間早まり、ジャージー・ボーイズinコンサートで復活を果たしたのだったけど(そしてそれも見に行ったんだけれど)、
まさに”浴びる”がごとくスター達による歌声を聞いた2時間は、細胞のすみずみから生き返るような、足りなかった何かがひたひたと体じゅうに満ちていくような、素晴らしいものになりました。


本当に幸せで、楽しくて、生きててよかったと思えました。
そして同時に、この春に会えずじまいで失ってしまった時間の存在が、揺り戻しのように、鋭く苦く、胸の内で痛みます。


「今年はもう舞台に立つのは無理だと思っていた」「まだどこか夢みたいな気持ちがする」と、トークコーナーで口々に語るキャストの皆さん。
変わってしまった世界の中で、舞台に立ち、素晴らしい歌声を世に送り出してくれるその姿は、エネルギーに満ちあふれ、何よりまぶしい喜びに彩られていました。
わたしにとって、劇場がどれほどかけがえのない場所で、替えのきかない存在であるか。
やっぱり、ミュージカルがものすごく好きだと、その感情は波のように繰り返し訪れて、帝劇の客席で、マスクの内側がびたびたになるくらい、バカみたいに涙を流し続けました。


諦めて手放して、でも歯を食いしばって前を向いて、手繰り寄せた先に叶った奇跡のようなその時間を、必死に大切に守り続けている人たちが、今たくさんいることを思います。
当たり前はなく、約束された未来はなく、でもその中でも灯るものがあり続けていること。
そして様々な事情があり、現地に足を運ぶことが叶わない人は、確実にたくさんいて。
自分自身がどう振る舞ってもどこかで何かを傷つけてしまうことにつながりそうで、そもそもが常にリスクと隣り合わせで、最早立ち止まるほうが楽なのかもしれないとすら思える日もあるけれど、
それでもこうして機会が与えられ、それを叶える場面に恵まれたならば、わたしは自分にできることをやりたいなと、心から思います。


かけがえのない時間を届けてくださって、本当にありがとうございました。
プログラムCの千秋楽まで、毎公演の幕が帝劇で無事に降りますよう、劇場に音楽が満ちますよう、願っています。
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