こたえなんていらないさ

ミュージカル『刀剣乱舞』を実家とする舞台オタクのブログです。推しとご贔屓がいます。

柚香光さん・華優希さんの大好きな花組トップコンビによせて

7月4日の「アウグストゥスー尊厳ある者ー/Cool Beast!!」の東京宝塚劇場公演千秋楽をもって、花組トップ娘役をつとめた華優希さんが、ご卒業されました。


昨年の秋、はいからさん千秋楽の翌日に、大きすぎる衝撃をもたらした華さんの退団のお知らせ。
去年わたしは全く予想外のタイミングで、はいからさんの東京公演を通じて、花組トップスターの柚香さんに真っ逆さまに転げ落ちました。
はいからさんの公演期間を猛スピードで駆け抜ける中で「ああ、もうこれは宝塚を好きになってしまったのだな」と早々に観念し、そしてなにより「わたしはこのトップコンビのおふたりが好きだ…!」としみじみと幸福感の中に噛み締めた、まさかの翌日に訪れたその知らせは、初心者が受け止めるにはあまりにも唐突でヘヴィでした。
宝塚歌劇=退団があるシステムとは重々承知ながらも、まさかこんなに早くその洗礼を受けるとは…という呆然とした思いになりました。

それから約8ヶ月が経過し、ついにその日が昨日、やってきました。
上記のとおりの歴の浅さで、わたしが見たものは本当に限られているし、触れることのできた情報だって全然多くはなく、そんな自分が書くことに本当に何の意味が…とは思いますが、どうしても書きたいので書きます。




◆わたしにとっての”宝塚”は、れい華コンビから始まった

はいからさんが通る」は、わたしにとって、なんにもなくなってしまった2020年という時間軸に一筋の眩しい光をもたらしてくれた、救いのような演目です。
楽しみにしているという言葉では追いつかないくらい、命をかけて待ち望んでいた舞台演目(東宝エリザベート)の全公演中止を食らい、
身も心もスケジュールもすべてが空洞になってしまった2020年の秋に、思いがけずに素晴らしすぎる時間をもたらしてくれた存在でした。

宝塚に関する知識は全然ないし、用語もシステムもわからないことばかりだけれど、それでもただただ、目の前に広がるはいからさんの世界が楽しくて仕方なく、
その真ん中で圧倒的な存在感を放つ柚香光さんにほぼ秒で完落ちし、花組というひとかたまりの世界が好きになり、そして、物語のヒロインとして本当にものすごいエネルギーで輝いている華さんのことも、大好きになりました。
白い喪服を身に着けて「少尉の妻の務めです!」と言い切るシーンにみなぎる意志の力には、初めて見たときから釘付けになりました。
お芝居でもフィナーレでも、おふたりが作り出す空気感に自分でも説明のつかないほどに深く引き込まれて、あの真っ白い光のかたまりのようなデュエットダンスでは、なぜか涙が止まらなくなりました。

わたしが”宝塚”を好きになったその世界の真ん中にいらっしゃったのは、柚香さんと華さんのトップコンビでした。
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その後、年が明けてからの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」では、洒脱で心愉しい魅力がギュッと詰まった、色とりどりのおもちゃ箱のようなハッピーすぎる世界に出会いました。
どうしようもないダメ男なのに、好きにならずにはいられない愛嬌たっぷりなプレイボーイの柚香さんのジミーと、ダボッとしたオーバーオール姿で密造酒の詰まった箱をかついでみせる、たくましいギャングの仕切り屋で仲間からの信頼もあつい華さんのビリー。
そんな二人が大騒ぎのコメディの中で紡ぎ出す「運命の恋」には、どうしたって胸がかきむしられて、絶対に幸せになってほしくて、これ以上ないハッピーエンドにはただ笑顔が溢れました。
劇中のタップダンス'S Wonderfulも、”お洒落で大人な雰囲気を出せるように”と語られていたフィナーレでのデュエットダンスも、
シルクハットで決めた柚香さんと、真っ白いドレスの華さんが、カーテンコールで遊び心のあるやり取りを繰り出してくれる様子も、どれもが愛しくてたまらない光景でした。
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おふたりが並び立っているときの、まるでその存在同士が響き合うかのような、常に真剣勝負のようなその様子が、本当に大好きなんです。
柚香さんと華さん、それぞれから発せられる「芝居の熱」はとにかくイーブンで、舞台上にはいつも、嘘のない生き生きとした感情のやり取りがある。
おふたりが発するもののどちらかが過剰でも足りなくても、あの舞台上の求心力は生まれない…と思うほどに、がっぷりと互角に噛み合った強さの表現力に、幸せに殴られるような気持ちで見ていました。

柚香さんが華さんの退団の意志をうけたときにかけた言葉として、最初にわたしたちが知ることができたのは「最後まで濃い学びをしていきましょう」というものでした。
退団発表を知ったタイミングでは、その言葉の意味をまだどう受け止めたらいいのかも当然わからず…という気持ちでしたけれど、
ナイスワークから、今回のアウグストゥス/Cool Beast!!までの数ヶ月間だけで、本当にただその言葉どおりの時間をおふたりは過ごされてきたのだなぁと、回数は少ないながらも、自ら足を運んだ観劇を通じて実感しました。
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◆柚香さんが示した、華さんへの「同志」の思い

そして迎えた、昨日の大千秋楽。
ライビュの大画面で見届けたお芝居もショーも諸々…たくさんたくさん、感想はあるんですけど、私の中で一番刺さった場面は、デュエットダンス後、銀橋での一コマです。

柚香さんが華さんをホールドした状態の体勢がゆっくりとほどかれて、並んだおふたりが銀橋の真ん中でお辞儀をした後。
華さんの方を見た柚香さんが、どこか悪戯っぽい嬉しそうなニッとした笑顔で、ずいっとご自分の右手の「拳」を、華さんに向かって差し出したのです。
いわゆるグータッチをしよう!って、促している状態。
「えっ!?」とびっくりした様子になりながらも、ちょっと腰を落とした娘役のお辞儀のスタイルで、ちょこんと自分のグーをあわせにいった、笑顔の華さん。


この光景を見たとき、これが柚香さんにとっての「ふたりの完成形」だったのだなぁって深く深く感じました。
銀橋の真ん中で、退団していく相手役に、拳を突き出すトップスター。それが柚香さんの答えなんだなぁと。
究極のスターシステムを敷く宝塚では、真ん中は常に男役トップスターのもの。トップスターを中心として演目が組まれ作品が作られ、あらゆる物事がトップスター中心に回っていく、その環境の中で。
柚香さんにとって華さんは、間違いなく戦友であり同志であり、一緒に作品をつくってきたかけがえのない仲間だったのだと、
決してなにか庇護する対象でもなく、自分の陰に控えるような存在でもなく、ただフラットに隣にいるべき存在だったのだと、あの姿を見てそう強く感じました。


そして、あのグーを差し出した姿は、柚香さんがその事実を、誰よりも華さんに向けて、真っ直ぐに伝えようとしているみたいに見えたんです。
わたしたち、よくやったよね、そうでしょ?って、ときに控えめにすぎる華さんに、全身で語りかけているようで…。


インタビューや対談になると「なんにもできなくて」っておそらく本気の本心から何度でも発言される華さん。
しかしそう感じていたとしても、舞台上で己を卑下するような素振りはいっさい見せないからこそ、そこに圧倒的なプロ根性を見てかっこいいな…とこちらは唸るように思わされていたわけなのですが、
でもその背景には、本当にものすごい葛藤と苦しみと努力とが隠れていたんだろうなと、宝塚GRAPHの卒業対談を読んだときに改めて感じました。


わたしがみた限りの情報の中、たとえばナウオンの番組内など舞台上以外での華さんは、ちょっと極端なくらい控えめで、絶対に前に出過ぎることをよしとせず、「我を奥深くしまいこむ」ような印象がありました。
でもそんな華さんは、ひとたび舞台の上に立つと、柚香さんに対しても、絶対に遠慮をしていない気がしていたのです。
宝塚の世界の中で言えば、おふたりの学年は5つ離れていて、華さんからすると柚香さんは様々な面でどうしたって圧倒的な先輩にあたります。
それでも、舞台の上ではいい意味でお互いに手加減なく芝居をぶつけ合えているような、そんな風に見えていて。そこが、本当に大好きで。

でもその姿をお客さんに見せるまでの間に、いったいどれほどの苦難を乗り越えていたのか…と。
当然、それは察せられることではあったけれど、その過酷さはこちらの想像を絶する部分があるのだと、対談の文字情報となって届いたその内容だけでも突きつけられた気がしました。言葉に尽くせぬ濃さの出来事があったのだろうと思わずにはいられず、思いがぎゅっと詰まったあの2ページのおふたりの言葉たちは、とうてい涙なしには読めませんでした。


そんな華さんの歩みを、誰よりも近くで見つめ続けてきた柚香さんだからこそ、
あの千秋楽のフィナーレのラスト、万雷の拍手を送るお客さんの前で、華さんとの「同志」としての姿を見せたかったんじゃないかなって、そんな風に思ったのです。
そこには、大劇場での有観客ラストの公演になった4月24日・25日の二日間で、華さんを銀橋センターに招いてのひとりでのお辞儀の時間を作り出したのと、同じ性質のものが溢れていたように感じて。
華さんに向けた、柚香さんの心や思いが色濃く詰まっていたひとときなのじゃないかなと。
自分に足りないものやできないことを、もはや向こう側に突き抜けてしまうのではないか?というほどタフに見つめ続けた華さんに、でもその努力も心意気もちゃんと結実したんだよ、コンビとして一緒に「お客様に愛される」素晴らしい時間を完成させられたよね、そうでしょ?って、そう仰ってるような気がして。

◆れい華コンビが走り抜けた時間、見せてくれたもの

おふたりがコンビを組まれた期間は、コロナ禍を正面から受け止めるようなタイミングでした。誰もが経験したことのない状況の連続で、どうしようもない困難も多く、度重なる公演中止も経験されて…
その最後の場面で華さんに向けて贈られた、「この時期に一緒にできるのが華ちゃんでよかった、ありがとね」という、柚香さんの言葉。


芸事に真摯なゆえに、どう考えてもめちゃくちゃに要求水準の高そうな柚香さん。
その柚香さんが「華ちゃんでよかった」と発言されるその重みには、すさまじいものがある気がします。
2月にあったスカステの生放送特番でも、振り付けの足を踏み出す一歩目から何度でもやり直すしつこさ…と華さんとご自身との稽古風景について描写していらっしゃいましたが、
どれほど大量のダメ出しがあっても、絶対についてきて弱音を吐かない華さんだから、柚香さんは「華ちゃんでよかった」と真っ直ぐに語られるのだろうし、
だからこそ聞いた全員が「まさか!!!」とひっくり返ったであろう、あの振り切ったどストレートな「私の自慢のお嫁さんですので」発言をもなさったのだろうなと。
柚香さんってそういう表現をあまりされないタイプの方だろうとなんとなく思っていたところがあって……そんな柚香さんが、あの千秋楽の最後の場であの言葉を、他でもない”華さん”に、届けたかったんだろなと思うと…。思うと…!


舞台にかける情熱と魂が響き合うおふたりのコンビが、本当に大好きです。
二人で並べば秒でそこには「運命の恋」が生まれてしまう、あれほどに強固で深い精神的な結びつきを間違いなく持っているのに、その関係性の中には一切甘さがない。
でも甘さがないゆえに、どちらかが本音を真っ直ぐに言葉にしてぶつけると、結果もう片方がわけのわからない状態になってしまう、あの愛すべき息のあったちぐはぐさも、好きで好きで仕方ありません。
大劇場千秋楽での華さんの「柚香さん愛してます!」の爆音大告白で、照れ倒したとっさの返しが「声量が~!」になっちゃう柚香さんも(その後のやりとりで「ウォーミングアップが済んでおりましたので…」って返す華さん面白すぎてつらい)、
それへのまさかの全力アンサーになった、東京千秋楽での「自慢のお嫁さんですので」を浴びた瞬間に即フリーズし、じわっ…と無音でブーケを持ち上げ顔を隠してしまう華さんも(フリーズの瞬間、画面の中で\ワサッ/と揺れたブーケからして、もう最高に面白かった…)、
なんだかそういうところは本当に似たものコンビというか…
舞台のことだけ考えて突っ走ってきたおふたりの、とりあえず自分たちの「個」を徹底的に脇に置いてしまいながら、同時に相手を最大限尊重しているところ、めちゃくちゃに息ぴったりだなって思うんです。
おふたりの歌唱は音程がユニゾンになった瞬間に、ほんとうにピタッ!と美しすぎるほどひとつになりますが、あれは「心が揃っているから」なのだろうなって、聞くたびに何度も思いました。



あれだけ可憐で、まるでおやゆび姫のような佇まいなのに、その真ん中には誰にも負けないぶっとい芯が備わっていて、もはや内面が武士みたいな…可愛くて美しくて、かっこよすぎる華さん。
本当に「可愛い!!!」と叫びたくなる可愛らしさ愛らしさなので、心の中ではとっても「華ちゃん」とお呼びしたいけれど、あまりに武士でかっこいいゆえに湧いてくる尊敬の念が押さえられず、どうしても「さん」もつけたくなってしまい、
結果、わたしはTwitterでは最後まで「華ちゃんさん」というわけのわからない呼び方に終始してしまいました…。


華ちゃんさん。
本当に本当に、ありがとうございました。
柚香さんと華ちゃんさんが作り出す世界を通じて、宝塚を好きになれて幸せでした。
おふたりが作り上げる、色とりどりの心に溢れた舞台には、見るたびどうしようもなく感情が揺さぶられて、どの公演でも毎回新鮮に、観劇を通じた「生の実感」が尽きずに湧いてきました。
苦しいことも悔しいことも、数え切れないほどに沢山あったのだと思うのですが、でも何があっても負けることなく、おふたりのコンビが力を合わせて舞台上から届けてくださった時間は、とても陳腐な言い回しになってしまうけど、でもやっぱり「宝物」になりました。

最初に好きになった宝塚のトップコンビとして、心の中の特別で大切な場所に、これからも大事に大事にしまい続けようと思います。

華ちゃんさん、大好きです!